棘の罠

春風月葉

棘の罠

 この街は棘の森、人々は自分を守るために自分以外の全てを拒絶する。

 そんな街の中、私はいくつもの棘を掻き分け、何度拒絶されようともまた君を探す。

 近寄ることすら許されない棘に覆われた燃えるように赤い薔薇達、その中にいる冷めたような青い眼の君が私の心に深く消えない切り傷をつけたあの日から、私は毒に侵されてしまったのだろう。

 君を追うほどに、私の心は傷を増やす。

 君を求めるほどに、私の心には空白が生まれる。

 君の毒は、少しずつ私を壊していく。

 君を追い求めるほどに毒は私の心を蝕むのに、君はいつまでも棘の中から出てきてはくれない。

 それでも君を追うのは、求めてしまうのは、この毒のせいではないのだろう。

 ああ、まただ。

 近くほどに、私は満たされなくなっていく。

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棘の罠 春風月葉 @HarukazeTsukiha

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