筆☆
シャンプー台に寝かされ、所在ない山田は腹の上で組んだ指をもじもじと動かしていた。
顔にシートを乗せられ、鼻息で飛ばないか気になって、息を潜める。
「熱くないですか?」
「は、はい!」変に力が入る。
気がつくとシャンプーは終わっていた。
あまりの心地よさに眠ってしまった。
イビキをかいていなかったか気になるほど熟睡した。
ブースに戻り、カットしながらリュウジが言う。
「カットが済んだら、顔剃りしましょうか?僕、理容の免許もあるんです」
「あ、はいお願いします」
細く長い指で髪をさばき、軽やかにカットしてゆく。鏡越しに目が合うと照れ臭いので、雑誌を読むフリをする。雑誌で隠れながら、チラチラとリュウジの指先や顔を盗み見る。中性的な美しさを持つリュウジから目が離せなかった。
カットが終わり、顔剃りに入る。
目元に蒸しタオルを乗せ、温かく滑らかな泡を筆で乗せる──首筋に。
あっ…あぁっ…そ、そんなに筆でサワサワするんだっけ?
泡をたっぷり含んだ柔らかい筆先が、山田の首筋を撫でる。
なんで何回も…はっあっはうっ…いつもの散髪屋ではそんなことしなかったのに!
筆先が首筋をゆっくりとなぞる度、ピクピクと体が反応してしまう。
あっ、あぁ、やめて…はっあっ…
アーーーーーッ!
山田の体が大きく跳ねた。
「動くと危ないですよ」
耳元でリュウジが囁いた。
わざとだ!わざとやってる!
山田は辱しめられた悔しさと、裏腹に沸き上がる快感に涙目になりながら耐える。
「ふふっ、可愛いな。アゴに梅干し作らないで。剃れないから」
そのまま、リュウジはおもむろに山田の上に股がった。
「?!」
筆で攻められ敏感になった首筋は、カミソリにも反応してしまう。
「は、はうっ」
首筋にカミソリを当てられ、見えない縄で縛られた山田はリュウジのなすがままだった。
ぴったり密着しながら、顔や耳回りを丁寧に剃ってゆく。
山田の中で何かが芽生えそうな感触をリュウジはしっかり掴んでいた。
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