君のいない世界で
月金リト
第1話
あの暖かい光が、僕の心をしめつける。
彼女はもうすぐいなくなる。
9月5日が彼女の余命日だ。
春。僕らは高校1年になった。
新しい制服に身を包み、少し緊張した顔で彼女の家へ向かった。
僕がいうのもあれだが幼馴染の彼女は僕が大好きなのだ。
何をするのにも僕の後ろを歩き、あひるの子みたいに何処へでもついて来る。
小学生の頃から僕にべったりで僕なしでは何もできない。
そんな彼女がすこし可愛くもあったがさすがに高校生になった彼女をこれ以上甘やかす訳にもいかず悩みながらも無意識のうちに彼女を迎えに行っていた。
「星宮」と書かれた表札の前に立ちインターホンを一度押す。
いつものように僕を見つけると嬉しそうに飛び出してきた。
「忘れ物はないか?」
周りから見たらもうお母さんと同じだろう。
そんな自覚があった。
「うん!ぜんぶもった!」
高校生とは思えない幼さについつい世話を焼いてしまう僕。
彼女の手をひき、新しく入学した高校へ
足を運んだ。
歩いている途中こんな話をしてきた。
「ねぇはるくん今から行く高校はどんなとこ?楽しいの?はるくんと一緒なの?」
正直、僕に聞かれたってそんなことわからない。その時は適当に言葉を返す。
「あぁ。多分楽しいとこだよ。かなにも沢山新しい友達ができるはずだよ?
そして、僕と一緒。」
そういうと、少しスピードをあげて歩き始めた彼女。
きっと楽しみになったのだろう。
学校につきクラス表を確認した。
俺も奏でも同じA組だった。
これからもずっと変わらない毎日を過ごすのだろう。そう思っていた。
ㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡㅡ
最初に起こったのは5月半ばのことだった。
3時間目の授業の後。5分休みに入り、奏がいないことに気がついた。
気付くのに時間はかからなかった。
いつもは、授業が終わるとすぐに僕のところへ来るからだ。
最初はトイレにでも行ったのだろうとあまり気にしていなかったのだが、
休み時間が終わっても奏は戻って来なかった。
4時間目の授業が始まり、20分ほどした頃だろうか。
僕は、ついに我慢しきれなかった。
「先生。具合が悪いので、保健室に行ってきます。」
少しフライング気味に教室を飛び出した。
必死に走り学校中を探した。そして、見つけた。
廊下で倒れている奏を。
「おい!かな、大丈夫か!」
僕の問いかけに反応はなかった。
先生を呼び救急車で運ばれる奏を僕は見守ることしかできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます