「ねぇ、花ちゃん。こんなことは取り越し苦労かもしれないけど…自分と、家族を大切にね」

伊豆行きのチケットの受け渡しのために、花とカフェで会ったリリーは、帰り際にそんな言葉を残して行った。

リリーの勘は鋭い。



伊豆駅につくと、リツが迎えに来ていた。

「遠くまでごめんね。是非、招待したい場所があるんだ」

「どこですか?」

「たのしみにしておいて」

駅前に待たせたリムジンに乗り込む。

海岸沿いに走ると、異国情緒溢れる建物が見えた。浜辺にはプライベートヴィラが並ぶ。

ヤシの木が並ぶ通りにある白亜の低い建物の前でハイヤーを降り、受付を済ませると一棟のヴィラへ通された。

「すごい!素敵なところですね」

「気に入ってくれた?今からアーユルヴェーダを受けるんだよ。それからランチにしよう」女の扱いが上手すぎる。

「アーユルヴェーダ、受けてみたかったんです。嬉しい」


それぞれ施術用の個室に通され、念入りなオイルマッサージを受ける。今まで受けたどんなマッサージより気持ち良かった。最後のシロダーラでは意識が跳んだ。肌なんて、自分史上最高にスベスベだ。

「お疲れ様でした」

「ありがとうございました」

「こちらのバスルームをお使いください。下着以外のお召し物はお部屋のクローゼットにございます」

シャワーを浴びて、メイクをする。

髪はアップにして、服は…部屋なんだよね。

バスローブをはおる。

奥にある部屋への扉をそっと開ける。

「どうだった?」

「夢のようでした」

テーブルには豪華なランチが並んでいる。

「どうぞ」

リツが椅子を引いてくれたので座ると、そのままリツが膝を床についた。

「今日は生ひざまくら❤」

「えっ」

バスローブをはだけて、花の太腿に頬を乗せる。

「ダメですよ!」

「あー、やっぱもちもち❤」

太腿にキスする。

「やっ、ダメです!」

「なんで止めてって言わないの?」

花の足を持ち上げ、内腿をナメる。

「んっ、ダメっ!」

バスローブで太腿を覆う。

悩める美青年、発動。

花を抱きしめ、肩におでこをくっつける。

「先週は金曜日も、兄貴と会ってたの?」

「…はい」

「花さん、兄貴のこと好きなの?」

「……」

「もう、苦しいよ…どうすればいい?」

こんなやり方はズルいと自分でも分かっている。だけど…どんな手段を使ってでも手に入れたい。兄貴じゃなくて、旦那じゃなくて、俺だけのものにしたい。

こんな気持ちは初めてだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る