やさしい風



重たいドアを開ければ 文月の風

どこからともなく吹いてきて

短い前髪を 跳ね上げる


僅かに残っている水溜りには 小さなさざなみを立て

黄緑色の葉には やさしく揺らしてあげて

青い空に浮かぶ小さな雲にも やさしく後押し


あゝ こんなにも やさしい風




見たこともない薄緑色のきれいな蛾にも

その身が壁から飛ばされぬように


真新しい「安全第一」の緑色の旗にも

ポールから離されぬように


餌を探し始めた 若いツバメたちにも

その翼が疲れぬように


こんなにも やさしい風



あゝ こんなにも やさしい風




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