用心棒、参上

「兄貴、兄貴!」

「えっ、あ、はい」ズレた眼鏡をかけ直す。

「いつまで寝てんの?もう時間だから」

「あっ、すみません」


三人が料亭から出てくる。

「ありがとうございました」

「じゃ、またね!」

「また!」

「気をつけて」

手をふり、帰る山田とリツを見送る。



ふと見ると店の向かいにケイがいた。

「ケイさん! ほんとに来てくださったんですね!」

「うん何ともなかったみたいで良かったね」

「はい、楽しかったです」

「じゃあ、駅まで送るよ」

山田達と反対方向へ歩きだす二人。

リツがふいに振り返り二人の背中を見つけた。

「兄貴!」

呼び止められ、振り向く。

二人が並んで歩き、ケイがさりげなく

花を車道から内側へエスコートするのが見えた。

「アレ誰だ…」

「次のお客さん?」

「いや、花さんはもう帰らなきゃいけない時間だ」

「旦那?」

「…」

立ち尽くす山田。




夜、自宅で父親と二人で夕飯をとる山田。

テレビのナイターだけが響き、無言で食べる。

風呂から上がり自室でベッドに寝転がり、花のハンカチを頬にあて、ぼんやりとひざまくらを思い返す。二人の背中が頭に浮かび、遠くを見つめる。

リリーに来週の予約を入れはじめた。

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