眼鏡
急に涙があふれてくる。
こんなにも寂しいけれど、慰めてくれる人はいない。
僕だけが辛いわけじゃないと自分に言い聞かせるように濡れた頰を叩いた。
街は賑やかな音楽が流れているし、幸せそうな顔で話し合っている家族やカップルもいる。まるで僕だけが、街の街灯のようにただぽつりと立っている。
でも僕は秘密の眼鏡を持っている。
傷ついた人だけが持っている秘密の眼鏡。
僕はその眼鏡をかけて再び街を見た。
幸せそうに見えた人々は、自分に足りない心のパズルピースを探してさまよっていた。
お互いが寄り添いあうことで、欠けたピースを誤魔化したり、買い物袋の重さで誤魔化す人もいる。
みんなが疲れている。
一人でベンチに座ってる人も、新しい命を抱えて歩く人も、手を繋いで歩く人も。
それでも笑っている、生きている。
欠けたピースはずっと見つからないのかもしれない。
それでも良い。
ピースを探してどこまでも歩く人々の姿は美しかった。
「このままで良いんだ。」
眼鏡を外して僕は微笑んだ。
短編集 緑 next-m @next-m
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。短編集 緑の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
自称日記/next-m
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 4話
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます