3人のランチ

「いい女じゃね?」リツが小声で囁く。

無言で押し返す山田。

「リツさんは、職場はお近くなんですか?」

「職場というか…自宅兼事務所ですね。赤坂です」

「在宅でお仕事されてるんですね」

「えぇ、時間に融通が効くのでランチはいつでも歓迎です」

テーブルの下で山田がリツの腕をぐいっと引っ張る。

「兄貴が女性と毎週ランチに行くって聞いて、ちょっと心配になっちゃって」

「心配?」

「おいっ!」

「だって兄貴、彼女いたことないから。こじらせてます」

「やめろよ!」

「そうなんですか?素敵な方なのにもったいないですね」

「どうすればモテますかね?」天性のモテ男にはモテ方が分からない。

「たぶん…慣れだと思います。女性に接するのに慣れること。それと、ちょっとイメチェンかな」

「イメチェンですよね!あと慣れかぁ。男子校だったしねー。」

「だから、このランチとかレンタルで練習するのはいい事だと思いますよ」

「ですよね!デートしてやって下さい」

「おいっ!」

「映画、楽しかったですね。次はいつにしますか?」

「つ、次ですか?」

「へぇー、映画行ったんだ」

リツはニヤニヤしながら、山田の顔を覗きこむ。

「買い物、どこにしますか?」

「買い物デートの約束してるの?イメチェンかー!兄貴の買い物なら、俺がいい店紹介するよ?」

「助かります。男性のお店はよく分からないので」

「じゃあ、お店の場所兄貴に伝えます。店にも連絡しておくから」

リツは意味深な笑みを浮かべている。

「オレも花さんとデートしたいなぁ」

「デートクラブじゃないからな!」

「レンタルお待ちしてます」

「花さんっ!」山田は捨てられそうな子犬の目で訴える。

ふふ、と笑って鴨肉を口に運ぶ花。

リツ、山田が見入る。(やっぱエロい)

花と目が合う。

「ん?」

「う、上手いよね鴨肉」

「う、うん、あぁ」

「ほんと、おいしい」

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