25.花音、瑠璃からアドバイスをもらう


『えー。花音、何それ。なんで夏目先生の話、最後までちゃんと聞いてあげなかったの?』


電話のむこうの瑠璃が、いかにも「あきれた」という声を出した。夜十一時。夏目先生と食事して帰宅した直後だ。


「……だって……」


『だって何?』


「夏目先生みたいな人が、私を好きになるかなって。私、地味だし。メイクも瑠璃みたいに上手じゃないし」


『……卑屈になるほど地味じゃないでしょ……派手ではないけど……KSJCに入ってからだいぶ良くなったよ。どっちかというと、地味じゃなくてシンプル系だよ。それにメイクって、男の人はそんなに気にしないわよ。そんなこと気にしてちゃだめ。花音が余計なことを言わなければ、告白してもらえたかもしれないのに』


それは、自分でもちらりと思った。話の流れから行くと、そうなる感じはあった。でも、夏目先生はハンサムで性格が良い上に大学病院勤務の内科医で、想定外というか、釣り合わないというか、私は怯んでしまった。


「瑠璃はこういう場合、どうするの?」


『最後までじっくり話を聞く。告白されたら、私のどこが好きか質問して、付き合うかどうか考える』


さすがモテる女は違う。余裕がある。自分のどこが好きかなんて、よくきけるものだ。


「仮に告白されたとして、夏目先生に釣り合う自信がないの」


『じゃあ、断れば』


「それは――」


『もったいないと思うんでしょ。だったら、自分でちゃんと決めなくちゃ。それに、医師でも社長でも、男は基本みんな同じ。単純にできてるから、そんなに身構えなくても大丈夫。夏目先生は、花音がこれまで通りに接してればまた何か言ってくるだろうから、今度は失敗しないようにね』


「わかった。三田村さんはどうしたら……」


『三田村さん? いいんじゃない? 今のままで。土曜日だけ、しかもお互い暇でシェアハウスにいれば一緒にご飯を食べたりする、ってだけでしょ? 夏目先生には話したし、三田村さんに好きだと言われたわけでなし。何も後ろめたいことはありません』


瑠璃のアドバイスは、いつも明確だ。



(続く)


 

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