開花
庭の芍薬が咲き誇り
甘い香りを漂わせている。
「お疲れ様です。今日は無事済んだようで良かったわね。急なんだけど、金曜日に弟さんからドライブしたいって連絡があったわよ。どうなのかしら?ちょっと心配だわ。」
「今日はケイさんにも来ていただいてありがとうございました。ドライブ、私が運転するみたいです。私は構わないのですが、どうですか?車の手配とか、どうなりますか?」
「こちらとしては、ドライブはあんまりおすすめ出来ないけど、花ちゃんが運転ってことは弟さんは免許を持ってないのかしら?」
「そうみたいですよ」
「そうね…それならいいかしら。人気のないところには行かないと約束して」
「わかりました。約束します」
「車はこちらで手配します。花ちゃんが当日、お店で受け取りしてください。事故のない様、気をつけてね」
「わかりました。よろしくお願いします」
「それと、毎週火曜日は山田さんの予約が固定になります。いつものお店でランチの予約だから、こちらからの連絡は省略します。また変更がある時は連絡するわね」
「わかりました。ありがとうございます」
ベッドでネットニュースを読みながら寛いでいると、夫が入ってきた。
花を抱き寄せ、キスをする。
「ねぇ、ライト消して」
レンタカー店で手続きをする花。
「ありがとうございました」
「いってらっしゃいませ」
青いヴィッツ。今日の空のように清々しい。
ちゃんと自動ブレーキも装備されている。
車を運転して、待ち合わせ場所へ向かうと、すぐにリツは見つかった。
「こんにちは。車いいね」
「こんにちは。リリーさんが素敵なのを選んでくれました。どうぞ後ろに乗って下さい」
「え?後ろ?」
「隣に人がいると緊張するんです…」
「まじ?!」
「最初だけお願いします」
「…はい」
「後ろですみません」
「慣れたら前いくからね」
「はい、わかりました」
「お天気で良かったですね」
「ほんと!気持ちいいよー海!」
「楽しみですね」
柔らかそうな白い手がハンドルを握る。
桜色の爪は綺麗に整えられているが、華美な装飾はない。指に納まる結婚指輪は見ないことにして、華奢なブレスレットが絡みつく細い手首にに目を奪われる。
角を曲がり、戻るハンドルを掌が優しく撫でる。
(ハンドルさばきがエロい…)
後ろに座って良かった。遠慮なく眺められる。
動画を録り、山田に送信。
「え!撮りました?」
「うん」
「撮影ダメですよ!」
「後ろ姿だから許して」
「もう撮らないでください!」
「はーい」
山田から即返信
「花さんポニテ!?」
「うん」うなじもしっかり撮影した。
電話が鳴る。
「今どこだよ!どこ行くんだよ!」
「海行ってきます」
「なんだよ!俺も行くから待って!」
「だめー」
「すぐ行くから!」
「仕事でしょ」
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