真夏


空はやっぱり 青く

雲は 白くて

田んぼが 緑で

そんなありきたりな田舎の風景が

正直 いらつく


今日も相変わらず 暑いし

稲を揺らす風は 熱風だし

だから

俺のむき出しになった体のあちこちにも 熱風

風景なんて 二次元にしか見えやしない


家に帰れば

頼んでもいないのに 蝉が鳴いてる

朝から 鳴いてる

昼も 当然鳴いてる

夕方も しぶとく鳴いてる

夜になっても 鳴いてやがる

おまけに 叫びながら窓から 飛び込んできやがった


頼んでもいないのに さるすべりの花が 咲いてる

しかも ピンク色に 咲いてる

蜂やらわけのわからない虫まで 蜜を吸いにきてる

しょうがなく見ていただけなのに 蚊に刺された

こんちきしょう

叩けばあの世に行くお前の細い口で

なぜに俺の体に 突き刺せる

言ってみろ


ああ

蚊取り線香をどこへ片付けたんだ

ないものはない ってお袋は言ってたじゃないか

おっと

蚊取り線香でかゆみは止まらないんだった

なんてこった

蝉が鳴き始めたよ おい

俺の部屋にあんたが探しているやつはいないぜ



まったく もう




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