【★】終.僕の人生には、君以外いらない
「姉さん、入るよ?」
全身の汚れを熱いシャワーで洗い流し、さっぱりとした世槞はバスローブ姿で赤い髪の毛を拭いていた。そのとき部屋の扉がノックされ、弟の声が聞こえた。
「開いてるよー」
「巨大なネコが邪魔して入れないんだよね」
世槞は「ぶふっ」と吹き出して笑い、部屋の中からペットに呼びかけた。
「イーヴォちゃん、退いてあげて」
一言伝えたあと、大きな気配がのっそりと動く気配がして、扉が開かれた。「随分懐いているようだね」と言って顔を覗かせたのは当然弟だが、世槞の姿を見た途端に表情が凍りついていった。
「うわー! 紫遠! 着替えたんだー」
紫遠の服装は、黒を基調とした軍服に変えられていた。それまではずっと罪人が着用を命じられる囚人服をずっと着させられていたのだ。
「かっこいいデザインだね!! 似合ってる、似合ってる。ヒールのあるブーツは……なんかエロい」
「エロいって何。レイ様が貸してくれたんだよ。なんでも、現在のグランドティアの軍服になる前に候補であがっていたデザインのサンプルみたいなんだけど……」
「ほお!」
「そんなことはどうでもいいんだ。姉さん……まさか鍵を開けた状態でシャワーをしてたの……?」
「うん。メガンテレオンが番犬してるから鍵かけるより安全でしょ」
「そういう問題じゃあないんだけど」
紫遠は全くもって普段通りの姉の姿を見て頭を痛めた。
「君は本当に変わらないね……この世界でも」
「そう? 変わったと思うよ? 紫遠の大切さに気付いたもんね」
紫遠は顔半分を覆っていた片手を退けて、しっとりと肌を濡らした姉を見る。
「僕の大切さ?」
「そうそう。当たり前の幸せってやつ? それに気付いた」
「僕がいつも隣りにいて当たり前って?」
「うんうん。羅洛緋が言ってたとおもうけど……ずっと不安だったよ、私。だってあんな別れ方をしたから紫遠が生きてるのかどうかわからなかったんだもん。クロウにいるのかどうかすらわからなかった。でも会いたかったから、絶対生きてるって、会えるって信じて頑張ったんだぁ」
「へえ、姉さんが僕のために頑張ってくれたのは確かに、良い変化だねぇ」
「でしょ、でしょ! ほんとさー、クロウへ来てから……色々あったんだよなー……」
世槞は天井を見上げ、これまでのことを振り返った。
「色んな人に出会ったし、裏切られたりしたし、事件もあったし……ほんと、こんなに頑張っても紫遠が死んでたらどうしようって……考えないようにしてたけど、夜とか、たまに独りになると涙が出た」
堪えてはいたが、思い出すとたまらず溢れ落ちるものを紫遠は見逃さなかった。
「姉さ」
「やばいやばい! 風呂上がりは早く化粧水つけなきゃ肌が乾燥する!」
世槞は涙を誤魔化すように、戸棚に置いていた小瓶を手に掴んだ。
「……涙ごと肌に塗りたくるなよ」
「泣いてないもーん」
「それに姉さんは化粧水とか使ったことないだろ」
「確かにないけどー、これレイ様にもらったやつでさ、塗ってみたら砂漠の乾燥地帯でも肌が潤ってピリピリしなかったんだよね~」
「……レイ様に、もらった?」
「うん。面倒見がいいから、あの人」
「へぇ」
紫遠の声のトーンが明らかに落ちた。世槞は気にも止めていない。それどころか興味は別のところにある。――弟の軍服の腰につり下げられている白銀の剣を発見した。
「あ……ねぇ、その剣、持つことにしたんだ」
「
「そうだね。あのさ、それ、エディフェメス・アルマっていう名前らしいよ」
「ああ、聞いたよ。レイ様に。そしてシャオ=レザードリアっていう人にしか抜けないってことも聞いた」
「……ヒェルカナ党もスピーも紫遠のこと、そう呼ぶんだよな……。そのシャオって人のことは詳しく聞いた?」
「古代ルーナ王国の偉い人だって聞いたよ。五千年も前に故人になってるし、僕らの時代から換算したらもはや神話上の人物だよ」
「そうなのよね~。私もたまにセシルって呼ばれるしさぁ……もしかしたら私たちに似てるのかもね、その人たち。だからヒェルカナ党もエディフェメスも人違いしてるんだわ」
「そういうことにしておきたいね」
世槞は涙を拭い、一息をつく。目の前には確かに弟がいる。生きていて、再会ができた。次は元の世界へ戻るだけだが、そうもいかなくなった。クロウで大切なものを見つけすぎたのだ。
「ごめんね、紫遠。早く帰りたいでしょ? あともう少しだけ私に付き合って」
「いいよ、別に。どうせ帰り方なんかわからないんだし」
「間違いない!」
世槞はきゃらきゃらと笑い、紫遠に抱き着いた。紫遠は戸惑いつつ、姉の背中に両手をまわした。
「どうしたの? これも変化なの? 随分と甘えん坊になってるけど」
「これは学習よー。辛い時とかレイ様にギュッとされたらねぇ、すごく落ち着いたんだよ。感謝してる……。だから紫遠にも同じことしてあげるー」
「はぁ?!」
自分の失言に気付かないまま、世槞はレイの真似事を続ける。両の二の腕を潰れるくらい強く握られ、弟から引きはがされてからも気付けなかった。
「姉さん……」
「え? なに?」
「僕がいない間に男にやられたい放題かよ……」
「ん? 意味わからな」
「他人の男にさぁ、抱きしめられるってそれ……駄目に決まってるじゃない」
「? じゃあ弟にキスされるのは良いの?」
「!」
紫遠はハッとして両手を離した。世槞は二の腕が痛むのか繰り返し摩っている。且つ理不尽に怒られたと思っているため、勝ち誇ったような笑みを浮かべて追及をスタートさせた。
「ふっ……お前に会ったら聞こうと思ってたのよね、思い出したわ! どうしてあの時、私にキスしたの? 初めてだったんですけど!!」
勢いをつけた世槞に対し、紫遠は片腕で口元を隠しながら後ずさる。世槞は勝者であるかのように後ずさる弟に詰め寄った。
「別れのキスとか、死ぬ前の挨拶とか、そんなお涙頂戴モノの理由は結構よ! しっかりとわかりやすく説明しなさい! 顧客が納得するようなね!!」
「……どうしてわからないんだ……馬鹿なの」
「なんですって!」
紫遠は目を逸らし、ボソボソと話し始める。
「最期だと……思ってたんだ」
「えっ?」
「君に、もう会えないと思った。だから、死ぬ前くらい、僕のしたいことをしただけだよ」
「それが、私とのキス?」
紫遠は頷く。頬に滲み出るような紅色が浮かぶ。世槞は想像していた答えとは違ったものが返ってきて、理解ができず、キョトンとしたままだ。
「でも、死んでないよね、紫遠」
「うん。おかげさまで」
「なら、紫遠のしたいキス、今もできるね」
「……は?」
次は紫遠がポカンとする番だった。姉の思考回路が複雑且つ突飛で、解読が困難となったのだ。
世槞は言った。
「したいなら、しようよ。――ほら」
世槞は自分の唇を指差し、そんなにしたいなら早くしろと急かす。紫遠は首を振りながら尚も後ずさる。
「待って……姉さん、君は意味を理解して言ってないよね?」
「わかってるよ? 紫遠がしたいって言うから、しましょ、って」
「違う!」
「何が? 優しい私は弟の願いを叶えたくて」
世槞は無遠慮に弟の顔を覗き込んだ。紫遠は姉と目を合わせない。
「違うよ……君も僕とのキスを望んでくれなくちゃ、意味がないんだ……」
「じゃあ望む」
「おい!!」
もうやけくそだ。紫遠は世槞の腰に手を当ててくるりと回転し、壁と自身の間に閉じ込めた。隙間は僅かも無い。互いの吐息が直接届く距離だ。シャンプーの香りと、世槞自身の香りを同時に感じて理性が飛びそうになる。
「目、閉じてよ」
「そっか」
紫遠は今か今かと待ちわびる世槞の唇へ、そっと触れるだけのキスをした。初めてこの唇に触れたときはとても冷たかったし、緊迫した状況もあいまってとても震えていた。対称的に、落ち着いた状況下である今はそれは柔らかくて、温かい。ずっと欲しくて欲しくてたまらなかったものだ。
数秒経過したあとで、不満そうな声が漏れた。
「これだけ?」
「は……」
「もっと情熱的なパターンはないの?」
「ついにテクニックを要求するか」
世槞は頷いた。さも当然のように。紫遠は目眩を覚えたが、確かにこれで終わりたくないと心のどこかで感じている自分の存在に気付いていた。理性の箍が外れかかっていた。
「わかった。こっち来て」
紫遠は腹を括りベッドまで誘導する。そこに姉の身体をゆっくりと沈め、上に跨がり、両手の指を絡め合う。互いを見つめる。ベッドの軋む音が繰り返される。自然と呼吸が荒くなる。世槞も同じだ。――雰囲気は完成していた。
「姉さん……」
「うん、いつでもどーぞ」
あくまで口調は軽い。この状態でも姉はわかっていない。それがもどかしく、無茶苦茶にしてやりたい衝動が沸き起こった。
「――姉さん、愛してる」
「え?」
薄く開かれた世槞の唇を、食らいつくようにして奪う。熱を帯びた舌を滑りこませ、戸惑っているのか右往左往しているものを捕まえ、呼吸をする余裕を与えぬまま巻き付ける。互いの口元から唾液が滴る。静かな部屋に水音だけが響く。
「あ……」
高い声が漏れる。
「……苦し……んだけど」
酸素を求めて逃げ出した愛しい人を再び捕らえにいく。
「ちょっ、待っ」
「駄目……まだ、もう少し」
耳元で囁くと姉の身体がビクリと震えた。興奮した。
苦しさから逃れようと身をよじる世槞だが、バスローブが紫遠の身体に擦れて乱れてゆく。汗ばんだ胸元と白い太股が露わとなった。
絡め合った指に力がこもり、爪が皮膚に食い込んで血が滲む。
「姉さ……」
「甘えすぎやろ!!!!」
ゴンッ、と重い音がなった。世槞が紫遠に頭突きを食らわした音だ。
世槞は垂れる唾液を手の甲で拭い、乱れたバスローブを直しながら怒った。紫遠は思わぬ攻撃をもろに額に受け、痛みのためかうなだれている。しばらく顔を伏せていたが、やがて上体を起こしてベッドに座り直す。立腹している世槞の態度は理不尽だが、会えなかった空白の時間を取り戻すには十分すぎる対価だったかもしれないと考えていた。
「ごめん……調子に乗った」
「完ッ全にな!」
「でも、どうだった? 情熱的さは感じた?」
「大いに。なんか、舌を入れる? そんなテクニック知らなかったし」
「そう、良かった。またお望みならいつでも言って」
「もう嫌よ。窒息するから」
世槞はさらりと否定をした。紫遠はううんと唸り、「失敗した」と言って頭を深くかかえた。
しばらく隣に座っていた世槞は、思い出したように訊ねた。
「そういえばレイ様とは何をお話したの?」
「……なんだったかな……姉さんに頭突きをされたせいか、記憶が混濁してよく思い出せない」
「ごめーん!! そんなに痛かったの? 手加減できなかったかも」
眉毛を下げ、本気で心配をして身を乗り出す世槞をすかさず抱きしめ、紫遠は「嘘だよ」と言った。対して世槞はとくに抵抗することなく、なされるがままだ。
「話したのは――僕らが生まれた世界のことと、能力のことと、ヒェルカナ党に捕まっていた時のことかな……」
「能力って、私たちがシャドウ・コンダクターってこと、言ったの?」
「言わなくちゃ辻褄が合わないだろ。あんなバケモノみたいな能力を見せつけておいて」
「ん、んー……そう、か。信じてくれたのかな……」
世槞は紫遠の胸に耳をあて、心臓の鼓動を聞いていた。
「紫遠……生きてるね」
「そりゃあ」
「良かった……ほんと。紫遠がいない世界じゃ私、生きていけそうにないもんな……」
「嬉しいこと言ってくれるね」
「なんてったって、大切な家族だし」
理由を聞いて、紫遠は歯切れ悪くうなずいた。心から喜べるわけでなさそうだ。
「僕だって、姉さんが生きてくれているかわからなかったんだよ」
「そうなんだ」
「ほとんど起きてはいなかったけど、目が覚めるたびに君の姿はどこにもない。僕の隣にいて当然だった君が。心臓が握り潰されるくらい苦しくて、悲しくて――……」
今でもそのときの気持ちは鮮明に思い出す。紫遠の心音が暗く、冷えてゆく。
「ねっ、紫遠!」
なに? と振り向く弟に顔を近づけ、世槞はぎこちない動作で唇を重ねた。紫遠は少しだけ驚き、「姉さんからするなんて」と喉を奮わせた。
「んー……ふふ! なんだか恥ずかしいね! とにかくお互い生きてよかった。愁を悲しませることもない」
冷えた心音が再び熱を帯びてゆく。ぽかぽかと温かくて、優しい心地だ。互いの体温が混ざりあい、とろりと溶けそうになる。これまで張り詰めてきたものが流れてゆき、それは眠気を誘っていた。
「しおんー……このまま寝ちゃおうか。子供の頃みたいに……」
だが直後に部屋の扉がノックされ、意識は覚醒を余儀なくされる。世槞は気怠げな声色で「なぁに」と返事をした。
「我ぞ。少し話があるのだが、入ってよいか?」
ノックをした主はレイであった。世槞は無意識的にギクリとする。今の姿を見られてはまずいと本能的に判断をしたのだ。急ぎ紫遠から距離を取り、バスローブの乱れを直し、呼吸を整えて扉を開けた。
「レイ様! どうしたんですか?」
少し声が上擦っていたかもしれない。部屋の外で鎮座するイーヴォの顎を撫でていたレイが、中に紫遠がいること、そして世槞の姿を見て怪訝な顔つきをした。
「……服を着よ」
「すみません! シャワーから出たばかりで……」
世槞はへへ、と笑い、部屋から紫遠を押し出し、着替えた。服はユモラルードで購入したものを持ってきていた。
「我々はこれからグランドティア王国領である港町シェイクベルへと向かうのだが、早馬の情報によると北の海がエル王国の海軍により見張られているらしいのだ」
世槞の着替えが完了したあと、レイは脇に抱えた海図をテーブル上に広げた。レイの口から出た王国名を聞き、世槞は反応を示す。
「エル王国って、アストラ王国と同様にヒェルカナ党と繋がってる疑いのある……」
「左様。ショーの見世物を奪取されたアストラ側が我々に宣戦布告をするならまだしも、全く関係のないエルが出てくるということは――両者の裏の繋がりを示唆するに十分な証拠だのう」
ショーの見世物――世槞はちらりと紫遠の顔を見る。無表情のため考えが読み取れない。
レイは話を続ける。
「現在の我々の兵力では立ち向かうに困難。よって、迂回ルートに変更することにしたのだが」
レイは海図のアストラ王国の上に置いた指を、東へするりとのばす。
「南東は魔の海域。海の王が住まう場所よ」
「海の……王?」
「つまり、クラーケンだ。クラーケンは船を木っ端微塵にしてしまうほどの手足を持っておる。しかしそこを通らねばグランドティア領には着けぬ。よって」
海図から顔を上げ、レイは世槞と紫遠の顔を交互に見た。
「クラーケンが出現したら我々で迎撃するゆえ、ぬしらは決して甲板にあがってはならぬ」
「私たちも戦いますよ!」
「ならん。セルとシオンをグランドティアまで生きて届けることが今の我々の任務ぞ。おぬしらもせっかく再会したのに海の藻屑の成り果てるのは嫌であろう?」
「待ってください。西からの迂回ルートではダメなんですか?」
「それでは遠すぎる。食料も燃料も尽きてしまうわ」
世槞と紫遠は有無を言わせてもらうことなく、ただ淡々と説明だけを聞いていた。
「……完全に私たちのせいだね」
レイが部屋を出た後、世槞はぽつりと漏らした。
「なのにあのレイって人、当然のように受け入れてくれてる。器が大きいのかそれとも、両国を敵に回すくらい大したことではないのか――グランドティアの人たちは強いね。身体も、心も」
「うん……確かに、強いよ、皆。だから、滅びちゃうのは悲しいなぁ……」
ガレシアの見立てが正しければあと一年だ。レイはおそらく聞かされてはいるだろうが、信じているかはわからない。影人化してしまったくらいだから、狂人の世迷事としか受け止めていない可能性がある。
世界を救うことは実は簡単だ。随所に蔓延る影人や影獣たちを駆逐して、世界の傾きを修正してしまえばいい。だがそれは第三者から見ればただの殺人であり、捕まれば処刑、運良く逃げられても一生涯逃亡生活を強いられることとなる。それが耐えられないから、クロウのシャドウ・コンダクターたちは世界を救うことができず、滅びをただ待つだけとなっているのだろう。
ヒェルカナ党の理念は世界を救うことだが、いかんせんやり方に納得ができず、また世槞と紫遠を拉致するという強行手段に出るような組織のため世槞は反発をしている。だから協力は有り得ない。
思い悩む姉の横顔を見つめ、紫遠は提案をする。
「君がクロウを救いたいというなら、たとえ全世界の人々を敵に回しても僕は君を護るよ」
弟は世槞の考えを全て読んでいた。
「えー、ほんと? じゃあこのまま死ぬまで二人きりの無人島生活になっちゃうよー」
「それもいいんじゃない」
紫遠は笑うことなく、大真面目に言った。
「私しか話し相手いなかったら、人生つまんなくなるよ?」
「別に。僕の人生には君以外いらないから。君が僕以外を望むなら別だけど」
いつもの世槞なら大声で笑い飛ばすところだが、真っ直ぐな瞳で見つめられて言われ、心臓がドキドキと高鳴っていることに気付いて慌てた。頬もほんのりと熱くなり、これまで経験したことのない体験に戸惑う。
「うわわー……なんだ、これぇ」
世槞は頬を両手で覆い隠し、紫遠に背を向けた。
「どうしたの」
振り向かせようとする紫遠の手を払いのけ、世槞は部屋を出て走り去った。親のあとを追うようにイーヴォがノシノシと走る。一人、部屋に残された紫遠はただ首を傾げるばかりだった。
「はっはー! 阿呆だー!」
メガンテレオンたちが収容されている地下貨物室へ飛び込み、世槞は無理矢理に笑い声を絞り出した。奇声に似た音に驚き、メガンテレオンが一斉に世槞へ振り返る。彼らにとっての主食の乱入だが、躾されているためか襲いはしない。
「……そう言い返すつもりだったの、さっき。でも何故かできなかった。紫遠の顔を見ると心臓がドキドキして、声が出せなかったよー」
心臓の鼓動が、全身を支配する。息をすることが困難になってしまうほどに。
「ねぇイーヴォちゃん……あいつは重度のシスコンなの。実の姉を口説くんだよ、阿呆でしょ。だからシスコン発言もいつものことなのに、どうしてだろ……顔が火照る。病気かな」
世槞は座るイーヴォの被毛に身体をうずめ、ずるずると座り込む。病気なら早く治さなくてはならない。
世槞は目を閉じ、大きな猫に顔の熱を預けるうちに深い眠りに落ちていた。
――そして夢を見た。
未完.
――――――――――――――
作者です。
前もって後書きにてお知らせしていました通り、本日の更新分で打ち切り完結です。
一ヶ月の毎日投稿でした。短い間でしたがお付き合い頂きありがとうございました。
引き続き拙作を閲覧くださる方は、小説家になろうムーンライトノベルズのほうでR18版『姉弟結び*』を継続しておりますので、そちらをご利用頂けますと幸いです٩(*˙︶˙*)۶
姉弟結び* 伯灼ろこ @rocoroco
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