“見えない生きづらさ”を如実に書き表した意義深い作品

 周囲の人間から理解を得にくい負の特性を抱えた当事者にとって、コミュニケーションが重要視される今の社会で生きることは大きな障害となります。
 社会問題として“発達障害”が取り上げられる機会が増えてきているように感じられますが、当事者の抱える苦しみへの理解はまだ十分に浸透していないと思います。

 学校で。職場で。理解のない環境によって傷付けられ、自身をなくし、疲弊して病んでいる当事者がこの国には沢山いるはずです。周囲の更なる差別や偏見を恐れて障害を隠したり、自分でも生きづらさの正体に気付かず、苦しみ続けている人も多いのが現状です。
 私も一人の当事者として、自分の抱えている問題が誰からも理解されず、苦しい
日々を送っています。そんな苦しみを巧みな文章で代弁して下さっているこの作品には、深い感銘を覚えました。
 障害を抱える人々が少しでも生きやすい社会に向けて、当事者がどう感じているのか、どういう助けが必要なのかを表現することはとても意義深いことだと思います。この作品の登場人物が訴えかけてくる苦しみはとてもリアルで、是非多くの人に読んでもらいたいと思いました。