第17話死に一番近い洞窟
「オーガマン
君はジャックと暮らしていたのだ」
ハロウィンの次の日
ダニエルはアンダーアカデミーの地下にある
オールジャスティスで
同期のストーンシールドに呼び出されていた。
「実はこの事は彼らが君の部屋で住む事に
なって数日で判明していた。
ヒーローとお近づきになろうとする人間は
ファンかヴィランどっちかだ。
だから身分確認に毛髪をDNA鑑定した。
今迄隠していてすまない」
「…僕の側にいるという事は牢屋と同じだから市民は安全だという判断からですか」
「そうなるな…」
「ちょっとストーンシールド先輩
話し方が石のようにおもいよ〜
簡単な話もバリカタですよ〜?
もっとふわ〜んふわわ〜〜んって
まあそんなに気にしないでって感じで
話さなきゃ〜…寝ていーい?」
ストーンシールドのとなりで
ふわふわの泡を出して浮いている
眠そうな女の子は
ヒーローシャボンクラウディ。
本名はパトリシア
泡を使って滑りを良くして
何処へでもするすると入っていけたり
物理の攻撃を無効化出来る能力から
主にパワータイプの
ストロングベアーの担当になっている。
ストロングベアー曰くあだ名は「ソープ女」
「正味刑務所の連中はヒーロービジネスとは関係ない国の仕事なんでー
すぐ賄賂とかー?脅しにー?屈するのでー…糞真面目なオーガマンの隣の方が何百倍も安全ですー…」
「悲しい話だが、そうなる。
我々ヒーローの活躍により世論が比較的友好状態になっているから警察と組む事が出来ているが、未だ刑務所や法律関係は蚊帳の外だ」
「うちらは武器ですからねえ〜
武器に人権なんてないですよーう」
「よせシャボンクラウディ」
「ぽいぽーい」
シャボンクラウディはほわほわしながら
泡のような苦い言葉をのせていく。
「…クイーンバレルが投降したと聞きました
実際はストロングベアーが自殺を防いだと」
「そしてジャックは行方不明だ」
「絶対色恋沙汰だよ〜
クイーンバレルっていつもくーるなのに
めんへらだよね〜苦手だなぁ〜みんなあんまり考えずにふわふわ流れに身を任せたらいいのにね〜」
「ライトニング先輩も刑務所に戻ってはいたが、またあの人は出るだろう。」
「カスにも優しいストーンシールド先輩
きらいじゃないよ〜〜」
「で、話はそれだけですか」
ダニエルは飲み物を飲むと席を立つ。
「どこにいくんだ?」とストーンシールドが
聞く。
「ジャックを捕まえるのが僕の仕事です」
それだけを言ってダニエルは
部屋を出て行った。
「楽しそうにしていたから
もう少し傷つくと思ったんだがな…
彼はやはりヒーローだ」
「なに言ってるの〜傷ついてるよ〜
ストーンシールドはにぶちんだな〜
…でも変だよねー」
「何がだ?」
「数週間だよ?数週間の間クイーンバレルは怪しい動きしてたけど〜
ジャックは普通の学園生活送ってたんだよー?キモくないー?」
「何がキモいのだ?」
「あ〜違和感無い〜?」
「確かにあるな、あの狂人が
まともに学園生活を送れるものなのか…」
「おい起きろ新入り」
「っだ!」
背中を蹴られて目がさめる。
土埃が凄くて何度か咳をする。
周りを見渡すと暗い洞窟に
何人もみすぼらしい
見た目をした人達が沢山いた。
自分の服も変わっていた。
服には77番とかかれている。
ラッキー7だ。
出口には鉄格子があった。
牢屋なのだろうか?
「ここは…?」
「あんたも知らずのうちに
誘拐されてきた訳か」
そう話をするのは
ここのボスっぽい男だ。
服には2番とかかれている。
「オイどけ、ごみ虫ども」
外から銃を持った3人の男達が現れ
ボスっぽい男もすぐに膝をつく。
「13番」
そういうと銃を持った男は
13番の服を着た女性を連れて
大きなスープが入った鍋を置いて
牢屋の外に出て行く。
「やった!飯だ!」
連れていかれた女性の事など何もなかったのかのように飯に喜ぶ人々。
ボスはみんなに分け隔てなく与えていく
「新入りだからな」
「あの女性はどうなったんですか?」
「聞いてどうする」
「あなたの数字は2番で彼女は13番だった
順番ではないのがわかります。
77番がすぐ来るかもしれないと考えると
あの鉄格子の奥で何が起きてるのか
知っておきたいです」
結構な修羅場を潜ってきたせいか
段々こういう事に麻痺してきてる
自分がいる。
あのロシアンルーレット以来
殺し以外はあまり恐怖を感じなくなった。
「変に静かなやつだな…
まあいい、聞いて後悔するなよ?
俺たちは商品なんだ
残念ながら労働力じゃなくて
肉体が商品さ」
「臓器バイヤーですか」
「そういう事だ、だからあの女は戻らない
さっさと諦めてスープでも飲んでな」
「ヒーローは来ないんですか?」
「ヒーローは国の管理下にある
つまり、ここには、来ない
ここは死に一番近い洞窟だからな
銃を持った奴らは天使様さ」
「なるほど
情報ありがとうございます2番さん」
「ああ、幸運祈るぜラッキー7」
スープは栄養剤でも入ってるのか
クソまずかった。
慣れないのは寝るときだ。
冷たく毛布もない。
何人かは固まって寝てる。
女性と男性が同じ部屋にいるのに
そういう事が起きないのは
2番のおかげだろうか
僕はすみっこで床にゴロゴロしながら
考えごとをする。
臓器を売られるのは困る
また脱獄をしなくてはならない。
でも今度は通気口も窓もない
地下か地上かもわからない
あるのは1つの出口だけ。
「2番が言ってたことが正しいなら
ここはアンダーシティが関わってるな…」
何人かに話を聞くと
みんな所謂「居場所がない人達」だった。
仕事がなく路頭に迷うもの
捨てられた孤児達
何らかの形で追放された人間
あのおじさんは
そういう奴をつる餌だった訳だ。
あんな人がまさか街と関わってるはずが無い
そう思わせるために。
そうなると臓器はひとつの利益なだけで
実際は街の掃除が目的か。
派手なヴィランを残して
ヒーローの宣伝用に使い
一般的な悪人や邪魔な存在を掃除する。
思った以上に汚いなこの街は。
「あんた、さっきから色んな人間に
聞いてるが…もしや脱走を企ててる訳
じゃねえよな?」
2番の言葉になんて返すべきか一瞬戸惑う。
信じてyesと答えれば売られるかもしれない
noと言っても絶望するには早いだろう。
だけど周りを見る限り…
「賭けをしないか?」
「賭け?」
「ああ、僕がアンダーシティに
臓器で帰るか僕のままでるか」
「賭けにならないぜそんなの」
「賭けてみなきゃわからないだろ?」
「何をベットするんだ?」
「そうだなぁ…死んだ後渡せるものがないからここの俺の分の食事を全部あんたにやるよ、勝っても負けてもあんたにはマイナスはない、いい賭けだろ?」
「負けたらどうする?」
「僕のものになる」
「奴隷ってことか」
「相棒だよ」
「俺たちまだ出会って数時間だぜ?
それで俺がわかるのか?
「男女が同じ場所で寝て事件が
起こらないのはちゃんと管理されてる証拠だ
スープもあんたが平等に渡して
誰も文句言わなかった」
「俺に人望があるってか?甘ちゃんだな」
2番は僕の首根っこを掴んで壁に押し付けて
ズボンからナイフを取り出し
僕の首元にピタピタとあてがう。
「これがあるから みんな
俺のいう事を聞いてるだけさ」
「脅しと人望は関係ない
どちらも人を動かす力だ」
一切揺らがない目を見て
2番は少し冷や汗をかいて
僕を解放した。
「おまえ…何もんだ?」
名前か、自分の名前カッコ悪いから
好きじゃないんだよね…
「77ってよんでよ」
厨二っぽいかな?と思いつつも
また新しい源氏名を考えてしまうが
今度は僕だけの名前だ。
「どう?2番僕と賭けをする気になった?」
「…作戦を聞くくらいはな」
「OKじゃあ浮かぶまで待ってて
今日はお休み〜」
床で脱獄案を考えながら
自分でも死が全然怖くなくなって
しまっている事に驚く。
他人の死を見過ぎて
自分の為に殺され過ぎたのだ。
クイーンバレルは何がしたかったのか
実際のところはわからない。
jokerを壊滅させたのは
僕が偽物だってバレそうだったから?
でもスカーフェイス達だって
いつか僕の事に気づくだろう。
下水道を通って街の外に出ようとした時
偶然にもスカーフェイスがいた。
スカーフェイスはジャックを
追ってなかったが
クイーンバレルはそれが嘘だとバレないように離れようとして僕の案に乗った。
街からでる事も目的じゃなかった。
どうしてクイーンバレルは殺したんだろう。
それ以上はクイーンバレル自身の問題で
もう僕が考えてはいけない事だ。
だけどお腹が空くのはキツイな…
夕飯らしい時間になると
銃を持った天使達が僕らに食料を与え
ボスがまた配膳する。
最後に僕の番になる。
僕は腹が鳴るが一言だけ話す
「賭けるなら飲んでください」
2番は僕の笑顔をみて考えこんだあと
僕のスープを一口口付けてから
残りは僕に渡した。
「飲んだぜ」
2番は結構悪い奴じゃなさそうだ。
ヒーロー世界でヴィラン暮らし @kazunoru
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