よくあるテンプレ糞小説でもハリウッドリメイク!

ちびまるフォイ

例外もあるででんでんででん

「……もしもし?」


知らない番号から電話がかかってきた。


『ハロー。私は海外のさまざまな映画をプロデュースしている

 ヤスシ=スピルバーグ=アキモトだよ。

 おりいって、キミに話があるんDA』


「そんな海外の偉い人が俺みたいな庶民になんの用が?」


『用があるんだよ。洋画の用が!

 キミの投稿している異世界小説をぜひハリウッドでリメイクさせてほしい!』


「え、いいんですか!?」


『聞けばジャパンは今空前の異世界ブームらしいじゃないか。

 このタイミングでハリウッド・リメイクした異世界作品が

 全米を泣かせないわけがない! キミもそう思うだろう!?』


「ハリウッドに目をつけてもらえるなんて光栄です! ぜひ!」


『と、いいながら、もうできているんだけどね』

「はっや!」


『HAHAHA。アメリカ人は時間を無駄にしないものだよ。

 タイムイズマネーというわけさ』


トントン拍子に進んだハリウッドリメイクの話は、

新しいニュースに飢えているお茶の間へとまたたくまに拡散された。


気がつけば上映開始日。


「だ、大丈夫かなぁ。俺の書いたものなんて

 ベタベタのコテコテのクソ王道異世界テンプレですよ?」


「You、逆だよ。むしろ、シンプルでテンプレなのがいいんだよ。

 目のこえたネット読者にはテンプレから離れたものがウケるが、

 一般客相手にはコテコテのほうがずっといいんだYO」


上映のブザーが鳴ると映画が始まった。


※ ※ ※


どこにでもいるごく普通の高校生は、ふと渡った横断歩道で馬にはねられた。


――なんで馬なんですか?


――You、ハリウッドじゃ西部劇がウケるんだよ



かくして真っ白な部屋へと転送された主人公は、

異様にピチピチのスーツを着るグラマラスな女性がいた。


「私は女神。あなたにはいいニュースと悪いニュースがあります」


「いいニュースはなんですか」

「あなたにはチートが与えられます」


「悪いニュースは?」


「これからあなたは異世界で未知とのエイリアンと戦って、

 世界の平和を取り戻すまで安息の時間は与えられないのです」


よくわからないハイテク機械で異世界へと転送された主人公。

ここからは、親の顔よりも見た展開になる。


街角にいる悪いやつを助け、その際に女の子が自分に惚れて、

で、話を聞いていくうちにハーレムと冒険の世界に……。


「きたぞーー! エイリアンだーー!!」


全然違った。


開幕早々にエイリアンが街に侵略してきて、

なぜか異世界にあるホワイトハウスをぶっ壊したりとやりたい放題。


「おいおいなんだいこりゃあ。

 まったく、連休明けの月曜日以上にヘビーだぜ」


主人公は高校生らしからぬ、よくわからないジョークを混ぜつつ戦闘機に乗り込んだ。


―― チートは!? 魔法は!?


―― You、ハリウッドじゃそんな摩訶不思議パワーはウケないよ。

   戦うと言ったらやっぱりこれじゃなきゃね


派手なCGをふんだんに盛り込んだエイリアンとのドッグファイト。

もはやチートとは何だったのかと思ったが、パンフレットには

主人公のチート、それは諦めない心!などと書かれていた。死ね。


バゴーーン!


「うわぁぁぁ!!」


思いが届いたのか作者の戦闘機はエイリアンに撃墜されてしまった。

これはチートに含まれるのか定かではないが主人公は無傷。


次のシーンでは重々しい作戦会議室でブリーフィングが行われた。


「隊長、あのエイリアンたち、まるで俺たちの動きを読んでいるようだ」


「どうやら内通者がいるらしいな」


「内通者!? そんな馬鹿な!

 俺たちは軍学校をともにした仲間なんですよ!」


「でなければ、我々の作戦にああも先手を打たれるわけがないだろう」


そして、主人公は持ち前のチートで、隊長の肌着Tシャツに

「内通者」とプリントされているのを千里眼で見破った。賢い。


「隊長……!? まさかあなたが!?」

「ちぃ!!」


隊長は作戦会議室に止めていた車に乗り込むと激しいカーアクション。

追う主人公も車に乗り込み、もはや必要なのかよくわからない派手なカーチェイス。


いくつもの車が爆破されながらも、隊長を捕らえることに成功した。


「隊長! どうして……どうしてエイリアン側についたんですか!」


「私には……世界の命運よりも守りたい家族が……娘がいるんだ……」


隊長は首から下げていたペンダントを開けると、

中にはプリントアウトされた二次元美少女の姿があった。


そのとき、エイリアンの宇宙船から黒幕という名の司令官が出てきた。


「フフフ。人間のスパイよ、貴様はよく働いてくれた。

 おかげでラクラクとこの異世界を征服することができた。だがもう用済みだ」


「ぐあああーーー!」

「た、隊長ーー!!」


黒幕から発せられたビームで隊長は椎間板ヘルニアを発症させられた。

もう戦うことはおろか立つこともできない。


「お前、絶対に許さん! 俺のチートでお前を倒してやる!」


「ほう倒す? 面白い、どうするつもりだ」


「マホ・ウジュ・モンカン・ガーエ・ルノチョウ・メンドク・セーナ……」


主人公は自分が魔法を使えることをいまさっき思い出したかのように

持ち前のチートを生かして、原作らしい魔法を唱え始めた。


「貴様! いったい何者だ!?」


「くらえ、グレネードランチャー!」


エイリアンの黒幕は爆発して吹き飛んだ。

連動して宇宙船は派手な爆発CGとともに空中分解していった。


「ありがとう、あなたが私のヒーローよ!」


どこから湧いたのかヒロインにキスをされてハッピーエンド。

異世界の平和はかくしてあっという間に守られた。



 ・

 ・

 ・


が、スタッフロールが終わってからまた別のシーンが映し出される。


「あ、諦めんぞ……我はけして諦めん……!」


死んだと思っていたはずの黒幕が息があるっぽい感じで終了した。

上映が終わると、あまりの改悪ぶりに作者は脱力した。


「え、ええ……? こういうのなの……?」


思い描いていたのはCGや最新技術をふんだんに使って、

原作の派手な魔法やらを表現した新時代のものだった。


しかし、公開された映画館では大人気だった。


スタンディングオベーションがいつまでも鳴り止まない。

あまりの人気に作者がスクリーンの前へ引きずり出された。


「ぶらぼー!」

「全米が感動した!」

「観客動員数No1!」


興奮冷めやらぬ観客達はその熱で問いかけた。


「最後のあのシーン、次回作はあるんですよね!?」

「次回作はいつになるんですか!?」

「お願いです! はやく教えてください!!」


「2作目は……作りません」


作者の答えに監督も驚いた。


「Whyジャパニーズ!? なにを言ってるんだ!

 こんなに大盛況で、ファンも信者もたくさんできたというのに!

 なのにどうして2作目を作らないんだ! もったいない!!」


作者は真っ直ぐな目で監督に答えた。




「だって、2作目はたいていコケるじゃないですかぁ!!」

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