モンスターへ乾杯!

以星 大悟(旧・咖喱家)

モンスターへ乾杯!

「てめぇえ!何がハロウィンの主役だコラ!」

「ひえええ!なにこの人怖い!」

「ああ駄目ですよジャックさん、先輩はハロウィンア・レルギーなんですから」


「だからって鉄パイプとか、ここスーパーだよね?スーパーですよね!スーパーなんですよね!?ハロウィン商戦真っただ中のスーパーなんですよね?ここに凄く力の入った特設コーナーがあって、それでハロウィンをここまで盛り上げてくれてありがとう!言いに来たんですよ、なのにこのフランケンシュタインの怪物みたいに背の大きい元柔道部部員みたいな三十代男性は私を見るなり怒り狂ってるんですか!?」


「具体的な解説ありがとう、カボチャを被った道化みたいな恰好をしたジャック・オー・ランタンさん、私はここの店員で香里と言います!おかっぱ頭で市松人形みたいな可愛い顔立ちの花の大学生です!そしてここは先輩が一人で必死になってあの熊みたいにな大きな手でコツコツとチマチマと飾り付けた、どこにそんなハイセンスあったの?と言いたくなるくらい立派なハロウィンの特設コーナーです」


「貴女も具体的な解説ありがとうございます、で彼は何で私を見るなり鉄パイプを持ち出して…ていうかどこから持って来たの?を大きく振りかぶって襲って来たんですか?」


「それは簡単です、先輩はハロウィン・アレルギーなんです!」


「ハロウィン・アレルギー?アイルランドとは真逆のアメリカ式仮装パーティーで宗派によって無関係だから開催を禁止する事もある楽しいけど、微妙に宗教的問題を孕んだお祭りにですか?」


「まあ、ていうよりそれだったら楽しくないから修正して言い直し!」


「ハロウィン・アレルギー?古代ケルトに由来を持っているけど、たんなる楽しい仮装パーティーになったハロウィンにですか?」


「そうよね、普通は楽しいお祭り何だけど時期と先輩が担当している部門が悪いの、考えてみてハロウィン商戦は九月から始まってるの」


「ですね、年々早まってますよね?10年程前はやらない店もあったくらいですし」


「ねえ、11月には何がある?」


「11月…勤労感謝の日と七五三…それくらいですかね?」


「ノンノンノン、考えてみてハロウィン商戦が9月の時点から始まってるなら?」


「クリスマス商戦は11月には始まるのですね、いや10月の終わりには準備を始める!確かにその後は年末商戦が控えていますね」


「それと先輩は菓子担当なの、ハロウィン商戦が終わればクリスマス商戦と年末年始商戦を同時に行い年が明ければチョコだの飴だの売り込み、桃に端午にと菓子が関係するイベントが盛りだくさん!つまり先輩はデスマーチの真っ最中!」


「つまり…ハロウィンは、彼にとって……」


「災いを告げるまさらに厄祭なの…」


「それは何と言ったらいいか……」


「それとね、先輩が学生の頃はハロウィンは他所の国のお祭りで無関係だったの、それが働き始めた頃から普及し始め今ではハロウィンはクリスマスと同じように定着し始めた、先輩にはハロウィンに楽しい思い出は無いの…それにね、世の中のお菓子メーカーは残酷なの」


「残酷とは?」


「イースターまで広めようって言うのよ!」


「何だってー!?」


「大企業のように一つの部門を複数で担当するなら問題はないわ、だけどこんな中小のスーパーではアルバイトにも部門を担当させるの!しかも一人で!ハロウィンから続くデスマーチで単身で担当を持っている人達はボロボロなの!そこにイースターよ?」


「なんて、なんて残酷なんだ!これが、これが人のする事かよ!!」


「うるさいぞお前等!遊んでないで働け!そこのカボチャ男も冷やかしならさっさと帰れ!手伝うなら売り子をしろ!」


「「はーい」」


「頭が痛くなる…ていうか、今更だけどお前って本物?」


「今さらですね本物ですよ。こんなにメラメラと燃えるカボチャを普通の人が被れます?体格観てくださいよ、こちらの香里さんと同じくらいです」


「いや、体格は関係ないだろ…で、本物ならいい集客になるな」


「集客以前に子供逃げますよ、ほらよく見てください…漫画調じゃないリアルを追求した目の形、歯の一本一本まで緻密に掘られた元祖アイルランド伝統仕様…子供、泣きますよ?」


「うわ!?本当だ、まあいいんじゃないか?最近じゃあ本場のアイルランドもよく特集されるし、問題ないし逆にいい話題になる」


「そうっすか、見た目は頭が固そうに見えますが意外とノリがよろしいようで」


「まあ先輩はこう見えて祭り好きなんですよ、ハロウィンは嫌いだけど…夏に店先で祭をする時とかノリノリですから」


「それならハロウィンも受け入れてくれればいいのに」


「ツンデレと言うやつよ」


「成程、ツン!デレ!ですか」


「そうツン、デレ!よ」


「お前等、遊ぶなら埋めるぞ?」


「「頑張りまーす」」


「んじゃあジャックはここで売り子、試食のお菓子だが…食うなよ?」


「食べませんよ、元祖ロクデナシと違ってこっちとらアメリカ生まれのカボチャ頭、生粋のアメリカンで訴訟怖いです…真面目に働きます」


「お、おう、つまり鬼火じゃなくてモンスターの方なんだな」


「そうそう、お詳しいですね、メガテンとかやってました?」


「デビチルならやってたぞ、まあどちらかというとモンスターズの方が中心だったな、周りでデビチルやってたの俺だけだったから」


「そうでうか、ではこちらのカンペを呼んでください」


「ん?何でまた、まあ良いけど…ええと」


「では一緒に、ちなみに私の声は丹〇さん似です」


「いや、今更そんな情報はいらんぞ」


「では行きますよ、せーの…」


「「モンスターへ乾杯!」」


「どういう意味なんだ?」


「考えるな、感じましょう」


「そうか」


「そうです」


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