冬のかもめ



灰色の空に 一羽の白いかもめが飛んでいる

強い風を 真正面に受けながら

その羽ばたく速さに見合わない

ゆっくりとした速度で 飛んでいる


時折 羽ばたくのをやめる

すると 両の羽を広げたまま 

かもめは音もなく 斜めに落ちていく


羽を広げてるから初めて気がつく

胸やおなかはとても大きい


落ちていくかもめは それでも

海の波しぶきを浴びる直前に羽ばたき

短い声を出すまもなく

反転し

その姿を小さくして ふたたび 羽ばたき始める



強く冷たい風しか吹かない

こんな海岸で

かもめは どこへ行こうとする

なぜに そんなに一生懸命に羽ばたく


強く冷たい風しか吹かない

こんな海岸で

ぼくは なにをしている

なぜに そんな かもめを見つめている




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