異世界神の受難

笠サク

第1話職業:自称ミュージシャン


職業:自称ミュージシャン

年齢:41

名前:坂原賢介

死因:急性アルコール中毒

「ようこそ、坂原賢介殿。私はサタ。ここは転生の間です。あなたはついさっき死にましたが、転生の権利を獲たので異世界に転生することができます。しかし、このまま死ぬこともできますが、どうなさいますか?」


「転生!?すげえ、現実にそんなラノベみたいなことあったのかよ...

するよ!もちろん!こんな幸運(ビッグチャンス)逃してられるかよ!」


(あ、この人当て字系の人かあ...そういえば職業欄に自称ミュージシャンってあったな...素直に魔剣とか聖剣とか禁呪とかもらわない系の人かな)


「で、ではあなたには剣と魔法の世界エルドゥに行ってもらうつもりですが」


「はあ!?剣と魔法の世界!?そんなテンプレ異世界嫌だよ!

俺は音楽が支配する世界に行って巨星(ビッグスター)になるって決めてんだよ!そこなら、俺のこの才能をわかってくれる人もいるはずだからな!」


(んなことできねえよバカが!って言えたらなあ...そもそもそんな世界に転生者送ってなんの意味があるんだよ...

さすが自称ミュージシャン。)


「いえ、そういう勝手なことをするわけにはいかないのです。そもそも、そんな世界に勇者を送る必要は無いのです。わかりませんか?」


「はあ?なんでだよ?巨星(ビッグスター)が現れたらそこの住民達は喜ぶ。そして、俺も喜ぶ。俺モテモテ。完璧じゃねーか!」


(小学生か!もう...ほんとにたまにいるんだよなあ...えっと、この人確か41歳だったっけ...そろそろ自分には才能がないって気づけよ...)


「そんなわけにはいきません。あなたにはエルドゥに行ってもらいます。

これは決定事項なので覆すことは不可能です。」


「ちっ...たくっ...しゃあねえなあ...不本意だけどその世界に行ってやるよ!」


(あ、不本意なんて言葉使えたんだ)


「はい、ではその次にあなたにはスキルを一つ授けることが可能です。このスキルは常軌を逸しているものでない限りは割となんでも授けられます。

さて、どうなさいますか?」


「おお!そうだったな!スキルがあったんだ!うん!決めた!俺が楽器を演奏したら誰でも感動してしまうスキルで!」


(おっと、まじかこいつ。承認欲求強すぎだろ。前世で何があったらここまで音楽に固執できるんだよ)


「はい、わかりました。そのスキルで大丈夫ですね?一応魔王を倒すという使命はあるのですが...まあ、サポートメンバーとして活躍してくれるでしょう」


「いや、違うね!俺は魔王すらも感動させてみせる!そして、俺の才能をバカにした奴らを見返してやる!」


(魔王感動させてどうすんだよ。だから、サポートメンバーだって言ってんじゃねえか)


「は、はい。わかりました。では、あなたの転生先は剣と魔法の世界エルドゥ。スキルは誰でも感動させられるスキルでよろしいですね?」


「楽器を演奏したら!な!」


(ちょっとさすがにここまで楽器に固執されるとこいつの人生気になってくるじゃねーか)


「は、はい。わかりました。では、勇者坂原賢介。魔王を倒すパーティに入ってくれることを期待していますよ」


「おう!見てろ...魔王すら、屈服させて、俺の配下にしてやる...」


(おい、やっぱこいつやべえ奴じゃねーか。送って大丈夫かよ。

あれ?そういえば、こいつの死因って...)


「あ、一つ言い忘れていましたがエルドゥには酒という概念がありませんので。」


「は?え、ちょっとまって酒無いの?先言えよ!あ、まってまって体消えていってる。ちょっとまってチェン...」


(ふう、やっと言ったかそれにしても神様の意地が悪いな。急性アルコール中毒で死んだ程酒が強い奴を酒が無い世界に送るなんて)


「アオ、もう出てきても大丈夫ですよ。完全に行っちゃいましたから。」


「あ、はい。それにしても今回は変なやつでしたね。41歳自称ミュージシャンってだけでもやばいのに。」


「いや、私としてはあなたが一番変ですよ。求めたスキルが

この神の間に居座って転生者を観察し、神様つまり私と喋ることなんですから。」


「いや、だって異世界に行ってもどうせテンプレみたいなことしか起こらないんだよなあ...とか思ったらこっちのが面白いかなって。」


「まあ、いいですけどね。私も退屈しませんし。今日はあと3人程くる予定なので、それまでお喋りしましょうか。」



こうして、異世界神の日々は過ぎて行く。


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異世界神の受難 笠サク @noichi26

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