第6話 プロポーズ

「フローラル、このアトランティスの大地がある限り、君を愛し続けるよ」

ミカエルはフローラルにプロポーズをした。

「あら、ひどいわ、大地がなくなったら私はどうでもいいの?」

フローラルはクスリと笑い。

「では、私も誓うわ。アトランティスの大地がなくなるまで、あなたを愛し続ける。」


二人は月明かりの中手を取り合い、抱き合い唇を求めあった。


そして結婚式当日。

神父は言う。

「汝、アトランティスの大地に誓って、フローラルを愛し続け、必ず幸せにすると約束するか?」

「硬く約束します。」

二人は誓い合い、命の限り愛し合うと決めた。


フローラルの親は亡く、親戚のおじが後見人、フローラルの家は皇帝に武芸で使える近衛兵の家柄だ。


一方今は亡き皇帝の妻であるミカエルの母親も嬉しそうに式で挨拶をする。

ロムルスは皇太子として、兄として祝辞を述べた。


そして、2人はハネムーン専用に増築された家で水入らずの夜を過ごす段取りになっていた。もちろん、ミカエルとフローラルの面倒をみる使用人は控え室には居るが。


「フローラル。僕は君みたいな女の子が居るなんて夢にも思わなかった」

いないわよ、と心の中でフローラルは応えつつ。

「ありのままの私を愛してくれて嬉しいわ」

とさらっと言った。

「僕も男だから、実はその、前に恋人がいたんだ。でも君みたいな天使みたいな子はどこにもいないよ。」

ミカエルは自分の経験人数の多さを無防備にもさらけ出して言う。

「天使だなんて……。ミカエル様こそ、アトランティスの大地神のように凛々しくて逞しくて、信頼できるお方。もう、言葉はいいから……。」

フローラルは口でミカエルの口を塞ぐ。


二人はその夜、夫婦の契りを初めて結ぶのだった。


ミカエルはフローラルが経験のない素朴な、本当に愛らしい自分だけの女性であることを実感するのであった。


そしてフローラルは本当にその通りだった。彼女は詐欺師で男を信じていないから、信じていないからこそ残していたとっておきの切り札を必死で切ったのだった。


そして、その切り札はミカエルの心深くに刺さり、ミカエルは真にフローラルに惚れた。だが、ミカエルが女たらしであることは変わらなかった。彼は複数の女を同時に愛せる男だった。それでも、それはミカエルにとって真実の愛ではあった。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

帝国の白い愛花姫「フローラル」 青姫そよか @aoi7000

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ