罪★

しばらく沈黙の後

花は無言で立ち上がると、海側の全面ガラス張りになっている壁のカーテンを

ゆっくり閉じてゆく。

閉じ終わると、リツが後ろから優しく抱きしめた。


首筋にキス。


フェロモンはどこから立ち昇るのか?

耳の裏?胸の谷間?

フェロモンが立ち昇るとスイッチが入る。

相手のものか自分のものか分からない。

匂いとか、香りではない。

呼吸をするたび、脳が溶けだし、舌がしびれる。



激しくキスしながら


ソファーにもつれ込む


もう、ベッドまで間に合わない


髪をほどく


興奮が焦りに変わる


バスローブは半分着たまま


下着が太腿をすべる


お互いの体が吸い付くように重なる


舌を絡ませながら


花は自分で秘部に触れ、お互いを高める


キスと悦で息ができない


抑えても漏れる声


苦しいくらい強く抱きしめられ


じっと抱き合うだけなのに止まらない


痛いほどの快感と共にどんどん昇り詰める。


キスだけで果てそうになる


壊れそうなほど高まって、堕ちる──







──遠退く意識を必死につなぎ止めて

堕ちたリツの体の下から抜け出る。

リツにバスローブをかけて

シャワーを浴びにいく。




電話が鳴る。

「バトラーの武川です。お連れの方から一時間ほどしたら電話で起こすように承りました」

「…はい、ありがとうございます」

花の姿はなかった。

「帰ります。花」

電話の横に書き置きがあった。

ベッドに倒れ込み、しばらく起き上がれない。

結ばれたのに、完全に振られた。

こんなこと初めてだ。

オレは何が欲しかったんだろう?

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