とりあえずまず、続編を心から希望します!!
本編を文庫本で読み、もちろん最後は綺麗にまとまっているのですが、もう、これからも二人が欠陥案件を解決してゆくのを見ていたい気持ちでいっぱいです。
文庫本の最後は思わず泣きました…私が涙もろいというのもありますが…出てくるキャラクターも不思議な暖かさというか、好きになってしまいます。
建築という名にすると一般の方からは遠く感じてしまうかもですが、ほんとうは生活にいちばん近いもので、そして不思議に溢れているので、その面白さを伝えるよいキッカケになるのではと思います!
紛れ込むちょっとしたオカルトネタや美術建築ネタも、ドキドキやわくわくのエッセンスとしてよい塩梅で、もりもり楽しめます。もちろん、美術や建築ネタが増えても減っても、また違った面白さがあると思いますが!
複雑怪奇で想像もつかないようなトリックを求める人には物足りないカモしれませんが、この小説の面白さは、わたしにとってはそこではないのです!トリックはもちろん面白いですが、なんとなくトリックが思いついたとしても、それがどう作用して、そしてキャラクターたちがどう動くのか、それが楽しいです。見たことの無いフランス料理より、いつもの材料で作るオムライスの美味しさ、みたいなかんじです!伝わるかな…(笑)
キュートな大工とヘタレ?建築士のミステリ、オススメです!!
南雲 千歳(なぐも ちとせ)と申します。
僭越ながら、レビューを書かせて頂きます。
この中編作品は、アラウンドサーティの建築士、半間 樹(はんま いつき)とそのワトスン役のヒロインである三宮 環奈(みつみや かんな)の元へ、『最高の密室』を求める資産家の老人、瀧川が『最高の密室』の建築を求めて訪れるシーンから始まります。
密室トリックと言えば、推理小説における謎の種類の一つ、ハウダニット(How(had)done it?)、即ち、「それをどうやった?」と言う読者への出題の代表格ですが、この中編で展開されるのは、その辺のドラマなどで良くある様な、単なる密室トリックではありません。
何と、探偵役である半間 樹が、依頼者の為に密室を作ると言う作品なのです。
通常、推理作品と言うのは、探偵が依頼者の代わりに謎を解いてくれるのが普通なのですが、探偵役である主人公がトリックを作り、依頼人がその探偵をすると言う型破りな構成に、私はまず驚かされました。
解答編にて、詳細はネタバレになるので書けませんが、滝川老人は半間の作り上げた密室が見抜けず、結果、見事にそのトリックに騙されて仕舞います。
同種のトリックは奈須きのこ・著の『空の境界』の矛盾螺旋などにも存在しますが、半間のトリックはその偽装が主に心理面に置かれており、その見事さは類を見ません。
方位磁針の類では発見出来ず、容易に見抜け無い種類のトリックなのです。
推理小説において、多くの謎は人間が解明するのですから、人間の心理を突いた半間の作戦が奏功したと言えるでしょう。
建築士 半間 樹の作り上げた密室とは、果たして如何なるものなのか──?
皆さまは是非この作品をお読みになり、新鋭な密室トリックの妙味を味わっては如何でしょうか。