第38話 高島の独白

38 高島の独白


 だれにも気づかれずにいままでヤッテきたのだ。それが、いまになって。やはり、アサヤが敵になった。あのとき、アイツが体育館にはいってきたときには、おどろいた。チクショウ。なんてやつだ。いますこしで、キララちゃんをモノにできたのに。

 

 Hできなかったのは残念だった。ヒイヒイいわせることができなかった。ジューシーィな肉をたべられなかったった。焼却するつもりはなかった。人の気配がしたので、おかしいと思い、手近の焼却炉に投げこんだのだ。


 惜しかったな。ぐったりとしたキララちゃんのからだを解剖台にのせたかった。

 

 なぜ解剖台か? 

 

 医者の気持ちになれば、罪の意識はまったくなくなる。わたしは外科医だ。じじつ、あのまま学業がつづけられれば――医者になっていた。

 オヤジがロープ工場の経営に失敗して首吊り自殺なんかしなければ。

 

 医者になっていた。

 

 妾にいれあげて、借金まみれで死んでいった、オヤジ。自家製の――ジブンの工場で製造したロープが首にくいこんでいた。顔には鼻水やヨダレ、嘔吐物。下半身の股間はベトベトの脱糞と尿の臭気。あんな汚物まみれのオヤジは見たくなかった。だからわたしは美しいモノをロープで吊るすのだ。

 

 教師なんかになりたくはなかった。

 

 毎日、清潔な環境のなかで、人体を切り刻む手術や解剖にあけくれる時間がもてたのだ。――オヤジさえ死ななければ。


 アサヤが、おれの楽しみ、美少女を解体する愉楽をうばいやがった。そのうえ、わたしの嗜好の邪魔をした。わたしの日頃の行動が明るみにでてしまう。


 あっては、いけないことだ。犯行がバレレバ、このひそやかな愉楽が楽しめなくなる。怒りを感じる。こころに、アサヤへの恨みをこめて、この薄暗い闇の世界に、潜んでいる。


 それにしても、かわいい生贄たちは、美少女たちは、反抗期なのに、わたしが声をかけるとすなおについてくる。わたしが身につけている〈校長先生〉という仮面に安心する。絶対に、徹頭徹尾、危険性のない男性だ。温厚無害。完全無欠の男性だ。前もって、ベニマルのゲームセンターをうろついている少女に声をかけおく。


 名前をきいてメモしておく。

「担任の先生にはいわないでおくから。あまりハデに遊はないようにな」

 といって安心させる。信頼関係を築いて置く。

 

 校長先生は、わたしのミカタだ。わたしのことを担任の先生に、チクらなかった。次に会ったとき、呼び止めると「なにか、ごようですか」とあどけない顔をカワュクかしげて、問いかけてくる。校長室まで連れこんでしまえば、こっちのものだ。麻酔をかがせて、あとはひとめにつかないように車で家まではこぶだけだった。そう、すごくeasyだったのだ。あのミホという小娘を連れこむまでは――。


 校長室で危険を感じたとたんに、ミホは暴れだした。すごい、パワーだった。

 そのうえ、特殊警棒なんか隠しもっていた。てこずらせやがって。さいごには机に置いてあった〈校長章〉のバッチを飲みこんだ。


 すぐにわかった。ダイイングメッセージのつもりなのだ。それで殺してから、胃袋におさまっていたバッチをとりだした。ついでに、内臓をきれいに抜きとってやった。みせしめのために、幸橋につるした。


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