第2話 私と未来

春。私たちは、高校生になった。

新しい制服に身を包み、少し緊張気味に忘れ物がないか確認していた。

「ピーンポーン。」

はるくんがきた。急いで玄関をとびだし、笑った。

「忘れ物はないか?」

毎日のように私の心配をしてくれる。

いつも優しくて、きっと自分では気付いてないんだろうけど

すごくかっこいい。

私は、はるくんが大好きだ。

手を引かれ、高校まで歩いた。

ふと、高校とはどんなところだろうと疑問が浮かんだ。

はるくんは楽しいところだ。俺も一緒だといった。はるくんと一緒。すごく嬉しかった。


新しい生活の一歩を踏み出したのだ。

ずっとこんなはるくんとの日々が待っているのだろう。



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5月18日。

今日は何だか全てが重い。

食欲もない。なんだろう。かぜでもひいたのかな?

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5月18日の朝こんな日記を書いて家を出た。

3時間目が終わった。

何だか風邪をひいてしまったみたいだ。

今日は早退しよう。

5分休憩の間に保健室へ行くことにした。

保健室までの道がすごく長い。

視界がぼやけ私は立ってられなくなりその場に倒れた。誰か助けて。苦しくて苦しくて意識が遠のいていった。


「おい!かな...」

誰か呼んでる。体が動かない。助けて...

私にそれ以上の記憶はなかった。





目を覚ますと、真っ白な部屋。

左腕に少し痛みを感じチューブが繋がれている。

「コンコン」

あら。目が覚めたのねよかったわ。

様子を見にきた看護師さんが部屋へ入ってきた。少し先生からお話があるんだけど大丈夫かしら。一度頷き小さな部屋に連れていかれた。お母さんもその部屋にいた。



「では検査の結果が出ましたので、結果をお話します。」

先生が色々話した後、横でお母さんが泣いていた。お母さんは少し時間をくださいと席を外した。

先生は私にいった。

助かる方法は一つあるが、その手術ができる確率はすごく低い。リスクもある。

残念ながらその手術ができなかったら奏ちゃんに残された時間は4ヶ月。

余命日は9月5日。

でも少しでも生きる道を一緒に歩いて行こう。

先生がなにをいっているか

まるでわからなかった。

頑張ろうと握手をさせられた

手は力が抜けていた。



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私に残された時間は4ヶ月?

私の当たり前の日々は、はるくんとの新しい生活は1ヶ月半で失われた。


嫌だった。はるくんのいない世界。

怖かった。はるくんがどんな顔をするのか。

はるくんは私が後少しで死ぬと知ったらなんて思うだろう。きっと優しいから泣いてくれる。私の心はきっとはるくんといたら楽しいし、嬉しいだろう。だけど。

死んだあと、はるくんを悲しませてしまう。


病気のことは、はるくんには言わないでおこう。





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君のいない世界で 月金リト @Kamimaishinobu

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