0話その1 愛しか知らない少女。世界を救う少女。


とある森の中、緑が生い茂り万人が愛するような自然に命の姿は見当たらない。深い深い闇の中、闇を照らす唯一の光である少女は目を覚ます。少女にとってそこは未知の空間であり、怯えるべき場所だった。しかし少女は怯えない。その理由は2つ、1つは少女が全てを愛しているからだろう。記憶の無い彼女に与えられた唯一の感情である愛、それを彼女はことの優劣無くこの世界の全てに振りまいている。少女は無垢であり純白だ、自分が愛しているものの中に少女とは相容れぬ黒いものがありながらもそれを知らず、目に入る物全てに自分の知る感情をばらまいている。しかし、それは彼女が無垢だからこそできることだろう。彼女はこれからある少年との旅の中様々な人間と出会い様々な感情、様々な愛、様々な悪を知る事になる。しかしその中心にある彼女の愛は変わらない。これから様々な事を知り、彼女は全てを愛することができなくなる。しかし彼女が愛すべきだと思える事がこの終わりに向かう世界でもまだまだ転がっている。彼女にはそれを彼女は見極める力がつく、自分が愛するに相応しいかどうかを見極める力が。だからこそ彼女は最後まで純白だったのだ。

少し彼女の事を思い出して感情的になってしまった。今このような事を書いても読書には迷惑でしか無いだろう。彼女の過去を書くつもりが、彼女の未来のことに話がズレてしまったのだから。

話を戻そう、彼女がこの状況を恐れなかった2つめの理由。それは顔を上げた目線の先に、正体不明の生物グリがいたからだ。

「貴方は・・だぁれ?」

ー私に名はない。

「私は・・だぁれ?」

ー君はエルピス。

「なんで私は・・生きてるの?」

ー世界を救う為さ。

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