「薬十夜」後記

 あなたのハートにデストロイ★ ささやかです。

 さて、草食アングラ森小説賞に投稿した薬十夜(https://kakuyomu.jp/works/16816452220094960857)について、講評も終わったのでつらつらと後書き的なあれを書こうと思います。やーファンアートと頂戴してしまったのですよ、えへへ。超うれしい。一瞬だけ登場した本筋にかかわらない金魚をわざわざもってきてるあたりが好きです。金魚って人に飼われて管理されてるんですよ。観賞用に。


講評:https://note.com/kusawotabenai/n/n8fdf579d65ab


 まず、今回のテーマが「アンダーグラウンド」だったので少し困ってしまいました。私はアンダーグラウンドが苦手というか書いたことないというか。私はぶっとんだ小説をわりと好んで書く人間だと思いますが、つまり異常が平常な世界観になってしまうんですよね。しかし、アンダーグラウンドは文字通り下にある。なんの。普通の社会の下の。この二層が存在する世界観の物語をどうやって書けばええんじゃーと私は悩んだわけです、ええ。あとは最近小説を書けていなかったので自信がなかったけどなんかいろいろ書きたかった。


 そういう感じで考えた末に、夏目漱石の夢十夜をオマージュして、脈拍のない夢の連作にして、その夢が搾取されているという構造にすればアンダーグラウンドじゃないか、これならいろいろ書けるぞみたいな発想に至って、これが原型です。

 そこから世話係チャカの設定、ラストでラリッた「私」により兄であることが示唆されるは書き始め当初から、「私」が四肢欠損しているという設定は途中から思いついたはずです。あとは適宜夢を配置する感じですね。


 夢十夜なら、夢は十あるべきだと思ったんですか、そこまでクオリティーを維持して夢の数を増やすことができなかったのと、字数制限抵触のおそれと時間がリミットだったこともあって、最初と間と最後に現実をはさんで後は夢という構成になりました。というわけで作者的には脈絡のない夢を繰り返すことに比重がありました。夢十夜、夢十夜。

 それと夢メインなのは、さらっと過去にありましたと流した部分を現実パートできちんとやるとR18のハードルをぴょんとびしてしまうという都合もあります。これもアンダーグラウンドがテーマで苦しんだ理由の一つですね。

 ただ物語的には、無意味な夢を繰り返した挙句に全て失うということなので、現実に比重があると評価してもいいのかもしれません。まあ読者に委ねます。


 夢については、現実パートで「私」に僅かにでも関係するものを幾つか入れ(パンダ、誕生日)、残りは夢十夜のように脈拍がないが、傾向は出すようにみたいなことはぼんやりと考えていました。現実パートの後は完全にぶっとんだのを入れるとか(マグロ大王、ドッジボール)、アングラ暴力要素(愛犬、楽しい)のある夢を入れるとか、意味が分からないもの(アルプス一万尺)も混ぜるとかまあそんな感じです。

 

 書いてて自分でうまく書けたなと思ってたのは、「私」が薬でパーになっていく部分と、楽しい夢で私が暴力に酔うシーンだったので、そこに講評で言及があって嬉しかったです。文章で思考の奔流を書くとかが私と相性いいんですかね。

 あとはマグロ大王のツナ缶工場の流れが好きです。


 夢パートで意味が最も分からないのはアルプス一万尺だと思いますが、あの文字群は、アルプス一万尺の歌詞全てを文字化けさせたものです。字数制限が15000字なのに1300字以上も読者が判読できない文字群に費やしたことになりますが後悔はしていない。

 あと誕生日の焼死体がお父さん、腐乱死体がお母さんです。踊るパンダの描写は失っていく「私」そのもの。

 こんくらいかな。

 また何か書きたい。

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