第118話


「ちょっと! 冗談じゃないよ!」


 メリッサを首都に連れて行くとフランツが告げた時、烈火の如くアナベルは怒った。顔を真っ赤にしてわめき散らす姿に、メリッサは心配そうに見つめる。


「何でお姉様が騎士にならなきゃならないんだい!? 戦いどころか、争いも嫌いなお姉様が、どうして! ……ふざけるんじゃないよ、この泥棒!」

「アナベル。騎士様は……」

「お姉様は黙っていて! こいつ、最初からお姉様のこと狙ってたんだよ! そうじゃなきゃ、偶然目が合うなんて、そんな物語みたいなこと起こるはずないじゃないか!」


 それは、出会いのことを指しているのだろう。

 確かにフランツも、二階の窓から身を乗り出すメリッサと視線が絡み合ったのは、天にも昇る様な想いだった。あんな奇跡があるのかと、神がいるのなら感謝しても良いくらいだ。

 しかし、そのおかげで今、この仲の良い姉妹は引き裂かれようとしている。

 それだけは、フランツとしても心苦しかった。


「俺は、確かに泥棒だ。お前の言う通りだな」

「……っ!」

「だが、……歌を歌えるというのは、君達が考えているよりもよほど深刻な問題なのだ。教会が欲している、というだけではない。……狂信者を、知っているな?」


 そもそも、狂信者が騒ぎ始めているからという理由でフランツは遠征に出たのだ。

 しかし、彼女達は揃って顔を見合わせていた。やはり、一般人にとって狂信者というのは認知が甘いものなのだ。



「狂信者は、歌を歌える者を欲する」

「はっ! そんなの、教会だって同じだろう? 同じ穴のムジナってやつさ」

「そうかもしれんな。……だが、狂信者の手段は教会より残酷で、その末路も悲惨なものだ。抵抗すれば四肢をもがれ、死ぬまで強制的に歌わされる」

「――っ」



 鋭く息を呑む音が目の前から同時に上がった。

 信じられない、といった風に凝視してくる二人の眼差しは純粋だ。まだ世間に汚される前の清らかさが漂ってきて、フランツは少しだけ眩しくなった。

 無意識に目を細めるていると、アナベルが足掻あがく様に首を振る。


「……なっ、……何なんだい、それは。そんな人道から外れたこと、ほんとに」

「本当のことだ。現に、彼らの犠牲になった者も少なくはない。聖歌騎士もだが、聖歌騎士になる前の一般人も含めてな」

「……っ」


 明かされた凄惨せいさんさに、二人が顔色を失う。それ以上声が出ないと言わんばかりに絶句する彼女達に、フランツは淡々と任務の内容を告げることにした。


「今回俺達第十三位がここを訪れたのも、最近この付近で狂信者達が不穏な動きをしていると連絡があったからだ。……もしかしたら、メリッサ。お前の存在を嗅ぎつけていた可能性もある」

「……、わ、たし、ですか」

「ああ。もし、歌を聞かれていたのが俺ではなく狂信者だったなら、……言いたくはないが、もう二度と生きてここに帰ることはなかっただろう」


 それに、と。 

 更にフランツは残酷な事実を突き付ける。

 これは、世界各国共通の狂信者への認識だ。脅すわけではないが、知っておかなければならない。



「狂信者は、歌を歌える者を奪った後、歌える者をさらったと知る者達を軒並み殺す」

「――――――――」

「つまり、アナベルを含むこの孤児院も全滅していた可能性があるということだ。……それだけ歌える、ということは特異なことなのだ」



 分かって欲しい、とフランツは頭を下げる。

 メリッサもアナベルももう何も言わなかった。ただ、オレンジ色の綺麗な髪が、揃って不安そうに揺らいでいる。彼女達の体が小さく震えている証だった。


 恐がらせてしまった。そのことに、フランツは小さく胸を痛める。


 だが、何も知らないまま――仮にフランツが彼女を見過ごしたとしても、いつかは暴露される日が来るだろう。それが狂信者相手だったならば、目も当てられない。フランツが生涯黒い後悔を背負って歩いていくのは火を見るより明らかだ。

 それならば、恨まれても憎まれても、彼女を保護する。フランツは正しい道を選び取って行きたかった。


「……二日だけ、猶予ゆうよを与える。メリッサ、……親しい者に別れを告げて欲しい」

「――っ! あんた!」

「アナベル。やめなさい」


 静かな静止に、アナベルは泣きそうな顔で止まる。噛み付く様な表情のまま、アナベルはフランツを睨みつけてきた。

 しかし、メリッサは。


「分かりました、騎士様」

「……、ああ」

「騎士様、……いえ」


 一度言葉を切って、メリッサは口元に手を当てる。

 それから、晴れやかに笑った。まるで未練など無いと豪語するかの様に綺麗に笑顔を咲かせる彼女に、フランツは目を見開く。



「フランツさん。……ありがとうございます」

「――」



 深々と頭を下げて、メリッサが礼を口にする。

 目の前に下げられた頭には、確固たる信念が宿っている様だった。不安に揺れながらも真っ直ぐに貫く、芯の様なものを感じられた。

 彼女のふわりと揺れるオレンジの髪が、まるでほのかな日差しの様に思えて、フランツは眩しさを感じながら目を伏せる。

 そして、思う。



 ――やはり、彼女は夜空を照らす太陽の様な人だ、と。



 その柔らかな太陽を家族から奪う残酷な現実に、フランツは己の無力をひっそりと噛み締めるしかなかった。











「――こんな時間まで夜更かしかい、お義兄様?」

「――」


 キッチンで、フランツがこぽこぽと茶を注いでいると背後から声をかけられた。

 この意地悪い響きと呼び方をする人間など一人しかいない。心の重さをそのまま吐き出しながら、フランツはのろのろ振り返った。


「……アナベルか」

「いやですわ、フランツ義兄様。この泥棒は、どれだけ月日が流れても泥棒なんですもの。勝手に茶を飲むなんて、どういう了見かしら、フランツ義兄様」

「……。……これは、俺が買ってきた茶葉だ。使いたければ使ってくれ」


 疲れた様に溜息を吐き、フランツはさっさと引き上げようとする。道具は後で洗おうと場を離れようとした。

 だが。


「あら、失礼なお義兄様。少しは義妹とお話して下さってもよろしいんじゃなくて?」


 入口を両手で塞ぐ様に、アナベルが立ちはだかる。

 どうあっても逃がすつもりはないらしい。遂に捕まってしまったかと、フランツは頭に鐘が叩き鳴らされる様な痛みを覚えた。

 彼女がフランツと一対一で話したがっていたのは分かっていた。きっと、メリッサのことについて散々不服があるに違いない。


 だから、無視をしていた。


 彼女からの手紙も散々無かったことにした。破り捨てることはしなかったが、それでも彼女に付き合うつもりは死ぬまで無いと思っていたのだ。

 もう二度と、この地を踏むまい。そう決意していた。

 それなのに。



 ――カイリを故郷に連れて来るダシに使ってしまった。



 つくづく弱いなと、フランツは己の甘さを痛感する。


 手紙を、カイリを故郷に連れて来るダシにしたのか。

 それとも、――『カイリ』をダシにしたのか。


 分からないまま、フランツは口元は笑っているのに目元は全く笑っていない義妹を淡々と見つめ返した。



「俺に、何か用か」

「……あんた、家族を持ったんだね」

「――っ」



 一寸、フランツは目を見開いてしまった。

 すぐに表情は戻したが、真正面から凝視していたアナベルが気付かないはずがない。案の定意地の悪い笑みを口元に浮かべ、嘲る様に棘を刺す。


「お姉様が死んだら、今度はあの子かい。しかも、お姉様と同じ聖歌騎士とはね。随分ずいぶんと都合が良すぎじゃないかい?」

「……たまたまだ」

「それに、ひどく従順な子を選んだねえ。お姉様も従順だったし、そういう子ばっかり選んでいるんだろう?」

「……カイリは、別に従順では」

「嘘。大層飼い慣らされているよ。あんたを罵倒したら、あの子は悲しそうに否定した。それに、あたしのあんたを見る目を目撃するたび、うつむいている。あんただって、それは分かってんだろ」


 鋭い観察眼だ。ぐうの音も出ない。

 カイリは口にこそ出さないものの、アナベルがフランツを見る目つきが不穏なことに気付いている。それを目にするたびに悲しそうにしているのは、フランツも気付いていた。

 知っていながら、フランツは特に何の対策もしなかったのだ。

 己の弱さに、吐き気がする。


「今度は、何処からさらってきたんだい? 両親が死んで呆然としているところを、言葉巧みに騙し取ったかい」

「……あいつの父親とは親友なのだ。親友が頼んで来たから、俺は引き取っただけだ」

「わざわざ息子として? はっ、物は言い様だね。結局あんたは、自分がさみしいから。自分が可哀相だから。……お姉様の代わりに、あの子を家族にしただけだろうさ」

「……っ」


 言い返すことが出来なかった。鋭い牙で喉を噛み千切られた様に、声が上手く出てこない。

 そうではない。

 カイリは、メリッサの代わりでは無い。


 ――代わりになど、なれるものか。


 心の中では思っている。むしろ腹すら立てているのに、反駁はんばくが出来ない。

 どうしてだろうと思考がぐちゃぐちゃになっていること自体に愕然がくぜんとしていると、アナベルは更に心を食い破ってきた。



「はんっ。従順に飼いならした挙句、今度はあの子を生贄にするつもりかい?」

「――――――――」



 生贄。



〝ごめんなさい、フランツ〟



 瞬間。



「――っ!」



 だんっと、キッチンを叩きつけた。がちゃんと、湯呑ゆのみ急須きゅうすが驚いて跳ね飛ぶ。

 ぱしゃりと湯呑からお茶が溢れてフランツの手にかかったが、気にしてなどいられなかった。爆発的に膨れ上がる激動を、必死に抑え込んで息を吐き出す。

 あの時の惨劇を、アナベルは知らない。彼女を生贄にしたのも、事実だ。

 けれど。



〝……メリ、……ッサ?〟



 あの時の、彼女の成れの果てが脳裏に貼り付いて離れない。



 一瞬で、目の前が死体の山で築かれる。

 今でも鮮烈に覚えている。色褪せることなどありはしない。

 彼らの苦しそうな死に顔も、崩れ重なる死体も、赤黒くこびり付いた血飛沫も。



 その地獄絵図そのままの屍の山の中で、体に剣を生やして亡くなっていたメリッサも。



 全て、――全て。忘れることなど出来るはずもない。

 発見した時のメリッサの体は至る所が血塗れで、特に両手は血がこびり付き過ぎて肌の色が変色していた。

 変わり果てた彼女を掻き抱いて、力の限り抱き締めた。

 呼吸もしていなかったし、鼓動も動いてはいなかったけれど。

 それでも。

 また、目を開けてくれるのではないかと。



 また、「フランツ」と。あの優しい穏やかな声で呼んでくれるのではないかと。



 そんな馬鹿な願いさえ抱いた。今だって、時折いなくなったことが信じられなくなる時がある。

 だが、現実は残酷だ。

 朝起きるたびに隣に彼女がいないことを実感し、慣れていくにつれ恐怖さえ覚える。

 彼女はいない。仲間もいない。

 大切な者達は、あっという間にこの手から零れ落ちた。



 もう、二度と招くわけにはいかない悲劇だ。



 だからこそ、カイリがあんな風に無残に死ぬなど許せるはずもない。絶対に阻止すべき事態だ。

 それなのに、アナベルは「生贄」などと心無い言葉をぶつけてくる。刺々しい言葉に刺激され、荒々しくうねる怒りがフランツの体内を支配する。

 けれど。



〝今度はあの子を生贄にするつもりかい?〟



 一方で、冷静な自分が「その通りだ」と耳元でささやく。



 もし、このままカイリを息子として迎えたままだったならば。

 カイリがフランツと家族でいる限り、生贄になる可能性が出てくるのではないだろうか。



〝どうか、貴方だけでも生きて〟



 メリッサを、フランツが生贄にしてしまった様に。



〝フランツさんが、俺を助けてくれたのは本当です〟



 彼女と同じく、フランツをかばうカイリも。



「……、……カイリ……」



 名を舌に転がして、フランツは呆然としてしまう。

 少し前に、カイリに初めて家族になったと告げた時を思い出す。

 あの時、カイリは戸惑っていたけれど、それでもとても嬉しそうにはにかんでいた。家族になれて嬉しいと。

 フランツが、「パパと呼んでくれ」と言ったら、流石にまだ無理だと拒否されたけれど。

 それでも。



〝――もし呼べたら、とても素敵だなって思うので。心からそう呼べる日が、来て欲しいと思います〟



 照れくさそうに、喜びを噛み締めながら、遠慮がちに笑った彼の顔をフランツは一生忘れることは無いだろう。

 いつだって、自分の料理を美味しそうに食べてくれた。美味しい、と舌鼓を打っておかわりをする彼の姿を見るのが秘かな楽しみだった。

 彼の歌が好きだった。『故郷』も『ゆりかごの歌』も『雪』も『紅葉』も。全部覚えている。最近歌った『うさぎとかめ』だって良い歌だった。楽しそうで、聞いているこちらまで心が弾んだ。

 歌を歌う時の彼は、とても優しい顔をしている。歌が好きなのだと、染みる様に温かく伝わってきた。


 彼といる毎日が、とても楽しい。


 十一年前から、日々を淡々と過ごしていたフランツにとっては、カイリと共にいる毎日が新鮮だった。レイン達が入ってきた第十三位は楽しくもあったが、どこか色褪せていたのに。彼が傍にいるだけで、息を吹き返した様に世界がどんどん色鮮やかになっていった。

 それに。



〝俺は、俺の意思で第十三位に入った! 俺は、今までもこれからも、第十三位以外のどこにも入るつもりはない!〟



 彼はいつだって、フランツ達のことを全力で好きだと伝えてくる。



 フランツ達を悪く言う者達に向かって、真っ向から立ち向かう。盾になって、悪意を否定して、堂々と好きだと宣言してくれるのだ。

 最初から――教会に来た時から変わらない。

 カイリは頑固で真っ直ぐで、――とても優しい可愛い息子だ。

 しかし。


〝どうか、貴方だけでも生きて〟


 そんな、性格をしているから。

 彼女と、同じ様な優しさを持っているから。

 だから。



〝す、すみません……。あの時は夢中だったんです〟



 ――今夜みたいに、右手の怪我で済んでいるうちに。



〝……メリッサ……っ!〟



 あの血が、彼女の時の様な無残な血溜まりにならないうちに。



「……、アナベル」

「……何だい」



 怖気おじけづいた様に口をつぐんでいたアナベルが答える。その声はいつも通りつんけんしていたが、どこか案じる気配もあった。

 彼女も、甘い。流石はメリッサの妹だ。

 どれだけ口で悪し様に罵ろうと、彼女は紛れもなくメリッサの妹なのだ。

 孤児院の子供達を見れば分かる。子供達が母と慕って彼女に懐いているのを見れば、とても良い母親なのだということは痛いほど理解出来た。



「……俺は、メリッサを殺した」

「――っ」

「だから、……そうだな。いつか、カイリも」



 殺してしまうかもしれない。



 辿り着いた結論に、フランツは妙な納得をしてしまった。アナベルが目を見開いた気配には構わず、ふらりとキッチンからよろける様に出ていく。

 そうだ。

 カイリを死なせるわけにはいかない。

 ならば。



〝あの、……不束者ふつつかものではありますが、これからもよろしくお願いします〟



 そうなる前に――。



「……っ、あんったは……!」



 そんなフランツの態度に、アナベルが再度憎悪の火を点けた。だんっと、近くの壁を蹴り飛ばし、皮膚を突き破りそうなほどに強く拳を握り締めたのが視界に入る。

 あまりの憤怒の気配に、フランツは振り向かざるを得なかった。――振り向かなければ良かったとすぐに後悔する。

 彼女は、ひどく怒っていた。噛み締めた唇からは、赤いものが滲み出ている。

 ぎらつくほどに鋭い眼光の奥は、揺れていた。今にも刺し殺さんという勢いを見せる一方で、どうしようもない慟哭どうこくほとばしらせて、フランツを荒れ狂う感情だけで叩き続けてくる。


「……そうやって、あの日から! いっつもいっつもいっつも! あんたは逃げてばっかりだ!」

「……、俺は」

「この十一年、ずっとそう! 会いに来るどころか、散々手紙を送ったってのに、返事の一通すら寄こさない! まるであたしから逃げるみたいに!」

「……、それは。お前が俺のことを」

「憎んでいるから? 思い出すと苦しいから? そんなのあんたの言い訳だよ! あたしを言い訳に逃げてんじゃないよ! この弱虫野郎!」


 だんっと、更にキッチンの入り口を叩き付け、アナベルがフランツを残して廊下を歩いていく。ずんずんと大股で去って行くその背中は、しかし途中でぴたりと止まった。

 どうしたのかと疑問に思ったのも一瞬、フランツの顔も強張こわばる。


「……、あんたっ。立ち聞きかいっ」

「あ、……す、みません」


 廊下の向こう側に、カイリの艶のある黒髪が見えた。アナベルの愕然とした横顔に、カイリがひたすら頭を下げている。


「ごめんなさい。立ち聞きするつもりじゃ」

「……はっ。立ち聞きする奴はみんなそう言うんだよっ。……この卑怯者がっ!」

「……っ」


 頭から怒鳴りつけられて、カイリは苦しそうに俯く。反論しないのは、カイリ自身に罪悪感があるからだろう。


「……アナベル。カイリに当たるな」

「ああ? あんたの家族なんだろ! 連帯責任だよ!」

「……アナベルっ」

「あんたをかばうこいつも、あたしにとっちゃ敵だね! 憎くて憎くてたまらないよ! ――どきなっ!」


 乱暴に激怒し、アナベルはカイリを通り越して去っていった。どすんどすんと地鳴りの様な彼女の足音が遠ざかっていく。

 だが、フランツは彼女の足音が聞こえなくなっても一歩も動けなかった。

 それはカイリも同じ様で、廊下の曲がり角に突っ立ったままだ。

 それでも動いたのは、カイリが先だった。おずおずといった風に静かに歩み寄ってきて、恐る恐る見上げてくる。


「……、あの。フランツさん」

「……カイリ。疲れただろう。手の傷に気を付けながら風呂へ入れ」

「……、フランツさん」

「俺も後で入る。……明日からまた大変だぞ。ゆっくり休むと良い」


 カイリに有無を言わせず、フランツは彼の頭を撫でる。わしゃわしゃと大人しく撫でられていた彼は、それ以上何も言わずに「はい」と頷いた。

 その顔が不安と心配に彩られていて、フランツは心が少し満たされる。同時に、どうしようもなく沈んでいった。



 ――俺は、確かに弱虫だな。



 カイリを殺すかもしれない。

 故に、酷い決断をしなければならない時が近づいている。



 それなのに、自分に向けられた彼の心に喜びを覚えている。



 そのことに絶望するしかなかった。


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