第269話


 レミリアの言葉に、カイリは戸惑うしかない。

 一緒に、明日の昼バイキングに行って欲しい。

 今の今まで食事の話はしていたが、だからと言ってこれがただのお誘いなわけが無い。


「えっと、……理由を聞いても良いか?」

「はい。正しくは、私の下見に付き合って欲しいのです」


 下見。

 仕事の下見ということか。レミリアの仕事と言えば、第二位。つまり、諜報に関わる仕事だろう。

 ますますカイリが付き添う理由が見えてこない。当惑が膨らんでいくままに、カイリの眉尻が下がる。



「レミリア殿。それは、フュリー村と関係があることなのでしょうか」



 困っていると、フランツが軌道修正をしてくれた。こういう場面を見ると、やはり頼もしいなとカイリは尊敬する。


「そうです。順を追って説明しましょう。……まず、第二位の部下の一部は、今回フュリー村に雨が降っていないことを二ヶ月前の時点で特定していたそうです」

「でも、その報告を怠ったんだよね! やれやれって感じだよ」

「ケント様の言う通りです。私がまだ、半年前に団長に就任したばかりであるという落ち度とも言うべきでしょう。監視が行き届いていなく、申し訳ありませんでした」


 深々と、テーブルに額を擦り付けるほどに頭を下げられ、カイリは仰天した。フランツ達も度肝を抜かれたのか、咄嗟とっさに返答が出来ずにいる。


「身内の恥をさらしますが、彼らは、聖歌騎士でもない、ただの教会騎士である私が団長に就任したことを快く思っていなかったのです。後で発覚して困れば良い程度の軽い気持ちだったと言っていました」

「……うっわー……。相変わらず、プライドが無駄にたっけえな」

「その通りだ。団長が必ずしも聖歌騎士でなくてはならないという決まりなど無い。ならば、俺はどうするのだって話だな」

「フランツ様は、悪意を全て力でねじ伏せているではありませんの。他の教会騎士と一緒にしないで下さいませ」


 仰々しく腕を組んで頷くフランツに、シュリアが冷めたツッコミを飛ばす。

 だが、カイリとしては全く流せない話だった。聖歌騎士じゃないから腹が立つという理由で仕事を放り出すなど、大人の所業とは思えない。

 それに。


「……馬鹿にされていたんですか、フランツさん。教会騎士だからって」


 フランツも、団長だが聖歌騎士ではない。

 シュリアもねじ伏せていたと言うからには、団長のくせにと馬鹿にされていたと認めたも同然だ。

 剣呑に尖ったカイリの声に、しかしフランツは涼しい顔で肯定した。


「うむ? まあ、仕方がない。教会は聖歌騎士至上主義だからな」

「でもっ。……フランツさんは、そこら辺の騎士なんかよりも、ずっと強くて頼もしいのにっ」


 そんな差別をする輩がいることに腹が立つ。元々教会の内部にカイリは良い印象を抱いていなかったが、こうして直に聞くと胸の底がざわざわと嫌な感じに騒がしくなる。

 大切な人を、ましてや頑張って団長になった人を嘲ったり陥れることを許される状況が、ひどく腹立たしくて仕方がない。


「カイリ……嬉しいぞ。父さん、泣くぞ」

「うっわ、ここで泣くなよ。カイリの所に移動してくれや」

「うむ、分かった。リオーネ、席を替わってくれ」

「はい、フランツ様。どうぞ♪」

「って、フランツさん?」

「……親馬鹿ですわ。馬鹿ですわ。本当に親馬鹿ではなくて、馬鹿親ですわ」


 あっという間にフランツがカイリのところへ移動し、わしゃわしゃと頭を撫でてくる。

 あまりに嬉しそうに緩んでいる顔に、カイリは何も言えなくなった。悔しい気持ちが、彼のおかげで喜びに変わっていく。


「ふっふー。カイリも、随分フランツ殿に甘える様になったね!」

「そう、かな」

「そうだよ! 僕としては、腹立たしいけど嬉しい限りかな」

「……そっか」


 ケントのにこにこした笑顔に、カイリも照れを交えながら頷く。

 彼の言葉には含みもある気がしたが、そこは今は追究しない。してもかわされるだけだろう。


「フランツ殿。親馬鹿は終わったでしょうか。話を続けたいのですが」

「ああ、申し訳ない。俺は勝手にカイリをわしゃわしゃしていますので、お気になさらず」

「承知しました」


 そこは気にして欲しい。


 突っ込むどころか、あろうことか了承するレミリアにカイリは制止をかけたかったが、虚しく話は続いていった。


「彼らは即刻首にしました。第二位にいた間の記憶も全て消去しましたので、情報漏洩はありません」

「え。……記憶って、消せるのか?」

「はい。第二位は、特に国家機密も扱う騎士団です。円満退職でよほど信頼の厚い者で無い限りは、第二位を引退する際に記憶を抹消します。抹消はひどく扱いが難しいので、出来る方は限られていますし、今回はケント様に手伝って頂くことになりました」

「うん! ま、記憶を上塗りするって言えば良いのかな! 催眠みたいなものだよ」

「催眠……」


 何となく、洗脳の様な印象を受ける。あまり良い気分はしない。

 だが、第二位は特に重要な国家機密を扱うというのならば、必要な処置であることも納得は出来た。腹いせに、重要な情報を渡さないという幼稚な嫌がらせをする輩が出てくるくらいだ。除籍されたことを逆恨みして、誰かに悪意を持って情報を流されてしまったら、国家が激震で揺らぐことになるかもしれない。


 ――きっと、最悪、命も。


 催眠が必ずしも上手くいくという保障は無い気がする。必要ならば、手を汚すこともするだろう。

 敢えて口にはしないし、彼らも口にはしたくないはずだ。だからカイリは、気付かないフリをして続きに耳を傾ける。


「今回の責任は、上司である私にあります。故に、二日前にケント様から報告があってから、すぐに信頼出来る部下を引き連れて村に直行しました。コンセプトは、真夜中の旅商人」



 怪し過ぎるわ。



 盛大に突っ込みたかったが、あまりに大真面目に語られたので、カイリは機会を逸した。

 他の者達も物凄く何かを言いたげに口元を引くつかせていたが、レミリアはとんと構わずに任務の内容を語る。


「幸い、聖歌語を使える教会騎士も聖歌騎士も聖歌語を使えない教会騎士もいる構成でしたので、聖歌騎士に簡易魔除けを施してもらい、一斉に村に突撃しました」

「と、突撃……したの?」

「はい。その結果、ただの教会騎士以外は気分が大なり小なり悪くなりました。つまり、少なくとも聖歌語を使えれば排除機能が働くようです」


 淡泊に分析を展開していくレミリアに、フランツ達の視線も変わる。真剣な光が灯り、興味深げに切り込んだ。


「つまりよ、聖歌語を使う奴らは敵と看做みなすってことだよな?」

「その通りです。遠くに、ケント様の言う通り監視役の気配がしましたが、我らがあまりに堂々と村へ入って、そのまま寝泊りしたので、教会騎士だとは気付かなかった様でした。無様です」

「ぶ、ぶざ……うん。そう」


 所々にレミリアの物言いは棘がある。カイリはどう反応して良いか分からずに、呆けた様に流した。彼女の性格はこういう方向性なのだと言い聞かせる。


「カイリの言う、呪う様な言葉は残念ながら聞き取れませんでした。申し訳ないですが、そちらは第十三位にお任せしたいと思います」

「……承知した。……しかし、これは元々第十三位が受けた依頼ですが、ファルエラが関与してくるとなると、話が違ってくる。ケント殿、第二位と協力体制を敷けと言うことでしょうか」

「んー……。……最終的にはそうなりますし、国のことなので第一位も関わってきますけど。明日の件は、レミリア殿からの追加の依頼になりますね」

「追加? ああ、それがカイリへのバイキングを一緒にとやらですか」


 フランツが先程の要請を思い出したのか、したり顔になる。何となく先が読めている様な不敵さだ。

 カイリには何やらさっぱり分からないので、大人しく拝聴する。

 だが、次の一言に崩れ落ちた。



「シフェル随一ずいいちの聖国ホテル、グレートパーフェクトビューティフォーアーンドエクセレントアメイジングワンダフル」



 頭悪そうな名前だな。



 取り敢えず、最高な感じの単語を並べまくった名前に、カイリは頭を抱えたくなった。何故、聖都シフェル随一とうたわれるホテルが、そんな頭が悪そうな名前になってしまったのか。決定した人間を心行くまで説教したい。


「略して、グレワン」

「ぐ、グレワン!?」

「初代教皇が名前をお決めになったこのホテルですが」

「初代教皇かよ!」

「……カイリ、どうしましたか」

「……、ごめん。何でもない」


 冷静なレミリアのツッコミに、カイリは額を押さえて進行を促す。

 ケントも隣でけらけら笑っていた。「分かる分かる!」と息も絶え絶えに言っていたので、同じ感想なのだろう。心の底からホッとした。



「ここで、次の日曜日、ラフィスエム家が大きなパーティを開きます」

「――――――――」



 一瞬で、フランツ達の空気が一変した。鋭い猛者の気迫を研ぎ澄まし、彼女の言葉へと向かっていく。


「……それは、ホテルもグル、ということですかな」

「いいえ。ホテル自体は潔白です。ケント様の家族とは珍しく懇意にはしていますが。基本、ここはあらゆる者とコネを持たない、今時珍しほどの清廉潔白なホテル。……ただし、だからと言って、陰謀の舞台にならないとは限らないのです」


 静かに投じられ、フランツ達も唸る。

 確かに、秘密裏に外部の者を手引きしたり、罠を仕掛けることは可能だとカイリも思う。ホテルが厳重に警戒していようと、何処に穴があるかは誰にも分からないのだ。


「そのため、昼食を食べに行くのを装って現在のホテルの内部を下見したいのです。当日、ホテルの者とも連携は取りますが、明日はあくまで私とケント様自身であらゆる箇所を見て回っておきたいので」

「……何故、カイリが必要なのです?」

「カイリは、あらゆる面々から注目はされていますが、まだ新人です。行っていない場所も店も多く、騎士達の知り合いが多いとも言えない。今回は、ケント様を仲介して私とカイリが知り合った。親睦を深めるために、昼食という軽い場所から付き合いが始まるという体裁が一応整えられます」


 レミリアの滔々とうとうたる話に、フランツ達も納得顔で頷いた。カイリも、徐々に己が求められているものを把握していく。


「……なるほど。俺達他の第十三位のメンツでは悪目立ちし過ぎるし、何かを企んでいるとしか思われないですからな」

「かと言って、ケント殿とレミリア殿の二人だけだと、団長同士だし、やっぱり密会にしか思えないってことか。それで、カイリってか?」

「ええ、その通りです。カイリは王族から依頼を受けたりしていますが、カイリ自身に依頼をしたということは外観上は分かりません。それに、まだラフィスエム家はその依頼を把握していない」

「……レミリア殿は、それをどこで?」

「ケント様からです。ただし、知っているのは私のみになります」

「レミリア殿は、口が堅いからね! ほら、こんな風に仕事に対する姿勢は超真面目だし!」

「……なるほど。良いでしょう」


 疲れた様にフランツが承諾し、ケントはにこにこと人の良い笑顔を浮かべている。何となく嫌がらせをしているのかと勘繰りたくなるほどの良い笑みだ。カイリは小さく、ケントの頭を小突いておく。


「カイリは教皇に拉致されたり、聖歌の力が強いと知られてはいますが、それでもまだ危険視の度合いが他の第十三位の者より低い。加えて、ケント様と親友という立場です。ケント様と私の間にカイリが挟まれば、相手も警戒はするでしょうが、ただの団欒だんらんかもと疑心暗鬼になってくれるでしょう」

「……つまり、少しでも警戒心を下げるために、俺が必要ってこと?」

「そうなります」

「……。でも」


 レミリアの言い分は分かった。

 しかし、それでも警戒心が下がるだけで、あまり表向きの様相をつくろえていない様に思える。


「俺とケントは確かに親友だし、一緒にいても不自然じゃない。でも、それにレミリアが加わったらやっぱり不自然じゃないかな。俺達ってどう足掻いても初対面だろ?」

「はい。その通りです」

「この三人だと、ケントが俺にレミリアを紹介するっていう感じになるのは分かる。でも、何でレミリアを? って思われないか? ケントが俺に誰かを紹介するなんてよっぽどな気がするし。一緒に食事がギル殿なら、まだ分かるけど」

「えー……ギル殿?」


 ケントが物凄く嫌そうに不服を申し立ててきたが、その反応こそが不自然に思われない理由に他ならない。

 ギルバートは前からケントと仲良くしようと突進していたみたいだし、ケントもケントで彼を邪険にしながらも、他の人を相手にする様には仮面を着けてはいなかった。

 カイリはギルバートと何度か話をしているし、彼の強引さならば三人で行動したとしても怪しまれないだろう。


 だが、ケントとレミリアはどうなのだろうか。


 確かにレミリアには第一位の様な盲目さは感じないが、二人でいたら密会に思われるというのならば、プライベートで外出はしていないに違いない。

 レミリアは黙ってカイリの反論を聞いていたが、居住まいを正して改めて向き直ってきた。


「カイリの意見はもっともですが……」

「一応ねー。不本意だけど、僕とレミリアはそれなりに仲良いって思われてるみたいなんだよねー」

「え? そうなのか?」

「うん。レミリアが割とずっばずっば僕に物を言うし、僕もそれを咎めたりしないから。レミリア殿に結構嫉妬とか嫌悪とか集中はしているみたいだけど」

「そんな些末事は今更です。嫉妬をするくらいなら、ケント様をコテンパンにしてやる気概で殴り続ければ良いのです。そうすれば、少しはケント様が別の人に対するのとはまた違った、虫を見る目で見下してくれます。彼らにとってはご褒美でしょう」


 それもどうかと思う。


 レミリアはどうやら、ケントに相当鬱憤が溜まっているらしい。先程も、カイリがケントを叱ったり叩いたりするのを激しく推奨してきた。

 ケントは相変わらず「酷いよね!」とカイリに笑顔で同意を求めてくるが、少しは労わってやれという気持ちが湧く。

 だが、のほほんとした複雑なカイリの心に、不意打ちでレミリアが打ち込んできた。



「それと。……申し訳ないのですが、カイリは聖歌騎士でも第十三位の人間なので」

「え?」

「カイリ自身はかなり注目されています。聖歌騎士だから、周りも無視は出来ません。ですが、……第十三位にいるという時点で、私やケント様と共にいても、重要な仕事を実行している最中だとは思われにくいのです」

「――……」



 淡々とした物言いだ。私情を交えない、義務的な声の調子に響く。

 それでも、彼女の瞳が一瞬、罪悪感が混じる様に揺れた。その反応だけで、カイリは冷水を浴びせられた様に頭の中が現実に引き戻される。


 第十三位だから。


 それは、この聖都に着いた当初から散々投げられたきた罵倒だ。

 最近だって、教皇拉致事件で第十位には色々言われてきた。きっとフランツ達も、レミリアが敢えて言おうとしなかったこの裏の意味を、理解していただろう。

 カイリが考えなしだった。レミリアもフランツ達も無意味に傷付けたと項垂れる。


「……、そっか。……っ」


 何かを続けようとして、詰まる。何を言ってもひび割れて聞こえそうだ。

 フランツ達を傷付ける言葉に怒ろうかとも思ったが、怒りは湧かなかった。


 レミリアは、正直だ。


 本当なら、この理由は明かさなくたって終わりに出来ただろう。ケントとレミリアがそれなりに仲が良い、ということでまずまず納得は出来たかもしれない。

 それなのに口にしたということは、彼女なりの誠意と、そして忠告だったのだと読み取れる。

 このひりついた胸の痛みは、カイリの頭の回らなさへの罰だ。そして、言いにくいことでもはっきりと伝えてくれる彼女に対して、信頼出来る証でもある。

 取り敢えず、この気まずい空気を何とかしたい。

 思って、何とか続きを紡ごうとカイリが必死に頭を回らせていると。



「……。言い訳にはなりますが、第十三位を有能と見ている者も、騎士団の中にはちゃんといます」

「――」



 レミリアが静かに、暗く漂う空気を割ってくれた。

 反射的に顔を上げると、レミリアの淡々とした表情とかち合う。


「教皇の手前もあって声をあまり上げることはありませんが……周りに流されない者ほど、第十三位の力を認めている者は多いのです。現に、ヴァリアーズ親子をはじめとして、貴方達と普通に接する者達が少しずつではありますが増えているでしょう」

「レミリア……」

「第十三位という貴方の立場を利用しようとしている身では、信じてもらえないかもしれませんが……私は貴方達に一目置いています。だからこそ、協力して欲しいと思いました」


 身勝手ですみません、とレミリアが頭を下げる。

 こんな風に素直に頭を下げる人間を、カイリはこれ以上責められることは出来なかった。フランツ達も涼しい顔をしてはいるが、少しだけ驚いた様に空気が揺れている。

 だが、カイリが何かを言う前に「それから」とレミリアがフランツ達に改めて向き直った。こちらの答えを待たずに紡ぐのは、許しが欲しいわけではないという宣言と同義だ。

 彼女が姿勢を正したのを見て、カイリだけではなく、フランツ達の背筋も伸びた。


「先程、部下の一部を切った上に、ファルエラの情報を緊急に深く集めなければならなくなりました。正直、第二位は信頼出来る人手が足りていないのです」


 信頼出来る人間が足りない。

 第二位は情報を専門に扱う騎士団だ。国の命運を握っていると言っても過言ではない。

 その団長であるレミリアが、信頼出来る人物が少ないと暗に明言している。

 彼女は先程、自身がただの教会騎士だから舐める者も多いと口にしていた。改めてこの教会の闇の深さを知る。

 そして、そんな慎重に思える彼女が、第十三位に協力を求めてきた意図にカイリの胸が熱くなった。


「……ま、団長であるレミリア殿自らが、ホテルの下見なんていう地味な作業するくらいだしな。それで?」

「日曜日、ラフィスエム家のパーティには、主だった重鎮達が招かれています。クリストファー殿もその一人です」

「クリスさんが? ……でも、侯爵だし、色々と力もあるし、当然なのかな」

「その通りです。王族からは、ジュディス王女殿下も。そして、騎士団の方に護衛の任務も要請されています。護衛ということで、第十位の一部も来るでしょう。団長であるパーシヴァル殿は参加が決まっています」

「第十位……」


 つい最近一悶着があった騎士団だ。パーシヴァルとは一応の協力関係を築けたし、ファル達の処分も決まっていたが、素直に共闘出来るかと言われるとなかなか難しいものがある。

 フランツ達の顔も一斉に渋くなったが、構わずにレミリアは続けた。


「第十位は正直、パーシヴァル殿は信頼出来ますが、先のカイリの事件で信用はガタ落ちしています。そんな状況なので、第十位以外の騎士団にも要請するということが、今日、第一位と第二位の合同会議で決定しました」


 話が、だんだん読めてきた。

 ケントが、意地の悪い笑みを向けてくる。挑発する様な笑顔は、試されている様にも思えた。



「お願いします。カイリにはホテルの下見を。そして、第十三位に、日曜日のラフィスエム家の招待客の護衛兼調査にご協力頂きたいのです」

「――――――――」



 レミリアの深く下げた頭を、カイリも、フランツ達も、真っ直ぐに見つめるしかなかった。


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