第58話


 制服に腕を通し、鏡の前に立つ。

 乱れた所は何処にも見当たらない。服の乱れは心の乱れだ。


「……よしっ」


 ぱん、と両頬を叩いて気合を入れる。

 レインは本日の食事当番でもういなかった。久々にぐっすり眠れたせいか、寝坊をしてしまった様だ。

 ちゃんと夕食は手伝わなければと、予定にメモをした。彼には気合を入れてもらった恩もあるし、少しでも何か返したい。



「あ」

「……げ」



 決心して扉を開くと、ちょうど目の前の部屋からシュリアが顔を出した。少し嫌そうに顔をしかめるのはいつも通りである。


「おはよう、シュリア。げ、は無いだろ」

「……おはようございます。もう反射ですわ」

「リオーネも、おはよう」

「……、おはようございます」


 後ろから続いて出てきたリオーネにも声をかける。

 彼女は淡々と挨拶を返し、すぐさま歩き出してしまった。一瞬躊躇ためらうが、続けて声をかけることにする。


「あのさ、リオーネ。話したいことがあるんだけど、良いかな」

「今日はちょっと忙しいんです。またの機会にお願いします」


 にべもない。

 だが、めげない。レインがせっかく応援してくれたのだ。ここでくじけるわけにはいかない。


「本当に少しで良いんだ! あの、聖歌の訓練の後とか、数分でも」

「話はそれだけですか? 今日のご飯が楽しみですね」


 にっこり笑って、すぐに外向そっぽを向かれる。

 こちらと話したくないと全身で物語っていて、カイリもそれ以上話しかけることが出来なかった。

 そうしていると、後ろから足音が聞こえてくる。このたくましい足音はフランツで、軽いのはエディだ。


「おはようございます、フランツさん」

「おお、おはようカイリ。今日も制服が決まっているな」

「あ、ありがとうございます。……あの。おはよう、エディ」

「おはようございます」


 手を挙げて挨拶してみたが、エディはこちらを見もせずに通り過ぎていく。


「あ、あの、エディ! 話したいことがあるんだけど」

「ボク、今日はトイレと風呂と訓練室と図書室の掃除があるんで忙しいんです。あんたと話している暇はありません」

「っ、じゃ、じゃあ、俺も一緒に掃除するから」

「邪魔です。来なくて良いっす」

「でも」

「――邪魔だって言ってるでしょうが!」


 思い切り怒鳴られて、カイリの体が跳ねる。フランツ達も微かに驚いた様に気配が揺れた。

 エディは少しだけ罰が悪そうにうつむいたが、すぐにカイリを睨みつけてきた。激しい怒りがその目に映って、喉を潰された様に動かせなくなる。



「お願いっすから、……。……もう、話しかけないでくれるっすか」

「……、え?」

「うざいです。――本当は、顔も見たくないのに」

「――――――――」



 最後は低すぎて聞き取りにくかったが、自分のことだからだろうか。一字一句違えずにはっきり聞こえた。



 うざい。顔も見たくない。



 ここまで直接的に拒絶されたのは初めてだ。態度で分かっていても、改めて言葉にされると、激しい痛みで胸を刺される。

 カイリが呆ける様に黙ったことに満足したのか、エディはもう振り返ってこなかった。


「……。……レイン兄さん、おはようございます! 今日の食事は何ですか?」


 そのまま食堂の扉を開けて中に入っていく声は、底抜けに明るい。成り行きをひっそり見守っていたリオーネもさっさと続いてしまい、カイリは途方に暮れた。

 顔も見たくないレベルまで、もう来ているのか。本格的に焦りを覚え、カイリは気持ちごと視線を下に落とす。


「……俺、やっぱり何かしたのか? 聞き方、悪いのか?」


 さっぱり分からない。

 しかも、食事の席はエディが真正面でリオーネが隣だ。針のむしろである。

 とはいえ、ここで足踏みしていても始まらない。現状を変えたいのなら、とにかく動くしかなかった。

 それに。



〝お願いっすから、……。……もう、話しかけないでくれるっすか〟



 あの台詞を吐く時。

 一瞬だが、苦しそうにしていた。視線も刹那的に逸らされたのを、カイリは確かに見たのだ。

 酷いことを言われたと思う。

 けれど、彼も同じ様に傷付いている気がして、どうしてもカイリは諦めることが出来なかった。

 レインにも背中を押されたのだ。ここで屈するわけにはいかない。


「……っ、よし」


 ぎゅっと、おびえる心を握り潰し、カイリは大きく息を吸って食堂の扉を睨みつけた。


「……っ! ……おはようございます、レインさん!」


 食堂の扉を開けて、カイリは一歩を踏み出す。

 その背後で、フランツとシュリアが考え込む様に視線を交わし合ったのを、カイリが知ることはなかった。











「……もう、食事、最悪だったな……」


 武術の訓練を終え、聖歌の訓練も終え、カイリはいつも通り取り残された音楽室でうずくまっていた。

 気合を入れて朝食に挑んだ結果は散々だった。一生懸命話題を振ってみたのだが、もう目も当てられなくて思い出したくもない。

 エディに振っても無視されるし、リオーネに話しかけても一言でぶった切られる。見かねたフランツやレインが引き継いでくれることもあって、情けないやら泣きたいやらで心が折れそうだ。


 ――しつこいだろうか。


 嫌われるかもしれないと思いはしたが、距離を置いたら余計にこじれる気がした。レインも「距離を置け」ではなく、「話しかけてやってくれ」だった。つまり、突破口は話しかけることなのだろう。


 だが、話しかけても一向に改善の兆しが見えない。むしろ悪化の一途を辿っている気がする。


 朝食が終わってエディに話しかけても、睨まれただけで無視された。

 リオーネに至っては、聖歌の訓練が終わってすぐに出て行ってしまった。今日はとうとう「終わりです」という合図さえ無く、カイリが懸命に追いかけて話しかけても、振り返らずに無言で終わった。

 昨日、リオーネの肩をつかんで異様に怯えられてしまい、追いかけるのを躊躇ためらった時点でもう負けだ。


「……もう、どうしようかな……」


 夕食の時にもまた話しかけてみようと考えてはいるが、結果は同じ様な気がする。正直手詰まりだ。

 それに、どんなに気合を入れて挑んでも。



 やっぱり、話しかけても無視されるのは、辛い。



「……っ」



 いつもはこの後、聖歌の訓練を一人でやっているが、気力が無い。この状態で歌っても、まともに歌えないのは目に見えていた。

 のろのろと立ち上がって、動くことも出来ずにうつむいていると。



「あら。随分ずいぶんとしょぼくれた顔をしていますのね。良い気味ですわ」

「……、え」



 思いがけず嫌味が飛んできて、カイリは弾かれた様に顔を上げた。

 入口に佇んでいたのは、シュリアだった。腕を組んで扉に寄りかかり、不機嫌そうに眉間にしわを刻んでいる。


「シュリア? どうしたんだ」

「それはこちらの台詞ですわ。歌の練習をするわけでもないのに、ぼけっと突っ立っていないでくれますか。邪魔ですわ」

「――っ」



 邪魔。



 今朝、エディに言われた一言を思い出し、カイリの胸にやけに突き刺さった。

 言い返すことも出来ずにいると、何故かシュリアが慌てた様に付け足してくる。


「ちょっと。何か言ってくれませんか。調子が狂いますわ」

「何かって、……えっと。邪魔なんだろ? ごめん、すぐ出て行くから」


 シュリアは聖歌を歌えないが、歌は歌える。彼女も歌いたい時があるのだろう。

 だからこその判断だったのだが、シュリアが更に慌てた様に扉から体を離した。つかつかと歩み寄ってきて、腰に手を当てて見上げてくる。


「あなた。何でそんなに素直なんですの! いっつもわたくしに偉そうに突っかかってくるあなたは何処に行ったんですの!」

「いや、だって、……歌いたいんじゃないのか?」

「何で、わたくしが歌わなければならないんですの! ……ああ、もう! 何っで! わたくしが! こんなことを……!」


 きーっとシュリアが両手を振りまくってから、がしっと強く腕を握ってきた。

 え、と思う間もなく、今度は勢い良く引っ張られる。おかげで転びそうになったが、シュリアの剛腕で持ち直した。素晴らしい腕力だ。


「ちょ、ちょっと、シュリア!? 何なんだよ!」

「あー、もう! 面倒ですわ! こっちへ来て下さいませ!」

「は? おい、ちょっと!」


 ぐいぐい引っ張られて、瞬く間に部屋から連れ出される。そのまま図書室へ向かうと、ちょうどそこからエディが出てきたところだった。

 シュリアの形相を見て、エディがぎょっと目をく。

 だが、そんなことで止まるほどシュリアは生易しくない。ぐんっとカイリの腕が引っ張られた挙句、激しく突き飛ばされた。おかげで踏み止まれずにエディに突進してしまい、ぐえっと彼が潰れた声を上げる。


「ご、ごめん、エディ! ……シュリア! 何するんだよ!」

「うるさいですわ。――エディ! あなた、いい加減にしなさい。リオーネもですわ! そこにいるのでしょう!」


 叱り付ける様に呼ばれ、物陰からリオーネがそろそろと姿を現した。罰が悪そうな顔をしていて、視線が下に固定されている。

 急な展開に、カイリは目を白黒させた。どんな状況なのだと、三人を順繰りに見つめてしまう。


「空気が! 最悪ですわ! せっかくの食事も! 台無しですわ!」

「……、しゅ、シュリア姉さん」

「うっさいですわ! ちょっと黙っていなさいませ! この馬鹿パシリが!」

「は、はい!」


 頭から大声で踏み付けられ、床に尻餅をついたエディはこれ以上ないくらい縮こまった。向けられたわけではないリオーネも、叱られた様に縮こまる。

 そんな二人を見て、シュリアが姉と呼ばれる意味が、カイリにも少し分かった気がした。


「いつまでうじうじしているんですの! 彼が馬鹿みたいに馬鹿正直に馬鹿らしく馬鹿なことを聞いているのに、馬鹿みたいにうじうじと! 馬鹿なんですの!?」

「……シュリア。俺、馬鹿にされてるのか?」

「馬鹿にしていますわ。あなた、どこまで不器用なんですの? 普通にキレて良いのに、自分に非があるのか考えるとか馬鹿なんですの? あんな態度を取られては、理由があろうがこの二人が悪いですわ。わたくしならぶん殴ります」

「なっ……」


 初めてエディが、反抗的にシュリアを睨み上げる。

 だが、それを見下ろす彼女の瞳は恐ろしいほど冷たかった。エディの表情がひび割れた様に崩れていく。


「わたくしは、ねちねちしたことは嫌いです。それを第十三位に持ち込まないで下さいませ」

「……っ」

「言いたいことがあるなら、はっきり言いなさい。彼に謝らせたいのなら、ぶつかって謝らせなさい。何も言わずに無視だけして、あなた達、何様ですの? さいっていですわ」

「――」


 エディだけではなく、リオーネもショックを受けた様に固まった。

 ふん、と鼻息荒くシュリアは腕を組んで黙る。後は、当事者同士で話せと暗に告げているのはカイリにも伝わった。

 彼女の姿に、カイリは胸を打たれた様に苦しくなる。前触れもなく涙が込み上げてきて、根性で飲み込んだが苦労した。



 シュリアには、未だに嫌われているとカイリは思っていた。



 だから、こんな風に手助けをしてくれるなんて思いもよらなかった。あまりに嬉しすぎて、声が出てこない。


「……、……って、言ってるって」


 そんな風に別の意味で困っていると、エディがぼそっと何かを呟いた。

 何だろうと、カイリが耳を精一杯傾けると。



「……、あんたっ。外で、周りの騎士達に、ボクに殴られるだの蹴られるだの水に顔突っ込まれるだの! 酷いイジメ受けてるって言ってるそうじゃないっすか!」

「――――」



 イジメ。



 いきなり覚えのないことを吹っ掛けられ、カイリは驚きで頭が真っ白になった。

 目を丸くして何も言えずにいると、エディが「ほら見たことか」と顔を歪める。


「やっぱり言ってるんすね! 第十三位のこと、悪口言いまくってるって。外ではもっぱら噂になってるんすよ!」

「……、え?」


 噂。


 そんな噂を、カイリは知らない。外に出ても、そんな話を耳にしたこともない。

 驚き過ぎて反論出来ずにいると、エディは更に目つきを鋭くして畳み掛けてきた。


「あんた、みんなのこと、よくもまああれだけ酷く言い触らせたもんすね! ……第十三位は悪魔ばっかり! 恐い! 拷問だ! 殺される! もう嫌だ、お願い、許してって言ってるのに、殴るし蹴るしで虐待されるって!」

「……、は? いや、待って」

「訓練は負けたって言っても終わらないし、執拗しつように武器で叩き付けられて全身あざだらけで痛い! 掃除は宿舎の中全部押し付けられるし、終わるまでご飯は抜き! 果てには料理中にお湯をぶっかけられる! 嫌だ、このままだと殺される、助けてって! そんな風に言い触らしてるって! ……嘘ばっかり言いやがって!」

「……、お、ゆ。は? いや、俺」

「……それで。私は、いつカイリ様に色目を使って言い寄ったんでしょうか?」

「……、え?」


 にっこり笑いながら、今度はリオーネが尋ねてくる。

 だが、その笑みは暗い。見上げてくるマリンブルーの瞳は、底が見えぬほど黒かった。


「何度も言い寄られて、密着されて、脱がされて、関係を強要されて。嫌だって言ったら、セクハラで訴えるって脅されたって。言いなりにならないと、全員に言い触らして強姦罪で牢屋にぶち込むって。そう、私に脅迫されたって言っているそうですね?」

「え? いや、……俺、言ってな」

「レイン兄さんに対してもそう! 同室なのをいいことに、兄さんが脅して、無理矢理毎晩襲ってくるって! もう耐えられない、死にたい。あんたに散々助けを求められたんだって、周りがみんな言っている! 第十三位は、やっぱり最低だって!」

「お、おそ……なっ」

「そんなことを大声で触れ回るなんて! あんた、楽しそうにここで過ごしてるふりして、ボク達のこと陥れようとしてたんっすね!」

「いや、違う、……何それ」

「しらばっくれないで欲しいっす! フランツ団長が暴力を振るうから第十三位に入らざるを得なかったとか、シュリア姉さんがねちねち嫌味を言って、心をずたぼろにされるとか、無いことばっかり言い触らして! 最低なのは、新人! あんたです!」


 憎しみを燃やした視線で貫かれる。

 カイリは駄々をこねる様に頭を振ることしか出来なかった。違う、違うとしか言えないまま、ふらりと一歩後退る。


 いじめ。脅迫。襲われた。色目。暴力。痣。


 そんなこと、一度も思ったこともないし、されたこともない。言ってもいないし、カイリには第十三位以外にはケントとしか話す人がいなかった。一体、誰に相談するというのか。

 それなのに。



「……外に出るたびに、皆さん追いかけてくるんです。逃げても逃げてもしつこくて、……最近は、玄関のすぐ近くで待ち伏せされて、囲まれるんです」

「……、え?」



 予想外のリオーネの告白に、カイリの思考が真っ白になる。

 身に覚えのない言葉ばかりか、そんな状況に陥っていることに、どうしようもない焦りを覚えた。意味が分からない。

 だが、現実は無情に進んでいく。彼女の泣きそうな、怒っている様な、様々な感情が混ざり合った潤んだ眼差しで刺され、カイリの心は痛いほど悲鳴を上げた。


「カイリ様をいじめているんだろって。使い物にならないクズのくせに、何様だって。入ってきたばかりの無垢な新人をいじめるなんて、流石は第十三位だ。所詮底辺は底辺のゴミ共だって。生まれが穢いから、根性も穢いって。囲まれたまま、ずっと、……ずっと! なじられ続けるんですっ!」

「……、そ」

「リオーネさんを助けようとしたら、ボクはボクで囲まれて動けないんすよ! しかも、……あいつら、遠慮なく殴ってくるしっ」

「……っ、え?」

「――っ! こんな風に! あんたのせいで!」


 ばっと、エディが乱暴に自らのシャツを開く。

 そこからのぞいた腹には、複数の殴られた跡が痛々しく残されていた。赤黒い痕跡こんせきまであり、ひっと、カイリの喉が小さく鳴る。



 ――何が、どうなって。



 完全に混乱するカイリをよそに、エディはどんどん眼差しを鋭くしていった。憎々しいと、暴れる様に叩き付けられ、カイリの喉が潰される様に痛む。


穀潰ごくつぶしが、下賤が、弱者甚振いたぶって満足する最低野郎だって! あれだけ新人泣かせて、傷付けて、痛めつけて、……散々使い潰して! 最後は壊してボロ雑巾の様に捨てる気かって!」

「……っ、ぞ、う」

「……、あんた、……どれだけ第十三位をおとしめれば、……ボク達傷付ければ気がすむんすか……っ!!」


 エディの血を吐く様な絶叫に、カイリはかちかちと奥歯を鳴らす。彼の言葉越しに聞こえてくる罵倒が、慟哭どうこくが、カイリにも突き刺さって抜けなかった。



「……満足ですか?」

「……、……え?」



 リオーネの凍える様なほの暗い声に、カイリはかすれながらも返事をする。

 だが、彼女に睨まれた瞬間、喉が引きつる様に震えた。


「私のことも、エディさんのことも。傷付けて、痛めつけて、……満足ですか?」

「……っ、ちがうっ。俺」

「新人、あんたのせいで第十三位の評判は最悪だ。ボクも、リオーネさんも、あんたの思い通り、ずたぼろっすよ」

「……っ」

「ボク達と仲良くしながら心の中で嘲笑って、リオーネさんまで恐い思いをさせてっ。みんなのことまで傷付けてっ! ……あんた、本当に最低だ!」

「貴方も、……今までの人達と一緒。私達のこと、結局笑って騙していたんですね」


 エディの背後から、リオーネも憤怒をぶつけてくる。

 彼らの目にあるのは、裏切りに対する激怒と悲憤と――失望だ。

 違う、と首を振りたかったのに、胸倉を掴まれ、身動きも出来なかった。


「フランツ団長が連れて来た人だから、団長の親友の息子だから! ……じゃあ、今度こそはって。……もう一度だけ、……もう一度だけっ、信じようって、……そう思ったのにっ」

「結局……貴方も、私達のこと、……っ」

「……っ、……もう、嫌っす」


 ぼそりと、間近で呟かれる声が恐ろしいほど真っ暗だった。真っ暗で、――ひどく苦しい。

 深淵が見えないその声に、カイリの喉が怯えた様に動かなくなる。



「あんたは、結局今までの奴らと一緒っす! 笑顔で入ってきて、裏でほくそ笑んで、他の人達に無いことばっかり吹き込んで! ボク達が傷付くのを見て嘲笑ってた奴らと一緒だ!」

「……ち、……ちが」

「所詮、ボク達は第十三位だから! 何言われようと構わないって、……更に孤立すれば良いって思ってたんでしょう!」

「ちが、……思って、な」

「……そんな奴、いらない。第十三位になんか、いらない」

「エ……」

「信じたボクが馬鹿だったっす! すぐに目の前からいなくなって下さいよ! 顔も見たくない! 消えろ!」



 掴んでいた胸倉を乱暴に振り払われた。泣き叫ぶ様な怒りを、カイリは間近でぶつけられる。胸を殴られた様に一瞬呼吸が出来なくなった。

 息が苦しい。声が出ない。

 そんなことはしていない。言っていない。そう主張したいのに。

 あの時と、同じ。



〝ねえねえ、聞いて。あいつ、この前ユウタくんのこと、べんきょうもできないくせにいばりちらす嫌なやつって言ってたよ〟



 ――初めて孤立したあの時と、同じだ。



 エディとリオーネの、暗くて深い憎悪に囲まれ。

 カイリは世界が真っ暗に暗転していくのを、どこか遠くで認識した。


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