第15話 神武とは

 白夢がここを出てから30分ほどだろうか。

 店ならすぐそこにあると言うのに未だ帰って来ていない。

 何かあったのだろうか。


「ニャハハーただいまー」

「遅かったな」

「んー物珍しいものがあって……それに釣られちゃったテヘペロ」

「お前らしいな」

「でも、遅れてごめんね」

「別に気にする事はないだろ?」

「ん、ありがと」


 白夢は紙袋を置いて中から果汁のジュースと水を取り出し、水の方を渡された。


「悪いな」

「気にしない気にしない」


 それから白夢が椅子に座り、アイコンタクトを送ってくる。

 俺は人口飲み水を飲んでから、


「神武の話だったな、神武は―――」

 

 そもそも神武とは神が宿った武器。

 何故、神が武器に宿っているのか。

 昔……それも2000年前、神は今のままでは世界が分からないと言い、地上へ降りたのだ。

 世界が分からないとは、今のままで世界の均衡が保たれているのか、という事らしい。


 そして神は地上へ降りた。

 だが、地上の世界と神の世界の時間軸が異なり、神は地上で生きる事が出来ない。

 自らを石に封印することで難を逃れたが、動くことが出来ずただただ時間が過ぎていくだっけだった。

 そこに1人の鍛冶をする青年が現れたのだ。


 神は青年と暮らし、今の世界がどれほど平和かを知った。

 結婚し、子も生まれ平和な毎日を過ごしっていった。

 だが、そんな平和な日常は一瞬の出来事で豹変する。

 戦争だ。


 戦争によって、青年は軍に徴兵されそこで武器製作の鍛冶をおこなった。

 開戦してから数か月、神の宿った石はお守り代わりと思っていた青年。

 そんな時、青年に1つの連絡が入った。

 『妻と子が暴力や凌辱の限りをされて死亡』と書かれた手紙が届いたのだ。


 青年は妻と子の身柄を確認しようとしたが、既にその遺体は敵軍が森に捨てたと言う。

 青年は恨み、相手を憎んだ。そんな時、神が呟いた。

『私を武器として使えば、君の恨み晴らせるだろう』と、青年はその言葉通り神を宿した武器、神武を製作した。

 その性能は桁違いで1人で1万の兵をなぎ倒す程。


 そこに目を付けた当時の王は、青年の使った武器を聞き、その元となる石を探した。

 そして、世界に散らばった10個石を見つけ、青年に神武を作らせたのだ。

 見事、戦争は終結。だが、異常なまでの力を手に入れた使用者達は、力に溺れ、世界を敵に回した。

 しかし、暗殺など武器の譲渡が行われ、世界中に散った。


 だが、人間はそれでも戦争を続け、本来仲間内である神武同士の戦いが起きたのだ。

 戦争を終結させるため、神達の長であるイザナギとイザナミは戦争に参加した兵達を飲み込み、戦争を終結へ導く。

 神武使いには力を使えば、神の侵食により取り込む様に自身に制約を掛け、世界に散らばった。


 ―――――――――


「……これが神武の正体だ」


 いつになく真剣な表情を浮かべながら聞いている白夢。


「……いつの時代も人ってのは変わらない、か」

「残念ながらな」



 呟きながら手に持つ、リンゴを互いにかじる。

 飲み込んでから白夢が口を開く。


「神武は分かった。レイスが強い理由は? 後、ぐちゃぐちゃにされてたよね?」

「そこまで見てたのか……」

「まぁねー」

「……さっき話した内容何だが、戦争を終結させる為に参加した兵達を飲み込んだと言ったよな?」

「うん」

「そいつらの命を使って俺は生きている」

「……って事は、兵達の命が尽きるまでレイスは不死身って事!?」

「そういう事だ。けど、それをすれば神の侵食によって、俺が神武に取り込まれて取り込まれた兵達と同じ命を使われる側になる」


 顎に手を付けてから、落ち着く白夢。


「……なるほどね。ありがとう、レイス」

「……別に、俺はこの礼を返しただけだ。他は話す気はない」

「うん、それで大丈夫だよ。ありがとね」


 笑いながら言う白夢に俺は布団を肩まで掛け、そのまま寝る。


「疲れたから寝るぞ」

「うん、おやすみ」


 そして、俺は眠りに落ち、その日を終えた。

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ただ俺は正義の騎士になりたかった 神蔵悠介 @kamukurayuusuke2

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