属性は何を選択すればお嫁さんにしてくれますか?

ふだはる

属性は何を選択すればお嫁さんにしてくれますか?

 とある女性の魔王が男性の勇者にコテンパンにされた。

 あまりにも強い勇者の格好良さに彼女は……。


「あなたの事が好きになりました! お嫁さんにして下さい! あなたの為なら、どんな色にも属性にも染まってみせますから!」


 と、求婚。

 しかし、勇者は……。


「ごめん! 俺は血の繋がった妹萌え萌え属性なんだ! 血の繋がった妹じゃないと結婚できない!」


 口をあんぐりと開ける魔王。


「血の繋がった兄妹じゃ結婚しちゃいけないし! そもそも、あなた、血の繋がった妹いないじゃん!」


 ◇


 振られてしまった魔王は放心状態になった。

 そこへ彼女の手下の暗黒魔道士がやってくる。


「魔王様、どうしても勇者の嫁になりたいのですか?」


 魔王は首を縦に、ぶんぶんと振った。


「分かりました。ならば一つだけ方法があるので付いて来て下さい」


 ◇


「ここ、どこ?」


 魔王は暗黒魔道士に尋ねた。


「勇者の両親の住む家です」


 二人は勇者の両親の寝室へと向かう。

 勇者の両親はダブルベッドで仲良く眠っていた。

 暗黒魔道士はドアの隙間から呪文を唱える。


「あなたがたはシタクナール、シタクナール……」


 勇者の両親は飛び起きた。


「俺は、なんだか急に、むらむらしてきたぞ!?」

「わたしも、なんだか急に、エッチな気分になってきたわ!」


 勇者の両親は寝間着を脱ぎ始めた。


 そして○ックス。


 魔王は真っ赤になりながら見ていた。


「これで後は確実に受精する魔法と、その受精卵の魂と魔王様の魂を入れ替えるだけで勇者の妹になれますよ」


 恐ろしい事を、さらっという暗黒魔道士。


「な、なるほど」


 若干ヒキ気味でも作戦には納得の魔王。


「あとは兄妹でも結婚できる法律の国に移り住むとよろしいでしょう」


 暗黒魔道士の話を疑問に思う魔王は尋ねる。


「そんな国あったっけ?」


 暗黒魔道士は胸を張って答える。


「異世界だから、あるんです! ビバ! 異世界!」


 ドヤ顔の暗黒魔道士。


「メタい事を言う奴だなあ……でも、その手があったか!」


 魔王はポンと手を打った。


「あ、ちょうど終わったみたいですね……勇者の父親のくせに早過ぎる気もしますが、母親も満足しているようなので良しとしましょう」


 暗黒魔道士は呪文を唱える。


「チャクチャクショウショウ! タマイレシイカエ!」


 魔王の身体が輝き始める。


「ありがとう、暗黒魔道士よ。貴様の事は忘れない」


 魔王は感謝の涙を流した。


「ええ、まあ、生まれ変わっても記憶は残すようにしてあるので、そうでしょうね」


 暗黒魔道士は、どうでも良いという顔をしながら答えた。


「本当に、ありがとう」


 暗黒魔道士の両手を両手で取り、握り締める魔王。


「ははは、気にしないで下さい。これで赤ん坊の心を持った魔王様の身体を好きにできるかと思うと……うへへへへ」


 何かを想像しながらゲスな笑い方をする暗黒魔道士。


「待て、貴様、私の身体に何をする気だ!?」


 そこで魔王の意識は一旦、途切れた。


 ◇


 それから十月十日後の勇者の両親の家。

 産婆さんの声が轟く。


「そりゃあ! とったどー!」


 母親から生まれた赤子が、産婆の両手に掴まれていた。


「でかした!」


 父親が喜びながら母親の手を握る。


「ありがとう、あなた」


 母親も涙を流しながら握り返す。


「とうとう、俺にも妹が出来たんだ!」


 勇者が目を輝かせながら喜ぶ。

 その輝きは妖しいピンク色だった。


 魔王は喜ぶ。


 ……やった! 私は勇者の妹に生まれ変われたんだわ!


 ……これで、勇者と結婚できる!


 しかし、魔王は何か違和感を覚えた。


 産婆が叫ぶ。


「おお! 立派なもんを持っとる! 元気なだわいなあ!」




 完。

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