読書感想文『立憲的改憲(山尾志桜里)』

茜町春彦

第1話

なぜ宰相は「戦後レジームからの脱却」を目指しているのでしょうか?


「A級戦犯容疑者の孫」と言われることが癪に障るからです.推測ですけどね.


このままではGHQが祖父に掛けたA級戦犯容疑は永久に晴れない、と思っているのでしょう.内心忸怩たるものがあるのです.推測ですけどね.


だけど、直接的には反論が出来ませんよね.実際に戦争責任があったにも拘らず有耶無耶にして責任を取らなかったことは、国民みんなが知ってますからね.


それならいっその事、戦争犯罪があったという歴史自体を、戦争犯罪は全く無かったという歴史に変えてしまえば良いと考えた.GHQが押しつけた政治体制から脱却すれば、そこに含まれているA級戦犯問題からも自動的に脱却できる.それが本心だと思います.


それこそ本当に本心から「戦後レジームからの脱却」を考えているならば、在日米軍の問題を避けて通れるわけはありません.けれども、在日米軍の既得権まで変更しようとすると、痛い目に遭わされるので、取り敢えず基地とか協定とかは知らんぷりしている.まぁそう云う事ですね.


「戦後レジームからの脱却」などと大きな事を言いながら在日米軍の事には手を付けずに、何をするつもりなのかと云うと、9条を変更したから「戦後レジームからの脱却」が出来ました、道徳教育を修身みたいに変更したから「戦後レジームからの脱却」が出来ました、だから世の中は正しい戦前の状態に戻りました、だから戦前に帝国の指導者だった祖父は正しかったのです、だから戦犯なんかじゃないのだ、と言い張る.まぁそう云うつもりです.推測ですけどね.


そんな目的で憲法改正を目指す宰相のまわりに集まって支えているのが、利益追求を第一と考える大企業とか官僚なのだと思います.兵器の製造輸出を促進するために9条改正を望む防衛企業とか、原発を製造輸出したい重電メーカーとか、消費税増税するなら誰でもいいと考えている財務官僚とかですね.重要なのはこの人達ですよ.宰相自体は小物ですが、支持者に力があるので、強い.

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