第7話 答えは?

 それから俺は、アパートの部屋に引きこもっていた。

 その間何をしていたかは記憶にもやがかかったようで、思い出せない。

 引きこもって1週間程たったある日、玄関の呼び鈴が鳴った。誰かと思ったら、弟様だった。


「あ、弟様」

「生きておるな。今日は吉祥天にお前を連れて来るように言われたのじゃ」

 次の瞬間、弟様は息を吸い込み、

「貴様ぁぁぁぁぁ!」

 と怒鳴った。耳がビリビリするような声だった。

「煌星、どういう事じゃ! 吉祥天から聞いたぞ! 『俺には無理っす』とか言って辞めたじゃと!?」

「あー、マジで無理だと思ったんで……」

「この現代っ子が!」

 耳が痛い言葉だ。

「……だいたい、そこまで思い詰めてるなら、なぜわらわに相談しないんじゃ!!」

「えっ?」

 俺はあっけにとられた。

「……すいません、そもそも人に相談するっていう選択肢がなかったっす。3年間、1人で生きてたんで」

 ビンタが飛んできた。

「痛っ……。何するんすか!!」

「馬鹿者……! 心配したんじゃぞ……!!」

 弟様は泣きながら俺を抱きしめた。

「お、弟様!?」

 恥ずかしながら、俺は女子とそういう雰囲気になった事がない。もちろん、彼女もいた事がない。

 しばらくの沈黙の後、

「貴様が……煌星が好きじゃから、こんなに心配するんじゃぞ」

 いきなり告白された。


 それから玉響に着くまで、まともに顔が見られなかった。

「あらあら〜? 弟ちゃん、どうしたの〜?」

 吉祥天はニヤニヤしている。もしや……。

「……うるさい! 貴様が『流ちゃん、弟ちゃんにれてるわよ』などと言うから悪いんじゃ! ほら、煌星を連れて来たぞ!!」

 押し出されるようにして、前へ出た。

「何のご用っすか?」

「流ちゃん、うちで働いてくれない?」

「……………………えぇぇ!?」

 今日は驚く事ばかりだ。

「お、俺でいいんすか!?」

「流ちゃんだから頼むのよ。『流ちゃんは人気が出る』ってアタシの勘が言ってるのよね〜!」

「で、でも、俺、辞めるって……」

「そんな事気にしないで」

「…………分かったっす! 俺、玉響ここで働かせていただくっす!!」

「ありがとう。で、弟ちゃんの方は?」

「それはまだ……」

「早く伝えてあげてね〜」

 俺は弟様に向き直り、言った。

「…………弟様が好きっす。これからも、よろしくっす!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺の就職先は異世界のホストクラブ 卯月みお @mio2041

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ