changeリツ
抜けるような秋晴れの空
あの浜辺で一人
海をながめながら
サンドを頬張るリツ。
レモネードを飲み干し、立ち上がる。
タクシーに乗り込む
「羽田まで」
国際線ターミナル
ロサンゼルス行きのゲートに消える。
しばらく日本には戻らない。
いつものカフェ
椅子にもたれかかり、遠くを見つめるリツ。
離れたカウンターでマスターがスタッフと話している。
「リツちゃん、ここんとこずっとあの調子よね」
「えぇ」
「あれは絶対、失恋ね」
「はい」大きく頷く。
カフェの扉が開いた。
「いらっしゃいませ」
「あらぁ、リリー姉さんお久しぶり!ケイちゃんも久しぶりね!」
リリー?
リツが振り向くと、いつかのガタイのいいイケメンがこちらを見ている。
思わず歩み寄るリツ。
「あら?リツちゃん、知り合い?」
「リツちゃん?」
リリーがはっとして、LINEでリツにスタンプを送ると、テーブルに置いたリツのスマホが鳴った。
「花さんから何か連絡ありましたか?」
「ううん、無いわ、ごめんなさい」
うなだれてテーブルに戻る。
「あの女の人、リリーさんとこの人だったんだ」
「来てたの?」
「うん、来てた」
「リツちゃんって、あんなにいい男だったのね。そりゃ花ちゃんもクラッとしちゃうわよね」
「かなりの色男よぉ。あんな姿、初めて見るわ」
リツの後ろ姿を見つめるマスターとリリー。
「私たちも、さんざん失恋してきたわよね…」
「うん」
「ほんと、辛かったわよね…」
「うんっ」
リリーは花にLINEを送ってみた。
「こんにちは。突然ごめんなさい。山田さんとリツちゃんに花ちゃんの退所のご挨拶をしようと思います。何かメッセージがあれば伝えますが、どうかしら?」
ほどなくして返信があった。
「リリーさん、ありがとうございます。山田さんとリツさんには「ありがとう」とお伝えください」
「わかりました。また働きたくなったら、いつでも連絡ちょうだいね」
「ありがとうございます」
リツのスマホにリリーからラインが入る。
「花ちゃんからです」
「リリーさん、ありがとうございます。山田さんとリツさんには「ありがとう」とお伝えください」
リツが振り返る。
マスターとリリーが両手でハートマークを送ると、リツはかろうじて親指を立てて応えた。
こんなことは今までになくて
リツは、自分が恋愛ごときでここまで振り回されるとは思ってもみなかった。
リツが花に出逢うまでにしていたことは「恋愛」ではなく、ただの「火遊び」だ。
沢山の人から好意を持たれても、自分が愛した人に愛されなければ意味がない──
そんなことを、教えられた気がする。
抜けるような秋晴れの空に
飛行機が吸い込まれてゆく。
爽やかな秋風が吹き抜ける。
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