第28話 文化祭はどうするの? その3
授業終了後、
昨日と同様、担任より文化祭の議題が上がってきたが、誰一人として真剣に取り組む様子はない。一日の
『みんな意見はないですか? 意見がないなら休憩所で決定としますが?』
学級長が黒板の前で問いかけるが、クラスメイト達からはなんのアイディアも出てこない。
『お~い、お前ら本当にいいのか? 高校最後の文化祭だぞー?』
文化祭までの残り時間は少なく、そろそろ本気で取り組まなければ簡単な模擬店ですら間に合わなくなってしまうと担任が念を押してくる。
『そうはいってもなぁ』
『受験勉で忙しいし』
『疲れるし』
『休憩所で良いんじゃない?』
黒板には『休憩所』の文字が寂しく書かれるだけ。このまま意見が変わらないのであれば最終決定とのことだ。
「あ、あの!!」
そんなムードの中……少し声が裏返りつつも、僕は思い切って立ち上がり挙手をした。クラス中の視線が一斉にこちらを向く。心臓が破裂しそうだ。陰キャでろくに話すらできない僕だけど、でも、でも!!
「えっと、確か當間だっけ?」
学級長がうろ覚えの僕の名を呼ぶ。
「ええええっと、あああの、かかかカフェなんてのはどうでしょうか?」
だいぶどもったが、僕としてはうまく伝えられた方だ。
……だが、次の瞬間帰ってきた言葉はクラスからのヤジであった。
『おいおい、普段存在感のない奴が何を言いだすかと思えばカフェかよ』
『なんでカフェなんだよ~、うける~』
『準備とかかったるくない?』
みんなのブーイングに足がすくむ。
『當間、反対が出てるけどどうする?』
学級長が少し申し訳なさそうに尋ねてくる。
「カフェは人気出そうだし、制服とかいけてるし、やりがいがありそうだなぁ~なんて」
『おいおい、女子の制服目当てかよ~』
『うわ~、サイテー』
鳴り止まないブーイング、そして一気に笑いものになる僕であった。ううっ、このまま引き下がって座りたい。だけど、ふと向けた視線の先に、結城さんの驚いた顔があった。
「でも!」
僕は怒気を含めた声を放った。
このまま負けたくない。ここで言わなきゃ、僕は一生後悔する。
「高校三年の文化祭はたった一回きり……です。もし、このまま大人になって、あの時やってればよかったなんて、悔しいじゃないですか。だから、僕はその、みんなとあんまり仲良くないかもしれないけど……なにかしたい……です。別にカフェじゃなくても、お化け屋敷とか、演劇とか」
僕なりの精一杯の言葉……クラスがしばし沈黙する。
「私は良いと思うけどな、カフェ」
ふと結城さんがポツンと呟いた。
『『『えっ!』』』
その一言にクラス中がざわついた。
「おそろいの制服とか可愛いじゃない。それに、一生懸命働いてる姿はカッコいいと思うな~」
普段は冷たい表情の結城さんが投げかける笑顔……
「では、出し物はカフェということでいいですか?」
学級長の問いかけに、クラスは満場一致でイエスと答えたのであった。
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