最終話 4×400

 記録会当日の朝、競技場では早朝に予定されている種目の参加者たちがアップをしている。

 記録会や大会の日の陸上競技場の周りは選手が準備運動をすることを許可されていて、常に誰かが体を動かしているのが普通だ。

 そんな風に彼らがアップをしている姿を何の気なしに見ながら自分も体を伸ばしていると、後ろから声をかけられる。


「木島、お前がリレーに出るって聞いたんだが本当か?」


 紺色のジャージを競技用ユニフォームの上に羽織った堂前がそこに立っていた。どうやら彼も準備運動として少し走ってきたらしい。


「遠野が言ったのか?」

「ああ、木島先輩は絶対に出るのでそのつもりでいてください、って断言されたぞ」


 堂前の野太い声を発する喉から、遠野の喋り方を真似た気持ちの悪い声が発せられる。声を似せる気は全くないくせに喋り方の特徴を真似るのは抜群にうまいのが、その気持ち悪さに拍車をかけており余計にたちが悪い。


「──出るよ。今回は」


 別に遠野に色々言われたから出るって訳ではない。そもそもあいつは勘違いしている。俺にとっては、リレーなんて別にどうでもいいんだ。出ようが出まいが。


「おおっ!出てくれるのか。そりゃ心強い」

「言っとくが、今回は出るだけだからな。それ以上のことは期待するなよ」

「ああ分かってるさ。だがこれは大きな前進だな。しかしずっと俺が説得しても靡かなかったのに女の子にはすぐ落とされるとは。お前は硬派を気取ってると思ってたんだが」

「おい。出てやんねーぞテメェ」


 堂前は分かってる分かってると言いたげな絶妙にムカつく表情を浮かべている。本当に殴りたい。


「もういいだろ。俺は今からアップをするんだ。お前だって自分の種目に合わせて体温めておかないといけないんじゃないのか?」

「そうかそうか。いや時間を取らせて悪いな。」


 堂前は少し楽しそうに笑いながらそう言って立ち去った。なにが面白いのか理解できないが、あいつはそういう奴だ。いつもよく分からない所で笑ったりしている。偶にいる変な所にツボにはまるようなタイプだろう。


「さて、と」


 柔軟を終え立ち上がる。

 朝の肌寒い風に頰を晒しながら周りを一瞥すると、人の移動が激しくなっていることに気がついた。

 スマホを確認し、今の時刻が8時40分過ぎなのを確認する。そろそろ個人の400m走の時間だ。俺は温めた体を冷やさないように部内ジャージを羽織り、スパイクのピンを弄りながら練習場を後にした。


 ◇ ◇ ◇


 まだ10月の中旬だというのに今日はかなり肌寒い。こういう天気だと四季から春と秋が消えるという話もあながち嘘じゃなかったんだろうなって思う。

 かじかむ両手をはぁと息を吐いて温めて、部の備品を指定された場所に運ぶ。

 マネージャーの仕事が大変なのはわかっていたけど、実際に自分がやってみて想像以上に仕事が多いことに驚いた。


 「選手のみんなはこんな寒い中で頑張っているんだから」


 まだ残っている備品を見ながらそうつぶやく。立場が変わっても陸上に対する気持ちは変わっていない。でも自分が走れないって事実はやっぱり少し寂しい。


 「おーい遠野、手伝おうか?」

 「堂前部長? マネージャーの仕事ですから大丈夫ですよ。それより……」

 「木島の事なら大丈夫だよ。さっき話してきた」


 堂前部長のその言葉を聞いて私は少し安心した。あの厄介なサボリ癖のある先輩は、もしかしたら私の言ったことなんて全く気にかけていないかもしれないと思っていたからだ。

 

 「部長、一つ聞いてもいいですか?」

 「木島の事か?」

 「はい。昔の木島先輩の走りを見たことがあります。その時から速かったけど、あんな感じじゃありませんでした。見てるだけでも、走ることが楽しくてたまらないって伝わってくるぐらいです。」

 「うーん。個人的なことだから俺からはなんとも言えないなぁ。それにな、」

  

 堂前部長は微笑みながら、言葉を続けた。


 「木島あいつが今日リレーに出る気になったのは、事情を知らないお前の言葉が効いたからだと思うんだ」

 「でも私、ただ怒りをぶつけてしまっただけです。なにも理解しようとせずに。今はちょっと後悔してます。もっとやり方があったんじゃないかなって」

 「いいんだよそれで。俺達が何をしても同情になっちまう。遠野の純粋な気持ちだったからあいつにも少しは響いたのさ」

 「そうなんでしょうか……」


 堂前部長は大丈夫だと言っているのに結局仕事を手伝ってくれた。

 部長は今のままでいいと言ってくれたけど、やっぱりまだ気持ちは整理しきれていない。

 でも昔見た彼の走りを、もう一度見たいという気持ちだけはしっかりと認識することが出来たことに、私は少し安心した。


 ◇ ◇ ◇


 記録会の終わり際、各校の選手たちが帰り支度を始める時刻、4×400《マイルリレー》は最後の種目として取り扱われている。

 俺は参加選手の集合場所へ向かった。

 

 「遅いぞ木島。俺たちが最後だ。来ないんじゃないかとヒヤヒヤしたぞ」


 集合場所には既に俺以外のリレーメンバー、つまり短距離の堂前と跳躍の沖田、それに長距離の高橋が並んでいた。


 「悪いな。久しぶり過ぎて感覚がズレてた」


 俺は審査員にゼッケンとスパイクを見せ、許可をもらう。記録会如きで弾かれる奴は見たことがないが、この若そうな審査員はしっかりと確認していた。真面目そうだ。


 「投擲の橋本が喜んでたぜ。やっと地獄のマイルから解放されたって」

 「俺も解放されてぇけどなぁ。走り高跳びの後に400なんて足の負担がでかすぎるんよ」

 「なんだそりゃ。当てつけか?」


 沖田と高橋が話しかけてきた。こいつらだってただでさえしんどい上に専門でもない400を走らされることは嫌に決まっている。それに対する文句というか口癖みたいなものだろう。400m走の競技というものはこういうもので走る前は大抵みんな走りたくないと愚痴るものだ。もはや一種のルーチンワークともいえる。


 「よし。それじゃ待機場所に行くぞ。俺たちは3組だから最後の組だな。レーンは5。いいレーン貰えたな」


 堂前の言葉で俺たちは移動を始める。マイルリレーは組ごとにまとめて待機させられる。待機中の選手たちの空間っていうのはとんでもなく空気が重くなるもので、常にどこかしらにしんどい、とかだるい、死ぬといった単語が飛び交っている。

 

 そんな雑音を背景に1組と2組の奴らの走りを見ていたら、もう順番が来たらしい。

 俺達は上着を脱いで準備を完了させ、決められた位置へ着く。


 「よっしゃ、頑張ろうぜ!」


 堂前が俺達全員に向けて言った。1走─堂前、2走─沖田、3走─高橋、そして4走が俺。つまりはアンカーだ。1走の堂前は気合が入っているのだろう。


「よし……よし!」

「うぅ~」


 沖田と高橋もどうせ走るのだからしょうがないという感じで気合を入れ始めた。


 堂前がレーンにスターティングブロックと呼ばれるスタート用の足掛けを設置し、準備を完了する。


 「オンユアマーク……セット……」


 審判のセットの声と同時にレーン内の選手たちの腰が上がる。たった数秒の硬直だが、一瞬にして張り詰めた空気はその数秒を何倍にも感じさせるものだ。

 そして、審判がスターターピストルの引き金を引き、大きな号砲が競技場全体に響き渡った。

 

 それと同時に一斉に飛び出す選手たち。一気にトラックには応援の声が飛び交うようになり、騒がしくなる。

 

 今の堂前の順位は待機場所からはよく分からないが、スタートを見た感じ悪くないはずだ。それにあいつは短距離専門。100m地点までは相当早く到達し、直線部分に入った時点で集団の先頭付近にいることが分かるぐらいリードしていた。

 しかし200m地点を超えたところから様子が変わった。明確な失速。ペースの落ち。考えるまでもなくスタミナ切れだ。あいつは何度400を走ってもペース配分をする癖がつかない。100mの感覚で走ってしまうのだ。


 マイルリレーの1走はスタートする位置が調整されている為、ぱっと見てもどのチームが何位かわかりづらいが、堂前の位置は恐らく全体の真ん中……5位か4位程度の位置だろう。最初の100時点では間違いなく1位だったことを考えれば相当な失速だ。

 そして見るからに苦しそうにしながら堂前はバトンを持つ手を前に出し、2走の沖田に渡す。


 「ハァ……ハァ……沖田ァ! ファイトぉ!」


 息も絶え絶えといった様子なのに堂前は大きな声量で檄を飛ばす。大したものだ。


 沖田の走りは、少し余裕が見える。元々走ることが専門ではない上に、跳躍の高跳びをやっているアイツはどうしても400mを走る時、どこか全力を出し切れないのだろう。跳躍特有の接地感覚からフォームも少し跳ねるような癖がついている。

 400mを全力で走り切るというのは実は難しく、専門でやってる奴でさえ上手く掴むのが難しい感覚だ。

 しかし、それでも沖田の走りは安定しているし、堂前のように失速するということもない。

 

 アイツが2走を走っているのにも理由がある。マイルリレーは最初の1走と2走の100m地点まではレーンが決められているのだ。1走はもちろん2走の選手も100mまではレーンをはみ出して走ることができない。

 それで問題になるのが、その制限解除時点でのポジション取りだ。当然どの選手も最も内側に入ろうとするのだが、ここで今までの勢いを殺さずに上手く内側に入るのは結構難しい。下手をするとほかの奴とぶつかって転倒する。沖田はこの内側に入る技術が上手い。だから2走を走っている。


 そして到達する2走の100m地点、沖田は期待どおりにするすると内側に入っていった。見てる分にはとても簡単に思えるが、フリーレーンになった後の沖田の順位が明らかに上がっている点を見れば、これを上手く行うのはとても難しいことが分かる。因みにアイツが位置取りをミスったところは見たことがない。本当にいろんな面で安定してる奴だ。

 そのまま順位が入れ替わることなく、沖田のバトンは高橋へ渡される。今の順位は2位と僅差の3位。いくら4×400のリレーと言ってもこの僅差だとバトンタッチで順位が逆転することも十分あり得る。


 「高橋! 託した!!」

 「託された!」


 渡されたバトンは長距離の高橋へ。そして高橋の走っている場所は先頭から2番目、2位になっている。

 こっちのバトンが上手くいったのもあるが、それ以上に相手のバトンが下手だったな。距離を詰め過ぎだ。


 高橋の走りは何というか正に長距離という感じの走り方をする。

 バネがない、と言うのが適切だろうか。のらりくらりとした雰囲気で一定のペースで400mを走り切るつもりだろう。

 

 彼が300m地点を超えたところでの順位は変わらず2位。

 俺は審判員の指示に従い、素早くレーンに入り、バトンを受け取る準備をする。

 

 足元を確認し、走っている高橋に目を戻した瞬間、とても気持ちの悪い感覚がした。この状態。4走で、この場所で、バトンを必死に運んでくる仲間を見る。

 もう長いこと見ていなかったこの景色。車酔いのような感覚。

 

 ──────マズい、と思った。


 考えを振り払うようにバトンを受け取る準備を始める。横で1位のチームがバトンを渡した。すかさず内側に入り、バトンを受け取りやすいように左腕を後ろに挙げる。

 

 ──────大丈夫だ。適切なタイミングでスタートを切り、バトンを受け取りさえすれば後はいつも通り。やることは変わらない。


 「木島、パス!」


 高橋が腕を精一杯挙げてバトンを持ち上げる。俺は左後ろ気味に体を開いて、左の手のひらを広げる。


 バトンが、触れた。すかさず握り、受け取った左腕を前に勢いよく振り出す。


 ──妙な感覚が襲った。腕を振り切る刹那、強烈な違和感が生まれた。

 自分が想定していたモノより、圧倒的に──。


 すぐさま後ろを振り返る。まさか、と思った。そうでないでくれ、とも。


 ──────バトンは、レーンの中に無造作に転がっていた。


 そのバトンを見た瞬間、体が固まった。

 同時にフラッシュバックする光景。

 中学の時の総体、4×400《マイルリレー》の決勝。4走に1着で回ってきたバトン。間違いなく優勝したと思った。全国に行けると思った。それがチームの目標だった。

 そんな中、起きたバトンミス。自分が何故あんな簡単なバトンパスを落としたのかは今でも分からない。ただ一つ言えるのは、部内で一番速くて、全国に行けると言われて、チームを全国に連れて行くと豪語していた奴のせいで、俺達の最後の年は終わってしまったということだ。


 目の前の高橋が何か言っている。

 レーンの外で応援していた堂前が何か叫んでいる。

 視界は無駄に広いのに、それを認識するだけの処理能力がない。


 終わった。無理だ。バトンを拾ったところで、もう記録する価値もない程度のタイムしか出ない。やる意味がない。

 視界がまばゆいくらいに明るい。今日はこんなに晴れていたか? まぁどうでもいいか。もう。


 「諦めてんじゃねーよ!」


 突如聞こえた大声。思考が一気に引き戻される。声がした方を見ると、マネージャーである筈の遠野が何故かレーンのすぐ近く、堂前の横に立っていた。


 「ウジウジしてる暇があったらとっととバトン拾って走れアホ木島が!」

 「な、……」


 あまりに急なことに、体が遠野の言う通りに動く。脳を介さず、言われた通りに。


 「はやく!」


 急かされる。今度こそ自分の意志で体を操縦し、バトンを拾う。

 意味が分からない。どうなってる。なんだこれ。

 すぐさま振り返り、走り出す。


 「走れ! 全力で! 走り切れ!」


 走っているというのに。これ以上ないほど全力で走っているのに遠野の声が聞こえる。

 腕を振る。脚を出す。肺が軋む。無酸素運動が終わらない。

 苦しい。こんな苦しい400mは初めて400mを走った時以来だ。セオリーも何もない。ただ全力で走るだけの疾走。

 だんだん頭が馬鹿になっていく。他のチームの奴も、応援の声も頭に入ってこない。トラック、レーンと見えている範囲が狭くなっていく。

 最終的には、もう肌を割く風しか感じない。

 それでも、走り続ける。300を超えたところで腕の感覚が亡失なくなった。体が浮いている。地面から1㎝高いところを踏みしめて走っている感覚。

 亡失った腕を振る。千切れそうな脚を踏み出す。

  

 あれ、──────ゴールはどこだっけか。


 少しだけ視界が広がる。遠野が見えた。これでもかというぐらい手を振って何かを叫んでいる。


 あぁ、──────そこか。


 もう自分が呼吸をしているのかも分からない。何故こんなに頑張って苦しんでいるのかも分からない。

 ただこの感覚は懐かしいな、と思った。

 遠野の場所へ。あの位置を少しでも超えたらゴールだ。

 さぁ脚を前に出せ。木島雄太。あと数メートルだろう。あと1歩だろう。

 そして持てる限りの力を使って、既に丸太になった脚を踏み出す。

 

 ──────そして踏み出した脚は、確かに白線を超えた。


 やっと、ゴールした、な。


 気が抜けたせいか、すぐに足がもつれて体制を崩す。少しずつ視覚や聴覚が知覚範囲を広げていく。感覚としては圧迫され血が止まっていた部位に血が戻り始めるものに近い。

 

 「木島、大丈夫か!?」

 「木島先輩! 酸欠ですか!?」


 堂前と遠野の声。見ると沖田と高橋も俺を支えてくれている。


 「悪い……すぐに、動けそうも、ない。肩を貸してくれ」

 「あぁ」


 堂前が嬉しそうに俺の肩に手を回した。


 ◇ ◇ ◇


 既に動かせない体を競技場の端まで運んでもらい、座って息を整えていると何とか落ち着いてきた。既に堂前や沖田、高橋のリレーメンバーは既に解散し、クールダウンのために各々ダウン運動をしている。疲労を抜き、怪我を防止するために重要なことだ。


 「それにしても、なかなか恥ずかしい事をしでかした気がするな……」


 落ち着いて考えてみると、バトンをミスり、それで硬直して年下の女の子に怒鳴られ、挙句の果てには走った後にぶっ倒れる。

 うん、かなり恥ずかしいなコレ。


 「本当ですよ。めっちゃダサいです先輩」

 

 遠野が氷嚢を手に持ってやってきた。俺をここまで運んだあと、取りに行ってくれたらしい。俺がそれを受け取ると、彼女は隣に座って言った。


 「バトンを落とすのもダサいし、それで動けなくなるのもダサいです」

 「容赦ないなお前……」

 「でも、その後倒れるまで走ったのはカッコよかったですよ?」

 「──────」

 

 何だが妙に恥ずかしい。これなら全部罵倒されていた方がマシだったな、と思ったがそれもそれで男のプライドが許さない気がする。

 ただ、遠野には一つ伝えたいことがあった。


 「なぁ、遠野」

 「はい?」

 「──ありがとう」


 感謝の言葉。人並だが、心から出たものだ。


 「お前のあの声がなかったら、俺は走れなかったと思う。今までもやってきたのに、久しぶりに400を走った気がするよ」


 俺の言葉に、遠野は目を見開き、驚いたように、


 「木島先輩、お礼とか言えたんですね」

 「おい。茶化すなよ」

 「今までの自分を振り返って見てください。そう思われてもしょうがないですよ」

 「……お前の大声も女が出したものだとは思えなかったぞ」

 「ハァ!? 人が好意でした事に何てこと言うんですか!」


 全くこの後輩め…。ちょっと感謝したらこれだからな。


 「ハァ……もういいです。私はマネージャーの仕事で片付けがあるのでもう行きます。それと、これを」

 「これは……?」


 遠野が小さい紙きれをこっちに渡してきた。


 「ラップタイムですよ。4×400《マイルリレー》に出てなさすぎて忘れたんですか?1人1人の400mのタイムを計測したものです。まぁ私が外から見て手動で計測したものなので参考程度にしてくださいね。木島先輩のタイムはバトンを拾ったタイミングから測りました」


 遠野が立ち上がり、俺の前に立つ。俺は座っているから、あいつが見下ろす形になる。遠野は得意顔で笑みを浮かべながら俺を見下ろしている。

 

 「先輩。私に少しでも感謝しているのなら、すぐに片づけを手伝いに来てくださいね」

 「は?おい……」

 「先輩に拒否権はないですよ。足はちゃんとアイシングしてから来てくださいよ」


 そう言って、そのまま去っていった。

 俺は遠野から渡された紙を開き、そこに書かれているタイムを確認する。


 ──木島雄太 49:98──


 俺は400mを走った後の幸福を受け取る。息苦しさが引いてきて、頭が冴え、澄み切った思考に浸るこの瞬間。苦しみの反動に晴れやかな気分が訪れる、自分の世界に浸れる刹那。

 

 ラップタイムが書かれた紙を、無造作にジャージのポケットに突っ込みながら俺は立ち上がる。


 空を見上げると、雲一つない夕焼けの中でかりの群れが飛んでいた。

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