最初に


さて、まず僕は君たちに話さなけれ事がある。何、そんな暗い話をするわけじゃない。君たちもこれから始まるというのにいきなり暗い話をされてしまっては気持ちが萎えるだろう。

話したいこととは、この物語の主人公は僕ではないという事だ。僕はただのしがない語り部に過ぎない。これを読んでいる君が僕が主人公と勘違いをしてしまっては困るので、先に言っておくことにした。

なら主人公は一体誰なのか。そもそも僕はこの物語に明確な主人公という物を作ってはいない。この冒険譚は僕が旅の中出会った人達のことを書いたものだ。その誰もが自分の意志を持って行動し、その誰もが主人公だった。この廃れた世界の中ただの群衆に成り下がったものなど1人もいなかった。

しかし、そんな曖昧な物語にはしっかりと芯になる釘を打っておかなければただ起こった事を書き吊るしただけのただの日記になってしまう。勿論これは日記では無い。なので最初に釘を打っておこうと思う。その釘となる人物こそがこの物語の一様の主人公だと思ってほしい。

では、最初はこの主人公の話からしようか。

僕がまだ幼かったあの日、意志、命、感情、人間に与えられた全ての物を飲み込む炎の中で見た、二本の希望の光。僕にとっての最初で最高の英雄。不老不死の少年モロス・タナトスと希望をその背に背負った少女エルピスの話を。

おっと、この物語には芯になる釘が二本必要みたいだ。

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