第2話ー6820-

ー6820-

手元のボードに止めた画用紙の端。

戦いを経て丸まってきていた。

すっかり乾いた土色に水を差す。

バケツに汲んだ2度目の水もすっかり疲れてしまったようだ。


「まだああー?」

弟はずいぶん前に新しい遊びを見つけた。


水は透明なのに紙の上では青い。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


受付では地域ボランティアのおじさんたちが僕の絵の完成を待っていた。

「おおお!力作だねぇ!」

「よく頑張ったね」


どうやら制限時間のギリギリまで僕は絵を描き続けていたらしい。


今日は地域の小学生が集まったスケッチ大会が行われた。

水と緑をテーマに僕たちは各々好きな場所で絵を描く。


僕の絵は時間が重なりあい、複雑な色。


僕は作品を完成させるために使った”テクニック”を熱弁し、

受付の後にもらった甘い玉を口に転がして帰った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


僕の名前が地域新聞の片隅に載った。



小脇に切り抜きを抱え家にやってきたじいちゃん。まるで自分の名前がのったかのような顔で機嫌がいい。

僕は作品を完成させるために使った”テクニック”を熱弁した。



公民館で表彰を受け、地元テレビの取材を受ける時、僕は彼と出会った。



「おまえ絵がうまいんだな」

「だろ!!上手に描くためのテクニックがあるんだよ!!」

「おまえ将来画家になるのか??」


「そうだな俺、画家になるよ!!」


ー4374-

「そうかあ、でもここは普通校だからなあ」

「はい.......。」

「美術の森岡先生にデッサン習うしかないなぁ」


「森岡先生ですか..........。」

「そうそう。お前1年の時美術習っただろ。」

「はい。」


僕は静かに奥の机に視線を向け、重しを抱える。


「俺も話しとくから、今度自分でお願いしに行くんだぞ。」

「はい。ありがとうございます。」



あいさつを済ませ、なるべく音を立てずにドアへ歩く。

ドアにかけた手にいつもより繊細な仕事をさせて部屋から消えた。

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ドロ色と青 イトシン【凡人】 @sns110

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