第6話 やっぱり俺には……

「疲れた……」

 俺は吉祥天が用意してくれたアパートに帰り、ベッドに突っ伏した。

 あれから閉店までヘルプ回りをしたが、

 助っ人がこんなに疲れるものだとは思わなかった。

 ただ1つ、他の先輩ホストをヨイショした事だけは褒められたが。

 ヘルプについたテーブルの先輩は、全員テーブルに気を配っていた。

 それに引き換え、俺は先輩とお客の機嫌を損ねない事で精一杯だった。


 こんな俺にホストなんて務まるのか?


 辞めた方がいいんじゃないか?


 俺にはこんなきらびやかな世界は似合わない


 歌舞伎町の路地裏で暮らすのがお似合いだ


 突然、弱気そんな考えが浮かんだ。

 考えないようにして、目をつぶっているうちに俺は眠ってしまった。


 次の日、起きると、もう昼だった。

 起きてすぐ、また昨日の夜考えた事を思い出してしまい、気づいた時には吉祥天に電話をかけていた。

 3コールほどで

「もしもし、玉響です〜」

 吉祥天が出た。

「あ、吉祥天さんっすか? 俺っす。流星っす」

「あら、流ちゃん。どうしたの?」

「……やっぱ俺には無理っす。体験入店しかしてないけど、お世話になりました」

「えっ!? 流ちゃん!?」

 驚く吉祥天に構わず、俺は電話を切った。

 また、スリや盗みで生きるゴロツキ生活の始まりだ。

 そう、これでいいんだ。

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