用心棒、参上
「兄貴、兄貴!」
「えっ、あ、はい」ズレた眼鏡をかけ直す。
「いつまで寝てんの?もう時間だから」
「あっ、すみません」
三人が料亭から出てくる。
「ありがとうございました」
「じゃ、またね!」
「また!」
「気をつけて」
手をふり、帰る山田とリツを見送る。
ふと見ると店の向かいにケイがいた。
「ケイさん! ほんとに来てくださったんですね!」
「うん何ともなかったみたいで良かったね」
「はい、楽しかったです」
「じゃあ、駅まで送るよ」
山田達と反対方向へ歩きだす二人。
リツがふいに振り返り二人の背中を見つけた。
「兄貴!」
呼び止められ、振り向く。
二人が並んで歩き、ケイがさりげなく
花を車道から内側へエスコートするのが見えた。
「アレ誰だ…」
「次のお客さん?」
「いや、花さんはもう帰らなきゃいけない時間だ」
「旦那?」
「…」
立ち尽くす山田。
夜、自宅で父親と二人で夕飯をとる山田。
テレビのナイターだけが響き、無言で食べる。
風呂から上がり自室でベッドに寝転がり、花のハンカチを頬にあて、ぼんやりとひざまくらを思い返す。二人の背中が頭に浮かび、遠くを見つめる。
リリーに来週の予約を入れはじめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます