ひざまくら

「はーうまかった!」リツは伸びをすると、おもむろに言い出した。

「ねぇ、花さん。お願いしていい?」

「なんですか?」

「ひざまくらして?」甘える時は遠慮なく。リツの座右の銘だ。ちゃんと小首を傾げて言う。

「…え?」

「おまえ何言ってんだよっ!」

「年上の女性にはひざまくらしてもらいなさいってじいちゃんの遺言で…」グイグイいく。イケメンの成せる技だ。

「そんなの聞いたことねぇよ!」

「いいですよ」受け入れる。花の座右の銘だ。

「えぇ!?」お願いしたリツも驚く。

「よしっ」花の太腿に頭を乗せるリツ。

「はーやわらけ~しあわせー」

山田の膝の上の拳が震える。

「癒されるわ〜」

「ふふふ」

まんざらでもない花を見てさらに震える拳。

そんな山田を尻目に、二人はいちゃつき出す。

「花さぁん。デートどこ行きます?」

「うーん、ドライブとか?」

「いいね!海とか山とかそういう所でひざまくらしてもらったらサイコーだろうな」

「音楽、オレ用意してきますね」

「花さんは何聴くのかな? サザンとかユーミン世代?」

「そうですね、どちらも好きですが、今はワンオクが好きです」

「俺も好き!花さん、意外だなぁ」

「じゃあ音楽は用意するから、運転お願いします」

「免許お持ちじゃないんですか?」

「そうなんですよ」

「私あんまり自信ないけど大丈夫かなぁ…」



「もういいんじゃないのか?」

ものすごい形相で山田が低くつぶやく。

「あ、交代?」

「へ?」

「どうぞ」

「ど、どどどどどどうぞって!?」

「兄貴も甘えなさい」

「失礼します」

素早くリツと反対側にぴったり付ける山田。

「はい、どいて」

リツの頭をどけて、そっと自分の頭を乗せる。

「はぁ~」堕ちる山田。

遠い昔…

あたたかな景色が山田の脳裏に浮かぶ。

「ふふ」

リツと花は、山田の豹変ぶりに目を合わせ笑い合う。

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