3話、夕暮れの中に

「自分の影ってさ、怖くない?」


夕焼け小焼けの帰り道。すっかり長くなった二つの人影を見ながら、親友は、そういった。


「そう、かなぁ?影なんて光が生み出すただの輪郭みたいなもんじゃない。どこが怖いのさ?」


僕はなんともなしにそう答えた。


しかし、その答えがお気に召さなかったらしく、親友は首を振った。


「いや、そういうことじゃなくてさ」


「……自分の影がないっていうのは、怖くないか?」


「は?」


影なら二人分、ちゃんとここにあるじゃないかーーーーーそう答えようと影をまじまじと見て、僕は絶句した。


僕の親友の影は、首の上からが無かった。


なぁ、おれ、大丈夫だよな?


泣きそうな声で親友が尋ねる。



その場を沈黙が支配したまま、僕らの影はやがて薄暗い闇と混じって、溶けて消えてしまった。





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ショートショートショートホラー @notedesert

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