スライム、売ります

スライム、売ります。

 無形族、スライム目、スライム科に属する唯一の生物。

 その名もスライムと言う。


 無色透明で、液体の様な体を持つ彼ら?は一定の形も持たず、草を食べて生活している。


 性格は穏やかで、実はなかなか知的、中には魔法が使える物もいる。

 と言っても所詮はスライム、魔法を主体に使う魔族には遠く及ばない。


 そんなスライム達だが……。

 ある時は残虐非道で自己中心的な冒険者のレベル上げの為に虐殺され……。

 またある時は、魔物からは魔力の糧にされ……。

 挙げ句の果てに、人間や魔族達から魔法実験用の的にされ……。

 そんな不運な扱いを長年受けてきた。


 だけど今、スライムのリーダーは新たな目標を得た、それは。


 皆に幸福を売って、人とスライムが仲良く暮らせる世界を作ろうと!


 そんな目標が持てたのは、この世界で出会った仲間たちのお陰。

 だから、そんな人たちだけでなく、より多くの人たちと幸せに暮らせる世界を作りたいと思ってる。

 そして今、そんな私の新たな物語の第一楽章が始まる!


 …………。


 「……と言うことで、私と一緒に幸せ売りません? あ、ソコのお兄さん、一緒にどうですか? え、幸せ売るなんて意味わかんない? ちょっとアンタ、アタシに喧嘩売ってんの、ハゲのくせに!? 幸せになりたくないの、ねぇ、ねぇったら~!」


 そして本日も、やや汚れたレンガの道と、コンクリートの建物が立ち並ぶ海辺の町の商店街で、青髪の美少女に化けたスライムのリーダーであるリーンが、騒がしい声を上げていた。


 そんな様子を、新しく夫婦となった二人とその養子となったスライムが微笑ましそうに見ていた。


 「全く、アイツは……」

 「貴方~、アレではやっぱりスライムのリーダーとしては、0点ですね~」

 「まぁな、だが恋のキューピットとしては100点かもな? どう思う、シノ?」

 「ええ、そう思いますよ。 せっかくですから感謝を込めて、恋のキューピットをからかいに行きませんか? マナもどうです?」

 「行く! 行く!」


 そして笑顔の3人は仲良く手をつないで歩みだす。

 幸せを売ってくれたスライムの元へ。

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スライム、売ります。 赤城クロ @yoruno_saraku

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