第29話 制服の制作 その1
あの発言より、クラスはカフェの段取りや準備で一気に慌ただしくなる。僕は言い出した責任から、実行委員に任命されてしまい、あれこれとクリアせねばならない課題に追われることとなった。
まずはカフェの制服のデザインを妹の七海の力を借りてデザインし、その制作から始めることとなった。
担任に相談したところ、週末の土日を準備のために校内を開放してくれることとなった。朝から家庭科室へ集まったクラスメイト達に、制服のデザインは好意的に了承してもらえたのだが……。
『でも、今から全員分作れるのかよ』
『デザインは可愛いけど、ハードル高いよねぇ~』
『私、
『俺なんかやったことすらねぇよ』
あわわわわわ……次から次に出てくる不安の声。実行員としてどうにかしなきゃと思いつつも、あたふたするばかりの僕。
「その点については指導してくれる助っ人を呼んでいるのでご心配なく」
結城さんが僕の代わりにみんなへ回答をしてくれた。そう、結城さんは自ら進んで実行委員を申し出てくれたのだ。一体感を出す点におそろいの制服にする案や生地の料金の徴収も任せっきり。相変わらずの面倒見の良さに頭が下がるばかりである。
『リーン』
すると、タイミングを見計らったかのように僕の携帯にメッセージが届く。
「あ、どうやら着いたみたい」
「うん、じゃあよろしく」
♢♢♢
「ったく、なんでこの
「まぁまぁ、そう怒らないの。七海だって洋服作るの好きでしょ」
「自分の服だけだよ、ママったら」
僕は学校に来た母と妹の七海を家庭科室へと案内する。外来の訪問者は生徒関係者証明の為に一旦、職員室を通し、入室許可を出す決まりとなっているそうだ。
「しかし、義孝が学校行事のことで私たちにお願いするなんて初めてよねぇ~」
「いっておくが我はあくまで暇つぶしできたのだからな。けっっっっして! あにぃやあの女の為なんかじゃないのだからな」
「七海ったら、張り切ってるのね」
「違うよ! ママ!」
こうして僕はクラスメイトたちが待つ家庭科室へと母と七海を送る。
「では、文化祭までは時間がないので、自分自身の制服を仕上げることを第一目標としてください。わからないことは私や娘に聞いてね」
『『『は~い』』』
母の言葉に素直に返事をするクラスメイト達。いつもの小生意気さはどこへいったのやら……なんて考えつつも、滑り出し好調な展開に胸をなでおろす。
母と僕は男子、七海と結城さんは女子の寸法を計測していく。
『ねぇねぇ、この子めちゃ可愛くない?』
『本当に當間君の妹?』
クラスの女子にもてはやされる七海。
「だよねぇ、超・超・超天使だよねぇ~」
結城さんもその輪に入り、筆頭として七海を愛でている。
「や、やかましー! 我に触るな! 手伝ってやらんぞ!」
なおも「可愛い~」と人気の七海であった。
そんなことはさておき、そこからは母の指導のもとで各々ミシンで制作を開始していくのであった。
天使からCall Me 若狭兎 @usawaka
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