〜絵〜

久しぶり

今年の盆はこっち返ってきてんの?


久しぶり〜

仕事で帰れてないんだよね(。・ω・。)


あ、そうなんだ


どしたん?


うーん、たいしたことじゃないんやけど...


だけど?


会って話せたらなって思って...


それってなんかあるやつじゃん(ㆀ˘・з・˘)笑


いや、まあそうなんだけどね


美香って昔から隠すのヘタだよね笑


ねぇまじめに聞いてくれる?


え、ごめん

なに?きくよ?どした?


うん、もう有美子にしか言えないことなの


うん?ほんとにどした?男?


ううん、そんなんじゃない

わたし怖くて...


え、なに?なにあったん?


夏休みの思い出コンテストって覚えてる?


覚えてるよ、あんたが小4か5ぐらいのときに金賞もらったやつでしょ?絵上手かったもんね


うん、それ。5年生のときね、金もらったの

わたし上手くはないんだけど低学年からずっと応募してたんだ


で、なに?それがどうこわいん?


うん、この前押し入れの整理してたら三年生のときに応募した絵が出てきたの


それで?


その絵、夏休みのプール開放描いたんだけどそれ見るまで今のいままで忘れてたの


?よくわかんないんだけど


有美子、わたしあのとき見ちゃってたの


だからどういうこと?なにを見たの?


なにかわかんないんだけど、始めはプールの柵の外にいて目があったの



それから見間違いだと思ってもう一回そっち見たらいなくて


え?


気にせず遊んでたんだけど次はプールの端にいた

ずっとこっち見てて...


なに言ってんの?美香、あんたこわいよ...


この話するとみんなわたしが変だってそう言うから有美子に話したのに...ひどいよ


ごめん、でもよくわかんないよ


うん、だからわたしにもよくわかんないんだけどわたしをずっと見てる子がいて、その子顔が緑色で目が真っ赤だった。


ねぇ!ほんと何言ってんの?!


でもほんとにプールであったの!今まで忘れてたんだけど、絵にもその子がいたの!


冗談やめてよ、ほんとにこわいよ...


...有美子はわたしが冗談言ってると思ってんの、


そういうわけじゃないけど...

でも絵にそんな子描くなんて変じゃん!


わたしだって描いたつもりないよ

でも緑色の顔が水面に浮いてるの描いてあるんだよ...


...それでその後どうなったの?


うん、わたし怖くなってその子に背を向けてプールからあがろうとしたんだけど


けど?


気づいたら保健室のベッドの上だったの、溺れたんだって


...そういえばあったね、美香一回プールで溺れたんだっけ。わたしも忘れてた


うん、わたしは楽しかった記憶しかなくていつのまにか溺れてたんだけど、この絵見て思い出したの


ねぇ、ほんとにこわい

もうやめて、あんたが溺れたのは確かにあったけど絵はなんかの間違いでしょ!?


そんなに言うなら写真撮って送るから見て


やめて、こわいから!そんなんあたし見ないよ!


(画像)


...ねぇ、どれのこと言ってんの?


有美子もいないって言うの?右上に緑の顔あんじゃん



ここで私は彼女との会話をやめた。薄情な気もするけどトークも消した。画像をこれ以上見たくなかったからだ。

彼女が送ってきた画像はクレヨンと水彩絵の具で、プールで遊ぶ彼女を真ん中にしてたくさんの人がいた。そして彼女が言うように右上には緑色のクレヨンで描かれた顔が水面に浮いていた。いや、正確には肌色で塗られた彼女以外の人の全てが緑色で塗り潰されていた。髪も水着もない。人のかたちをしているだけで全身が緑のクレヨンで描かれている。そして塗り潰されたなかで目だけが赤色で描かれ美香を見ていた。とても異様な光景だった。私は美香の話も絵も何もかもが怖くて、もう関わるのをやめた。あれから美香がどうなったかは知らない。

それでも絵の中の彼女はとても楽しそうに笑っていた。これが私が去年の夏経験した話だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

平成奇怪譚録 遠智 赤子 @AkakoOchi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ