第3話 second,A



遠くからシャワーの音が聞こえる

マサはいつもシャワーしか浴びない。湯船に入らないのはもうずっと前から知っている

あたしは冷蔵庫から出してきたビールを飲みながら、見たくもないTVに目を向けていた

そして自分の卑劣さを思い、苦いビールと共に流し込んでいるのだった


看護師として働き始めてもう4年になる

小さいころから看護師になるのが夢だった

医者になりたいと思っていた時期もあったが、自分の頭では到底無理だと悟ったからだ。


あたしが勤務する速水総合病院があるのはマサの家から車で15分の所だ

ちなみに、あたしが今住んでいる実家から病院までは30分以上かかる

めんどくさがりのあたしにとっては、マサの家に帰る方が手っ取り早いのである。だから家に帰るよりもマサの家にいる頻度の方が高い訳だ。


立ち上がりキッチンに向かう

マサがここでタバコを吸っているのはいつもの事なのでタバコの置場所も把握している。

あたしはマルメンを手に取り火をつける

メンソールは好きではない。メンソールの味だけでタバコ感が感じられないと思うからだ。

いつもはセブンスターを吸っているが生憎今日は切らしていた。そのため仕方なくマルメンを吸っているというわけだ


白い煙をはいているとテーブルの上に置いてあるスマホが鳴った

今は聞きたくないその通知にため息をつきテーブルに向かう

新着メッセージがあります。画面が写し出されていた。画面に触れてそれを開く。

開くまでもなく送り主が誰かなんて分かることだし、見たくないのであれば開かなければいいだけなのだがそうはいかないと知っていた

開いたその画面には短い文が写し出された。ため息と共にスマホの画面を消した。

なぜこうなるのか

なぜこうなっているのか

あたしは短くなったタバコを吸いながら考えた


どちらが悪いというわけではない

ただどちらも気にくわない

そんなくだらないことで人間は揉め事を起こす

そう。あたしと彼みたいに。










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幻無 神無月 @baguette

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