荒廃した土地に、点々と「街」が存在する未来日本。
AR技術の発展によって、視界からネットの海へアクセスできるようになったSF世界が舞台です。
安全な「街」の外にある、瓦礫だらけの無法地帯で暮らす14歳のタヌキは、狙撃用の愛銃片手に、暗殺の依頼で金を稼いでいました。
ある日タヌキは、とある女の狙撃依頼を受けることに。その依頼が、タヌキの運命を変えることになります。
基本的な日常生活はAIと機械にまかせ、人の手がいらなくなった時代。
冷たい世界に荒れ狂う瓦礫の海で、必死に生きるタヌキの生き様には息を飲みます。
キレる頭脳と裏腹に、激動する感情は14歳の思春期そのもの。読み出したらさいご、タヌキへ親近感に始まり、タヌキの隣で獲物を狙い、心理戦で手に汗握り、まれに見つける人の温かみで心を震わせることになるのです。
「なんとしてでも絶対、タヌキに生き残ってほしい」
いつの間にかそう思っていました。
無機質で機能的な文章が、世界観にどっぷりダイビングさせてくれます。そして、読み終わった時には「生きるとは一体なんなのか」、熱い答えの一端を胸に灯されていることでしょう。
シビアな未来で暗躍する「路地裏の狙撃手」。
その生き様を、ぜひともご堪能ください。