第6話お兄ちゃん、どう?

「お〜零!た☆だ☆い☆ま」


これ以上ないというくらいの零以上のハイテンションで僕は起き上がった。


両手を広げ自信満々の笑みで零を見ると…


少しひいていた。


「あの〜お兄ちゃん、大丈夫?」


「ん?なにが?」


「テンション高すぎなんですが…」


零がビミョ〜に距離感を感じる言い方をしてきた。


「高すぎ?でもかなり上出来だろ☆」


「うん!それは認める☆今日のお兄ちゃん大成功☆」


今日の…?


「もう最高の距離だったね♪なんか私のすぐ横にいるみたいだった!」


そりゃそうだろ。


「しかもまた聞きに来るって言ってたね?こりゃ期待が持てるぞぉ☆」


「そんなに嬉しい?」


「うん!もぅ死んでもいいくらい♪」


「シャレになってないって!」


「あははゴメンゴメン、でも良かったね〜お兄ちゃんが現国得意で!そのおかげで仲井先輩から来たんだもんね?」


「そだね、試合も観にいけそうだし」


「だよね!テスト明けかぁ〜待ち遠しいな♪」


「もうちょいだって。テストまでには仲井も勉強に聞きにくるだろうし」


「うん!それも楽しみ☆ちなみに…お兄ちゃん?」


「はい?」


「涼美ちゃんも行くの?」


「来るみたい。今日電話あったし〜て、知ってるだろ?」


「知ってる〜まさか涼美ちゃんも…仲井先輩目当てかなぁ!?」


「なんで?」


「なんとなく」


「そんな事ないだろ?涼美ちゃんはスポーツなら大抵何でも好きみたいだし…」


「そうだけど、もしかしたら…ってね?」


「なんだよ、もしそうならイヤなの?(笑)」


「う〜ん…イヤかも」


ちょっとドキっとした。

零が他の人にこんな言い方する事は無かったからだ。


だがなんとなく僕の頭の中ではイヤな考えが浮かんできていた。


もし涼美ちゃんが本当に仲井に憧れていたら…


零は…なんにも出来ない。


ただただ僕の目を通して…事のなりゆきを見るしか出来ないんだ。


僕は…言葉に詰まった。


そんな僕の気持ちを察したのか零が話し始めた。


「あ、涼美ちゃんがキライって事じゃないよ!多分だけど、ずっと小さい時から一緒にいたら一番の友達になってたと思うんだ。ホラお兄ちゃんと大友さんみたいに…」


「あのいらんことしーの大友?」


「それはいいの!」


流された…


「近所だし、きっと幼なじみでいたんだろうなって。だから涼美ちゃんだけが目の前で応援出来たら、ん〜ちょっと悔しい(笑)」


「そっか、ナルホドね〜大丈夫!ちゃんと零が実感できるくらい頑張って応援してくるから」


「…絶対変に思われるよ。お兄ちゃんは普通に見てていいから、仲井先輩を見逃さない様にしてくれたら嬉しいかな?」


へいへい、そうですか。


「あっ、そうだ!ところでお兄ちゃん、何か書けるペンと紙ないかな?」


「え〜と引き出しの紙が使えるんじゃないかな?前にも書いた気するし…」


僕は零と一緒にガサゴソと机を探した。


「なんか使えるモノと使えないモノがお兄ちゃんの夢の中にはあるからね〜ややこしいんだけど」


「そうなんだよな〜ゲームは出来るのに、テレビ見れないとか…我が意識ながらよくわからん」


「私が思うにですな〜」


零が使えそうなペンを見つけて言い出した。


「私が思うに…なに?」


「きっとお兄ちゃんの中での重要視…じゃない?」


「重要視?」


「うん、だってお兄ちゃん部屋にテレビ有る割には殆ど見ないじゃない?見るといったらお笑いくらいで…歌番組も私がお願いしてからでしょ?…あ、これにしよ」


零が紙を取り出しながら言った。


「そうかな?」


「そうだよ多分…よいしょっと」


「かもなぁ〜て、何してんの?」


いつの間にか零は背中を向けて僕に見せない様にして何かを書き始めた。


「見ちゃダメだよ」


「なんで?何書いてるの」


「どうしても!まだ見ちゃダメ」


「気になるなぁ」


そう言って横からチラ見しようとした瞬間あっさりバレる。


零がふざけて「ウ〜」と犬のような牽制で笑って睨んだ。


仕方なくスゴスゴと退散…


鼻歌まじりで零は楽しそうに書き続けている。


「えっと…ここはこんな感じで………よし!出来た☆」


零が嬉しそうに振り返る。

紙は後ろに隠したまんまだった。


もしやなんか新たな“お願い事リスト”だろうかと若干警戒する僕…


「んで何書いてたの?」


「へっへ〜♪じゃ〜ん☆どう?お兄ちゃん」


そう言って零が僕に見せた紙には女の子向けのカワイイ洋服が描いてあった。


上はオシャレなパーカーに下はフリルのついたスカートにレギンス、ブーツまでかなり細かく描いてある。


「うぉ!これ…零が考えたの!?」


「そうだよ♪ね、どう?どう?」


「いやスゴイって、カワイイよ!色とかは?」


「ん〜考え中。デザインはね、前に思いついたんだ」


僕は紙を受け取りマジマジと見つめた。


正直僕は絵心が…全くナイ!


僕には到底描けっこない…率直にそう思った。

零が描いたデザイン画は絵心のない僕が見ても(いや、絵心がないから?)その可愛さや内容が伝わってくる。


「たいしたもんだなぁ~何か参考にしたりしたの?」


「ん、いつもお兄ちゃんが雑誌見てくれてるからね!それ見てて私だったらこうするけどなぁ~て思ってのを自分なりに考えて」


「そっか、でもホントよく描けてるなぁ。なんかここで見るだけなのが勿体ないくらいなんだけど…」


「そこでですな!お兄ちゃん」


…へ?


「ナイス振り!だね(笑)はい、そっから先が本題で~す(笑)」


なんやらイヤな予感…

「な、何かな?」


「言いにくいんですがぁ、あの~TEEN POP…」


きた!やはり逃れられなかった…


「今月号…見つからない?」


「何とか探してるよ、まだ見てない店にも行くつもりだし…」


「ありそう?何とかなりそう?」


「ゴメン行ってみなくちゃ解らないよ。頑張って探すけど」


「かなり頑張って欲しいな(笑)実は今月号に応募要項が載ってるんだ」


「応募要項?なんの?」


「あのね、読者からのファッションデザイン募集☆」


「ファッションデザイン!?もしかして…」


「うん☆このデザインで、お兄ちゃんに応募してもらおうと思って」


超ビックリ!まさかそんな事考えてるなんて…僕は思ってもいなかった。

今まで何となく見てただけ(僕が)の本で…


とは言え何だか嬉しかった。

今まで零とはゲームしたり色々ふざけて遊んだりしていたが、僕の知らない間に自分のやりたい事を見つけてくれてたんだ!


「よしっ、零!任せとけっ☆」


「お?かなり自信満々?」


「と~ぜん!零がやりたい事の為なら全力つくすって!」


「なんか急に自信つけてきたね~ま、いい事だけど(笑)よしっ、じゃあ…今からデザイン画を一緒に考えて」


「え?それは?」


「これも送るよ。けど一個じゃなんか不安だしね~もっともっと描きたい!まだまだ思い付いてるのあるし」


「一緒に、て…零みたいに描けないよ」


「いいのいいの、とりあえず一緒に考えてくれたら」


そう言って零は残りの紙に新しい絵を描き始めた。僕は横で見ながらウンウンと100%知ったかぶりで相槌をうつ。


「ここにアップリケとかつけてみたら?」

知ったかぶって意見。


「脚下!ダサくなるもん」


そうですか…


「あ、ここにリボン…」

またまた意見。


「脚下2!」


そうですか…

あの…僕見る意味…ある?

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僕はいもうと issya @issya

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