誰もが知っていて、誰もは知らない彼らのこと(登場人物紹介)

◆紅き竜

 300歳を超える、四つ足の雌の火竜。真名はセキ。

 大人の男三人分の背丈と巨大な身体を持ち、その膂力りょりょくと魔力は強力。全身を覆う鱗は紅玉のように美しい。

 魔獣や魔力の高い人間などの生き物を食べたり、火山にいるだけで魔力を蓄えられる。

 面倒くさがりで、静かな環境の山を棲家に選んだ。

 しかし休眠中の火山ゆえ、比較的頻繁に人間がちょっかいを出してくる。適当に脅したり殺したりしてその頻度を下げていた。

 最終的に生贄を奉げさせ、忘却の魔法や記憶操作の魔法をかけることで落ち着いたが、本当はそれすらも面倒だと思っていた。

 娘が居ついて以来、以前のような面倒ごとは減ったが、娘の妙な言動についてのため息は増えた。

 流行病はやりやまいの件をきっかけとして、娘を自分の娘と認めた。


◆娘

 第1話登場時、15歳だった生贄の娘。本名はクレナイ。

 艶やかな黒髪にこげ茶の目、整った顔立ちにほどよい肉付きの美女。

 両親を早くに亡くしたり、兄弟姉妹がやたらと多かったりする家の出。

 元々美しかったため、母が死に、生きることに疲れた13歳のとき生贄に志願した。しかし、毎度竜の忘却の魔法で追い返されていた。

 それから毎年、生贄に選ばれるために美容に気を使っていた。ついでに「ひとりで何でもできるように」と色々努力した結果、妙に高い生活力を身に着ける。

 生贄として3度目に出向いたときに竜の棲家に居つくことになった。「竜の巫女」を自称する。

 竜を母と慕う。

 姉アカネと、初恋の相手ヨハンのじれったい恋模様を(物理的手段で)実らせた。

 多少下世話な性格は自覚している。

 後に、竜の魔力の影響で身体が魔力的に変質する。そして魔法生物のルリ、ヒスイの母となった。物語の中で一番転身している。

 髪は必要に応じて伸ばしたりばっさり短くしたり、髪型に特にこだわりはない。


◆アカネ

 初登場時、18歳。クレナイの1つ上で、実の姉。隣に住む幼馴染、治癒術士ヨハンの助手をしている。

 燃えるような赤い髪は短く切っていて、背はやや高い。よく見ると野性的な美女。

 幼いころは、いじめっ子から妹であるクレナイを守っていたため口が悪く、今でも直っていない。

 竜に村ごと娘の記憶を消されてからも、薬草などを商う巫女となったクレナイとは交流があった。

 ヨハンとは幼いころからじれったい関係であったが、クレナイに背中を突き飛ばされたことから、色々あってヨハンと家庭を持つに至る。クレナイにはちょくちょくいじられている。

 妊娠がわかり、結婚が決まってからは髪を伸ばし、女らしさにも磨きがかかった。

 第一子であるアーベンが生まれてからは、ルリともよく話すようになる。

 下に妹弟きょうだいが多かったため、子守は得意な方である。


◆リリアナ

 初登場時、9歳。治癒術士ヨハンの妹。

 栗色の髪と目で、かわいらしい少女。自分がかわいいという自覚がある。

 竜にさらわれた兄を助けるため、自力で生贄として山を登るなどの無茶をした。

 女の子らしいものごとが好き。アカネや隣家の年少組の世話を焼く。

 裁縫が得意で、アカネとヨハンの婚礼衣装、クレナイの巫女装束、礼服なども手掛けた。

 娘の記憶を消される前はクレナイによく懐いていたため、今でもその名残がある。

 身近にヨハン、アカネなどの潜在的天然がいるせいか、必然的につっこみ技術に磨きがかかった。


◆ヨハン

 初登場時、19歳。薬草などを使うことに長けた治癒術士。

 栗毛の髪と目、優男風の外見。「口を開かずきりっとした表情をしていれば、それなりに見える」とはリリアナの談。

 普段は優柔不断で頼りないが、治癒術士の仕事に関することになると途端に頼もしくなる。

 流行病の特効薬の材料を得るため、単身『紅き竜と巫女の領域』に踏み込むなど無茶をすることもある。が、ヨハンに助けられた女たちはそういうところに心を射抜かれるらしく、よく修羅場に巻き込まれてリリアナやアカネの頭を悩ませている。クレナイの初恋の相手。

 クレナイの(物理的な)支援によってアカネと結ばれ、アーベンの他にも子をもうけた。


◆カナリヤ

 竜の兄竜。自身の名乗りはコハク。真名は、歌が得意だからと母竜につけられた。今でも少し気にしている。

 300歳を超える妖精竜で、黄玉の鱗を持つ。後ろ脚が大きく、前足は小さいが手のように器用に扱える。身体は猫ほどの大きさしかないが、魔法と『竜の息吹』は強力。

 竜と100年ほど会っていない内にクラノと出会い、旅をするうちにだいぶ態度が砕けたらしい。ノリは軽めだが根はまじめ。

 魔力的に変質したクレナイに、魔力の扱い方を指南するためクラノとともに旅に出た。油断により、クレナイに魔力的な影響を与えてヒスイが生まれる原因を作り、竜を激怒させることになった。


◆クラノ

 初登場時、27歳。クレナイの母の弟で、叔父であり師匠。クレナイが人間としての道を踏み外す遠因となった男。

 短い黒髪の大男で、頬に十字傷がある。人並み外れた強さで、外の国では名が知られている武芸者。

 魔法がほとんど効かないという特異体質のため、生贄たちのことを覚えていた。

 ノリが軽く、いつも笑っている。


◆ルリ

 クレナイの身体が魔力的に変質したのち、竜から受けた魔力が結晶化した魔法生物。真名はルリ・ラピス。性別は最初なかったが、のちに女性を選んだ。

 少女のような姿で顕現した。背中まで伸びる藍の髪と、紺碧に金の粒という瑠璃玉のような目を持つ。

 クレナイが用意した濃い空色の髪紐で、髪を後頭部の左右で結んでいる。ほどけると誰かに結い直してもらうが、実は自分で結べる。

 表情は乏しいが、なかなか豪快な性格。まじない札を使いながら、魔法をどんどん身につけていった。

 アカネとヨハンの息子、アーベンの愛らしさに心を奪われたようで、巫女代理として村に赴いた際には必ず顔を出している。

 徐々に表情が豊かになっていった。

 身体を成長させ、アーベンと結婚し、子供をふたり産んだ。


◆アーベン

 ヨハンとアカネの第一子。夕方に生まれた男児。

 両親の特徴をほどよく受け継いだ赤茶色の髪。

 仕草が愛らしく、ルリはその小ささと愛らしさに心を打ち抜かれたようだ。

 それからなにかとルリに気にかけられるようになり、穏やかでよく笑う青年に成長した。

 成人して数年後にルリと結婚し、二児をもうける。


◆ヒスイ

 クレナイが、カナリヤ、クラノとともに旅に出ていた途中に顕現した魔法生物の少年。真名はヒスイ・ネフライト。

 カナリヤの油断と、クレナイの「軽率な抱っこ」によって、クレナイに蓄積した魔力の結晶が元。

 淡い翡翠色の髪と、碧の目が特徴。少しおどおどしている。

 成長してからは、泰然とした性格と、穏やかな笑みをクレナイから受け継いだ。



「まだまだ話したいことがあるんです。だから、私にも聞かせてくださいね」


 思い出話に続く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る