第2話 きっかけ

晴れの日と曇りの日と雨の日だったら、

俺は、曇りの日が好きだ。

世界が少しだけ灰色になって、朝も昼も夕方もあまり変化がなく、単調な感じが落ち着くから。


春と夏と秋と冬だったら、

俺は、秋が好きだ。

特に大きなイベントもなく、静かな時間が流れるから。


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朝の教室はうるさい。

人の出入り、繰り返される挨拶、しゃべり声。


「席につけー。ホームルーム始めるぞー。」


そんな担任の指示があってもしばらくはこのざわついた空気は残る。


「えー。入学式お疲れ様。私はこれから1年間このクラスを担任する真鍋徹だ。よろしく。いよいよ今日から高校生活がスタートするわけだが、君たちには大いに高校生活を満喫してもらいたい。しばらくはバタバタした日が続くとは思うが、やるべきことはしっかりやって、スタートからつまづかないように。えー、では早速だがまずはみんなに自己紹介をしてもらおう。」


そうして黒板に自己紹介で話す項目が書かれた。


【名前・趣味・入ろうと思う部活・自由】


俺のクラスは6組で、教室には横7列・縦6列に机が並べられている。今は黒板を正面に左はしの一番前を始点として出席番号順にそれぞれが席についている。

俺は出席番号が6番だった。つまり俺は今、教室の入り口と黒板から最も遠い位置に座っている。前に座っているのは髪の長いおとなしそうな女子で、右隣には小太りの男子が座っている。


さて、一人目の自己紹介が始まった。だいたいこういう時、自分の番が回ってくるまでは割と真剣に聞いて参考にするものだ。


「荒木曜子です。えーと、趣味はこれといってあまりないんですけど、強いて挙げるとすれば、幼稚園の頃から習っているピアノです。私は運動の方は全くダメなので、文化系の部活動で何か探したいなあと思ってます。うーん、あとは、そうですね、私の中学からこの高校に来てる人は少ないので、新しい友達をたくさんつくりたいので、ぜひみなさん仲良くしてください!」


なるほど、10人いたら7人くらいは同じようなものになるだろうなという感じの自己紹介だ。まあ、こんなところで変わったことをして目立とうとするのは、それこそ10人に3人くらいなものだろう。いや、そんなにもいないだろうな。この42人のクラスの中に1人か2人、そんなところだろう。


余計なことを考えていると、気づくともう前に座る女子の番にまでなっている。ここまでの人たちの情報などほとんど覚えていない。自分の趣味が一体なんなのか少し考えてみるけれど、何も出てこない。


ところで、前に座る女子は「新田玲」という名前で、趣味は読書だという。身長が高いというわけではないが、スラリとしていて白い肌が印象的だ。おそらくこのクラスでは一番の美人だろうと思う。


さて、結局俺の趣味は何にしようか。

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田中和基の高校生日記 @satoshuu

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