種-シード-

キンカク

序章

「研究者は他のどんな人から批判されようとも自分の理念を貫き通すものだ。」

大学院を卒業後、恩師である三間教授がよく私に投げかけていた言葉である。

かつて自分の才能に挫折を感じ、世の中の不平等さに憎悪を抱いていた科学者がいた。彼は郡司博士と自らを名乗り、日々様々な研究をしていた。その中にはクローン技術を駆使して一年中咲き続ける桜を開発したり、自動車の進歩による排気ガス問題を取り上げ超巨大な空気洗浄機を開発したりなど多岐に渡った研究が続けられていた。しかし世間は彼の研究は現実的ではないと否定し、批判し続けた結果彼は闇の道へと歩いてしまった。

 そんな彼はある恐ろしい研究を推進し始めたのだ。それは遺伝子操作の組み換えによる異種遺伝子の配合であった。しかしマウスやネズミを使って研究をしていたが全く上手くいかず、とうとう本物の人体で実験しようと試みたのだ。そこで目をつけたのが我が子であった。彼は子宝に恵まれており八人もの息子、娘がいた。そんな彼らは世間で認められない郡司博士のよき理解者でもあったのだ。

 郡司博士はそんな我が子を実験の体験者として迎えた。彼の子供たちは父の研究の役に立つならと、進んで実験材料となった。

 郡司博士は彼らのDNAを直で刺激し特質な遺伝子を作った。そしてついに郡司博士は自らの子供を異質な人間へと変えてしまったのだ。

 特質な遺伝子は正常の遺伝子を次々に破壊していき、彼らの体は人間ではなく別のものになってしまった。

 郡司博士は彼らのことを特質な遺伝子(種ーシードー)を持っている異人種「シーダ」と呼んだ。

 シードの能力はそれぞれで、一人は触れた物を一瞬にして爆発させたり、一人は世界規模の様々な会社を一瞬にして倒産させたりと人類にとって凶悪な者になっていった。

 それからWK(世界保安機関)はそのような凶悪者を生んだ郡司博士を探し出し、一九六二年、ついに郡司博士は世界政府に暗殺されてしまったのだ。

 郡司博士が殺されてからも彼の子供たちの捜索は続けられ、一九六五年に政府は郡司博士と八人の子供全ての暗殺が終了したと世間に発表した。

 しかし実は子供たちの中で一人だけ見つけられずに生き残った九人目の子供がおり、二十年の月日が経ってしまったのだ。


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