年下彼女誕生?

Side 谷村 雪穂


 遂にこの日が来た。


 黄野 ミヒロちゃん。


 私の友人。


 漫画家志望。

 ヒーロー好きの女の子。


 私の部屋の真ん中に置かれているテーブルを挟み、直接漫画の原稿を見せていた。

 

 兄は座布団に座りながら真剣な眼差しで漫画を見ていた。


 ノートに描いた奴だ。


「うーむ。情熱はあるんだな・・・・・・」


 とか時折呟いたりしている。


「黄野さんはこのヒーローの事が好きかい?」


「は、はい大好きです!!」


「だよな。創作者って奴は自分の産み出したキャラクターが大好きなもんさ。自分だってそうだしな・・・・・・このヴィクトセイバーは想像以上に良い出来だ。ちゃんと完成させれば良い線いくと思う。だけど売れるかどうかは難しいかなと思う」


「そ、そうですか」

 

「ショック受けた?」


 私もそれは思った。


「確かにショックだったけど・・・・・・ちゃんと呼んで貰えて。感想貰えて。嬉しいなって・・・・・・読んでる途中ところどころアドバイスしてくれたりして嬉しかったです」


「強い子だね。泣かれるのは覚悟してたんだけどな」


 いや、そう言う覚悟はして欲しくないんだけど・・・・・・

 てかウチの兄貴なんか貫禄あるわね。 


「とにかくヴィクトセイバーの能力とかデザインとか設定とかはあまり弄くらない方向で物語をよくする方向で考えよう。原稿の完成を積み重ねていけばイラストとかは自然と上達するから」

 

 何か妙に説得力あるわね・・・・・・


「わ、分かりました・・・・・・物語はどうすればいいですか?」


「取り合えず二p漫画とか四コマ漫画とかで経験積むのがいいんだけど――そう言う本格的な話は置いといて悪役に力を入れてみよう」


「悪役ですか?」


「そうだ。ヒーロー物において悪役はもう一つの顔だ。作品の売り上げに直結する。魅力ある悪役を描けるかどうかもヒーロー物を描く上で重要な要素だ。ヴィクトセイバーはその部分が弱かった」


 兄の意見に私は成る程と思った。


「ど、どう言う悪役がいいんでしょうか?」


「それこそ今や昔のヒーロー物とかに学べばいい。例えば世界征服とか――どうして世界征服するのかとか悪役に熱く語らせたりするんだ」


「世界征服をですか?」


「ここで歴史の勉強とか考察力とかが必要になってくる。これは自然に身に付けていくしかないね」


 兄貴はとにかく勉強する必要性を事ある事に訴える。

 もしかして兄貴が勉強しはじめた理由ってこう言う部分も絡んでるのだろうか?


「例えばヒーローが何故世界征服をするのか? と尋ねる。そして悪役は理想の争いの無い平和な世界を生み出すためには必要な事だという。こう言うドラマもヒーロー物には必要なんだよ。まあやり過ぎるとダメになるし、短編の漫画ではやり辛いけどね」


 と、兄は言うがミヒロちゃんは何度も頷いてメモする。


「アクションとドラマの両立。これの両立はもう経験則で調整するしかないね――」


「あの、お兄さんはヒーローは好きなんですか?」


「大好きだよ」


 即答だった。


「ライダーは平成も昭和も好きだよ。戦隊やウル●ラマンだってそう。メタルヒーローも好きだ。ヒーロー物のジャンルに当て嵌まらないかも知れないけどキン肉マンとかも大好きだね。あとプリ●ュアとか」


「ぷ、プリ●ュアも見てるんですか?」


 私も驚いた。

 これは真実だ。

 プリキュア好きなのだウチの兄貴は。

 日曜の朝は欠かさず戦隊ライダープリ●ュアを見ている。


「うん。なにか問題でも?」


「いえ、意外だと思いまして――」


「女児向けだろうが男向けだろうが面白い物は面白いんだよ。プリキュアは女児向けアニメとは思えない戦闘シーンとか印象的だけど、あの年頃の少女特有の人間ドラマとかも面白いワケよ」


 そう言う風に見てたんだ。

 ウチの兄貴・・・・・・

 

「まあともかく自分がいえるのは以上かな?」


 こうして兄による批評会は終わった。


☆ 


 後日、学校の教室で黄野 ミヒロちゃんは「雪穂ちゃんのお兄さんって凄いんだね」と顔を赤らめて私に言った。


 私はイヤな予感を感じながら話を聞く。


「確かにショックな部分もあったけどあんなに詳しく丁寧に熱心に読んでくれて・・・・・・上手く言えないけど私凄いなって思ったの・・・・・・」


「そ、そう・・・・・・」


 あれ? 


 これ恋に落ちてるんじゃね?


 などと思いつつ私は苦笑するだけしか出来なかった。  

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未来少年 in 平成15年(*本編完結済み) MrR @mrr

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